ガイアセイバーズ9 -萌える若葉を摘む獣-

独楽 悠

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本編

第12話_封じられた眼-11(当作最終ページ)

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またたく間に髙城邸3階へ行き着いたレツは、正面のドアを開け放つ。

蒼矢ソウヤ!!」

すると部屋へ足を踏み入れてすぐに、ベッドに仰向けになる裸体が、視界の真ん中間近に飛び込んできた。

寝具は床に落ち、外気に冷やされた部屋のなか、蒼矢はなにも身につけずに横たわっていた。
白皙の肌には前日の戦闘でつくった痣が点々と残るほか、首や胸などがつい先ほどまでなにかに強く圧迫されていたのか、うっすらと赤く染まっていた。
額や首筋には汗がにじみ、顔周りやうなじに流れる髪が濡れていた。

烈のたてた騒音にぴくりとも動かず、目を閉じたままの彼を見、呼吸を止めそうになる烈の脳内に、つい昨日まの当たりにした葉月ハヅキの姿がフラッシュバックする。
顔貌を固まらせたまま、烈はベッドへ駆け寄る。

「蒼矢っ…蒼矢っ!!」

声を潜めながらも耳のすぐ近くで呼びかけ、肩や上腕を揺り動かす。
すると、眉毛がぴくりと動いて薄くまぶたが開き、天井へとうつろいだあと、烈の方へ視線を合わせた。

「…れ……つ…」
「…っ蒼矢…っ!!」

ほどなく意識が戻った蒼矢は、か細い声で烈の名を呼んだ。
烈は反応が返ってきたことに一旦安堵するも、触れていた彼の身体が冷えきっていることに遅ればせながら気がつき、慌てて風の入る窓へとんでいく。

窓を閉めると、上半身を起こしながらもいまだぼんやりと視線を漂わせている蒼矢を、優しく抱き寄せた。

「…っごめん…、遅くなっちまって…、ごめんな…っ…!」

の彼の身になにが起きたのか、おおよその察しがついてしまった烈は、ことが起きる前に間に合わなかった自分を悔やみ、震える声で懺悔した。

しばらく抱擁したあと、烈は落ちていた毛布で蒼矢の身体を包んでやる。

「…蒼矢…、ここでなにがあったんだ…? 『起動装置』が外に落ちてたぞ?」
「…」
「[侵略者]がここに現れたんだろ? 気配わからなかったのか…?」

無事を確認でき、少しずつ落ち着きを取り戻していく烈は、おおよその予測をたてながら、蒼矢へゆっくり問いかけていく。

蒼矢は、呆けた面持ちのまま烈を見やっていたが、問いかけを聞くたび次第に焦点が戻り、面差しが強張っていく。
被せられていた毛布をはね退け、遠慮がちに見守っていた烈の腕を強く掴む。

そして、ふいなことに面食らう彼を正面から見据えた。

「!? そう、や…?」
「……封じられた・・・・・

言葉の意図が読めず、眉を寄せつつ困惑の表情を浮かべる烈へ、蒼矢は顔をみるみる蒼白に変えながら、声を荒げた。

「[異界のもの]のなにも、感じ取れなくなった…っ」
「…? …ぇ…」
「昨日の[侵略者]に、『視界』を奪われたんだ…!」

至近距離で視線を合わす蒼矢の瞳は、いつもの光に透けるような薄茶が、上からベールが被さったように透明度を失い、わずかに白く濁っていた。

眼前の異変と彼の緊迫の表情に、烈も少しずつ事態をのみ込んでいくなか、蒼矢は大きな瞳を震わせながら、ベッドへ視線を落とした。

「…この眼では、『索敵』出来ない」


―― 続 ――
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