102 / 109
本編
第12話_封じられた眼-4
しおりを挟む
「…意外なところでまさかの足踏みも喰らったけどね。たかが人間風情に、なかなか粘られた」
「…!!」
「お陰で折角手に入れたのに持ち帰れなかったし、結構な損害も被ってね、"回復"までに時間を要してしまった」
そう、どこか快楽主義的な弁を聞かされ、蒼矢は楠瀬兄弟が接触し、葉月を死線へ追い込んだのはこの[犲牙]だと確信する。
「すぐにでも"目的"を取り戻したいところだけど…その前に是が非でもお前を味わっておきたいと思ったんだ。[浬]はお前を仕留める気満々だったから、半ば諦めてたんだけど…結果仕損じてくれてありがたかった、弱ったところをこうして美味しく頂けるわけだからね」
「…お前の目的は楠瀬 苡月なのか…? なぜそこまで彼を狙うんだ!?」
「ああ…そうそう、あの子犬はそんな名前だったね。なぜって…『セイバー』も気付いてることじゃないのかな? それに、狙うとかそういう段階じゃない、もはや俺の手中にあるも同然だよ」
「…っどういう意味だ…? 苡月になにをしたんだ…っ…!!」
「お前は今みずからに置かれている状況と、全く関係ない質問ばかりするね。実に滑稽だ。…そうだな、俺の手から逃れることができたら、話してやってもいいよ」
そう言うと、[犲牙]はもがく蒼矢の両腕を片手で掴んで抑え、もう片腕を首に絡める。
「っん…!」
首にくい込む腕が圧を増し、気道を塞がれ苦悶に歪む蒼矢の面差しを、[犲牙]が頬を緩めながら覗き見る。
「…いいなぁ、その顔。全身が昂るというか、欲情を駆られる」
「…っ…!」
まるで遊び半分の[犲牙]に手も足も出せず、無抵抗のまま拘束され続ける蒼矢は、次第に全身を細かく震わせ始める。
掴む腕の強張りが薄れていくのを感じた[犲牙]は、ふいに拘束を解く。
解放された蒼矢はベッドにどさりと落ち、動かなくなる。
「おや残念、落ちてしまった。これじゃ俺が話して明かしても通じないな」
[犲牙]はそう上辺だけの台詞を吐いてみせると、失神する身体を仰向けに返す。
寝間着の合わせを裂いて開き、露わになった上半身を下から上へ撫でる。
手の先が鎖骨へ達すると、肌の上に転がるアズライト鉱石のはまったペンダント――『起動装置』を指にひっかけて鎖を引きちぎり、部屋の窓から外へ放り投げた。
そして改めて、蒼矢を真上から観察する。
「やぁ、これは…本当に良い獲物だな。姿かたちもさることながら、中身も美味そうなにおいを放っている」
[犲牙]は蒼矢の顔に触れ、きめ細かな頬へ掌をすべらせる。
長い睫毛をなぞって鼻筋を通り、形の整った唇を指の腹で弄ぶ。
「これほどの上物に当たる機会はそうそうない。此度きりかもしれないから、充分味わっておかなければね…」
「…!!」
「お陰で折角手に入れたのに持ち帰れなかったし、結構な損害も被ってね、"回復"までに時間を要してしまった」
そう、どこか快楽主義的な弁を聞かされ、蒼矢は楠瀬兄弟が接触し、葉月を死線へ追い込んだのはこの[犲牙]だと確信する。
「すぐにでも"目的"を取り戻したいところだけど…その前に是が非でもお前を味わっておきたいと思ったんだ。[浬]はお前を仕留める気満々だったから、半ば諦めてたんだけど…結果仕損じてくれてありがたかった、弱ったところをこうして美味しく頂けるわけだからね」
「…お前の目的は楠瀬 苡月なのか…? なぜそこまで彼を狙うんだ!?」
「ああ…そうそう、あの子犬はそんな名前だったね。なぜって…『セイバー』も気付いてることじゃないのかな? それに、狙うとかそういう段階じゃない、もはや俺の手中にあるも同然だよ」
「…っどういう意味だ…? 苡月になにをしたんだ…っ…!!」
「お前は今みずからに置かれている状況と、全く関係ない質問ばかりするね。実に滑稽だ。…そうだな、俺の手から逃れることができたら、話してやってもいいよ」
そう言うと、[犲牙]はもがく蒼矢の両腕を片手で掴んで抑え、もう片腕を首に絡める。
「っん…!」
首にくい込む腕が圧を増し、気道を塞がれ苦悶に歪む蒼矢の面差しを、[犲牙]が頬を緩めながら覗き見る。
「…いいなぁ、その顔。全身が昂るというか、欲情を駆られる」
「…っ…!」
まるで遊び半分の[犲牙]に手も足も出せず、無抵抗のまま拘束され続ける蒼矢は、次第に全身を細かく震わせ始める。
掴む腕の強張りが薄れていくのを感じた[犲牙]は、ふいに拘束を解く。
解放された蒼矢はベッドにどさりと落ち、動かなくなる。
「おや残念、落ちてしまった。これじゃ俺が話して明かしても通じないな」
[犲牙]はそう上辺だけの台詞を吐いてみせると、失神する身体を仰向けに返す。
寝間着の合わせを裂いて開き、露わになった上半身を下から上へ撫でる。
手の先が鎖骨へ達すると、肌の上に転がるアズライト鉱石のはまったペンダント――『起動装置』を指にひっかけて鎖を引きちぎり、部屋の窓から外へ放り投げた。
そして改めて、蒼矢を真上から観察する。
「やぁ、これは…本当に良い獲物だな。姿かたちもさることながら、中身も美味そうなにおいを放っている」
[犲牙]は蒼矢の顔に触れ、きめ細かな頬へ掌をすべらせる。
長い睫毛をなぞって鼻筋を通り、形の整った唇を指の腹で弄ぶ。
「これほどの上物に当たる機会はそうそうない。此度きりかもしれないから、充分味わっておかなければね…」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる