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本編
第12話_封じられた眼-2
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蒼矢は布団にもぐり込み、烈と影斗から送られたチャットの文面を見ながら、自分なりに考察を描いていた。
陽が接触した[異界のもの]――おそらく[異形]と、葉月、苡月を襲った[なにか]。
陽の持つサルファー鉱石が反応したことから、[異形]だけでなく、[侵略者]も近辺に出没していたことはほぼ確定している。
しかし、陽が造った『転異空間』に転送されたのは[異形]だけで、[侵略者]は現れないまま一旦の片がつき、戦闘は終わっている。
烈から聞いたところによると、烈が神社へ着く直前に陽が転送していて、そのすぐ後に葉月と苡月が倒れているのを見つけたのだという。
おそらく葉月側に接触していたのは[侵略者]で、陽が『現実世界』で[異形]と交戦している同刻、ほぼ同時進行で葉月もまた[侵略者]と交戦し、陽の転送直前に[異形]を置いて[侵略者]だけが先に[異界]へ還った、という推測がたつ。
生身の人間が[侵略者]相手にどれほど肉薄するか、自身の経験則をもってしても想像しがたいが、武道の達人である葉月ならば、ある程度粘れた可能性もうかがえる。
やや不可解なのは、近くに倒れていた苡月が無傷だった、ということである。
全身を負傷していたという葉月の状況から考えれば、2人共が似通ったタイミングで[侵略者]に遭遇していたとしたら、差は大小あれど双方なんらかの被害を受けていて当然と思えた。
もちろん葉月が身を挺して弟を守ったという推論もできるが、汚れもかすり傷もひとつもない、という結末には違和感が残る。
…一番考えられるのは、苡月が[侵略者]の標的になった、ということだけど…たまたま狙われたのか、それとも意図的だったのか、いずれかによって状況が相当変わってくるな…
…正直、本当に標的にされたのかどうかも、決めつけるには尚早な気がする。
…無傷のままということは、[異界]へさらう目的があった可能性が高い…けど、なんで残して還ったんだ…?
…こっちとしては不幸中の幸いではあるけど、残していく理由がわからない…
蒼矢はいつの間にか上半身を起こし、焦点の合わないスマホの画面へ目を落としながら、考えにふけっていた。
するとにわかに、視界の端でなにかが湧いて出るような気配を感じた。
「――…!?」
蒼矢は思考から意識を呼び戻し、顔をあげる。
「――お気付きかな? 麗しの『水使い』殿」
すると斜め後方、耳の後ろから少しかすれた声が届き、弾かれたようにふり向く。
顔を向けたその鼻先すぐそばには、黒髪を無造作に垂らした褐色の顔があり、血のように赤い眼を光らせながら、にたりと口角をあげていた。
陽が接触した[異界のもの]――おそらく[異形]と、葉月、苡月を襲った[なにか]。
陽の持つサルファー鉱石が反応したことから、[異形]だけでなく、[侵略者]も近辺に出没していたことはほぼ確定している。
しかし、陽が造った『転異空間』に転送されたのは[異形]だけで、[侵略者]は現れないまま一旦の片がつき、戦闘は終わっている。
烈から聞いたところによると、烈が神社へ着く直前に陽が転送していて、そのすぐ後に葉月と苡月が倒れているのを見つけたのだという。
おそらく葉月側に接触していたのは[侵略者]で、陽が『現実世界』で[異形]と交戦している同刻、ほぼ同時進行で葉月もまた[侵略者]と交戦し、陽の転送直前に[異形]を置いて[侵略者]だけが先に[異界]へ還った、という推測がたつ。
生身の人間が[侵略者]相手にどれほど肉薄するか、自身の経験則をもってしても想像しがたいが、武道の達人である葉月ならば、ある程度粘れた可能性もうかがえる。
やや不可解なのは、近くに倒れていた苡月が無傷だった、ということである。
全身を負傷していたという葉月の状況から考えれば、2人共が似通ったタイミングで[侵略者]に遭遇していたとしたら、差は大小あれど双方なんらかの被害を受けていて当然と思えた。
もちろん葉月が身を挺して弟を守ったという推論もできるが、汚れもかすり傷もひとつもない、という結末には違和感が残る。
…一番考えられるのは、苡月が[侵略者]の標的になった、ということだけど…たまたま狙われたのか、それとも意図的だったのか、いずれかによって状況が相当変わってくるな…
…正直、本当に標的にされたのかどうかも、決めつけるには尚早な気がする。
…無傷のままということは、[異界]へさらう目的があった可能性が高い…けど、なんで残して還ったんだ…?
…こっちとしては不幸中の幸いではあるけど、残していく理由がわからない…
蒼矢はいつの間にか上半身を起こし、焦点の合わないスマホの画面へ目を落としながら、考えにふけっていた。
するとにわかに、視界の端でなにかが湧いて出るような気配を感じた。
「――…!?」
蒼矢は思考から意識を呼び戻し、顔をあげる。
「――お気付きかな? 麗しの『水使い』殿」
すると斜め後方、耳の後ろから少しかすれた声が届き、弾かれたようにふり向く。
顔を向けたその鼻先すぐそばには、黒髪を無造作に垂らした褐色の顔があり、血のように赤い眼を光らせながら、にたりと口角をあげていた。
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