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本編
第10話_看過-4
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髙城邸内に入りリビングへ通されると、ふり返った蒼矢から口を開く。
「…昼間の電話では悪かった」
「…? え?」
「! だから…最後切る時に、ああいう言い方になってしまったから…」
まったく思いあたる節のない烈の様子に、蒼矢は頬を赤らめながら眉を寄せる。
彼から突っ込まれた烈は、ようやく当時のやり取りを思い出す。
―― "今の話は忘れろ、その方が俺も気が楽だ" ――
「…あぁ…! 全然気にしてねぇよ」
「でも…烈の感情を無視して、一方的に指示を送ってしまって…」
「いや、お前の指示は至極真っ当だったよ。蒼矢が言ってた通り、あん時の俺は独りよがりなだけだった」
[侵略者]の2箇所同時湧きの事実を知り、蒼矢から電話越しに陽の方へ向かうよう指示を受けた烈は、手助けを無下に断られたことより、有言実行できないおのれの不甲斐なさの方に余程ショックを受けていた。
よって、蒼矢から突き放すような文句を吐かれたうえに一方的に切られたことは、あまり頭に残っていなかった。
「実際、戦局結構しんどかったからさ。…あそこでお前が冷静に指示くれてなかったら…俺は自分の身勝手で陽を犠牲にしちまうとこだった。…ああやって言ってもらえてよかったって、今は心底思ってる」
「…」
自分の失言をずっと気にしていたらしい蒼矢は、反省の弁を述べる烈を見、言葉を重ねようとして言い淀むような、消化不良な面持ちになる。
そんな彼の内情は知らず、烈は逆に聞き返す。
「お前こそどうなんだよ? [異界のもの]にだいぶひどくやられたって影斗から聞いたけど…」
「…! あぁ…」
問われた蒼矢は、はっきりとは伝えたくないのか、表情を曇らせながらも返答を濁す。
無意識にかばうように腹前を両腕で抱えこむ、その痛々しい仕草に、烈は思わず手が伸びる。
しかし抱き寄せようと動く寸前で、彼の身体に残る赤い痣が薄手のニットセーターの胸元から見え、足がすくんでしまった。
「…っ…」
さきほど蒼矢が玄関に出てきた時の、ふらつく足取りを思い出した烈は、おそらくそれが全身に広がっているのだろうと想像した。
自分が駆けつけることができなかった状況のなか、抱える使命のもとに傷付いていく、愛しい存在。
行き場のない憤りとやるせなさに、烈は奥歯を強く噛みしめた。
「…昼間の電話では悪かった」
「…? え?」
「! だから…最後切る時に、ああいう言い方になってしまったから…」
まったく思いあたる節のない烈の様子に、蒼矢は頬を赤らめながら眉を寄せる。
彼から突っ込まれた烈は、ようやく当時のやり取りを思い出す。
―― "今の話は忘れろ、その方が俺も気が楽だ" ――
「…あぁ…! 全然気にしてねぇよ」
「でも…烈の感情を無視して、一方的に指示を送ってしまって…」
「いや、お前の指示は至極真っ当だったよ。蒼矢が言ってた通り、あん時の俺は独りよがりなだけだった」
[侵略者]の2箇所同時湧きの事実を知り、蒼矢から電話越しに陽の方へ向かうよう指示を受けた烈は、手助けを無下に断られたことより、有言実行できないおのれの不甲斐なさの方に余程ショックを受けていた。
よって、蒼矢から突き放すような文句を吐かれたうえに一方的に切られたことは、あまり頭に残っていなかった。
「実際、戦局結構しんどかったからさ。…あそこでお前が冷静に指示くれてなかったら…俺は自分の身勝手で陽を犠牲にしちまうとこだった。…ああやって言ってもらえてよかったって、今は心底思ってる」
「…」
自分の失言をずっと気にしていたらしい蒼矢は、反省の弁を述べる烈を見、言葉を重ねようとして言い淀むような、消化不良な面持ちになる。
そんな彼の内情は知らず、烈は逆に聞き返す。
「お前こそどうなんだよ? [異界のもの]にだいぶひどくやられたって影斗から聞いたけど…」
「…! あぁ…」
問われた蒼矢は、はっきりとは伝えたくないのか、表情を曇らせながらも返答を濁す。
無意識にかばうように腹前を両腕で抱えこむ、その痛々しい仕草に、烈は思わず手が伸びる。
しかし抱き寄せようと動く寸前で、彼の身体に残る赤い痣が薄手のニットセーターの胸元から見え、足がすくんでしまった。
「…っ…」
さきほど蒼矢が玄関に出てきた時の、ふらつく足取りを思い出した烈は、おそらくそれが全身に広がっているのだろうと想像した。
自分が駆けつけることができなかった状況のなか、抱える使命のもとに傷付いていく、愛しい存在。
行き場のない憤りとやるせなさに、烈は奥歯を強く噛みしめた。
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