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本編
第10話_看過-3
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そんな劣等感に囚われそうになる烈の胸中に、蒼矢から静かに伝えられた言葉が響く。
――不安だったのは、俺も同じだよ――
――…俺は、ずっと待ってたよ――
…そうだった…蒼矢は、俺よりはるか前から俺を見守ってくれてたんだ。
…きっとひとりで不安抱えながらも、俺が気付くまで待ち続けてくれてたんだ…
蒼矢がはたしてどの立場から見ているのか、烈にはわからない。
しかしいかなる背景があろうとも、彼が烈を受けいれてくれていることは、"あの時"そう言葉を紡いだ紅く染まる頬と緩む目元から、まぎれもなく胸に伝わっていた。
…影斗の言う通り、ずっと待ってた蒼矢が求めてるのは、今みたいに悩む前の…蒼矢の想いに気付けてなかった時の俺なんだ。
…こんな情けねぇ今の俺じゃ、また不安にさせちまうだけだ…
……あいつの想いを裏切っちゃいけねぇ。求められてることに、もっと自信持たなきゃ…!
そう自分へ向けて喝を入れると、烈はスマホを取り出し、蒼矢へチャットアプリで到着予定を伝えておく。
そして木枯らしに肌を冷やされながら、自身を奮い立たせるように夜道を駆けだした。
髙城邸が見えてきた頃合いで、烈が到着する前に玄関の明かりがつき、ドアが開かれた。
「!」
そして邸内から慌ただしく現れた人物を見、烈は目を丸くする。
「蒼矢!」
「! 烈っ…!」
蒼矢はドアを半開きにしたまま飛び出し、門にもたれかかるように掴まりながら鍵を外す。
ともしたらそのまま道路へ倒れ込んでしまいそうな挙動に驚いた烈は、慌てて駆け寄る。
「蒼矢、待てっ! 行くからっ!」
門が開いた瞬間、彼が飛び出す前に受けとめる。
ふらつく脚を腰から抱えて支えてやると、蒼矢は烈の上着を両手で強く引っ張りながら掴み、頭を胸に押しつけた。
およそ彼らしくない行動に面食らうものの、ようやく間近で見れた蒼矢の顔とぬくもりに烈は安堵し、抱きながらその背中を軽くさすってやった。
「…危ねぇなぁ。大丈夫か?」
烈の胸におさまっていた蒼矢は、上から小さく声をかけられると、身体をびくりと跳ねあげ、我に返ったように顔をあげる。
そして着衣を握っていた手を外し、烈から後ずさりした。
「!? 蒼矢…?」
にわかに飛びつかれたと思ったらすぐまた距離を置かれ、展開についていけない烈は、戸惑った風に蒼矢の表情を追う。
「……ごめん」
蒼矢は烈から視線を外し、小さくそう漏らす。
先ほど玄関から出てきた時に見えた切迫した面差しは消え去り、一転して気まずそうな面持ちでうつむいていた。
「…」
烈にしてみれば、傍にいたい蒼矢と離ればなれという心中穏やかならざる状況のまま『転異空間』に入り、辛い戦闘に耐えた末にようやく再会でき、しおれていた心が一気に高揚しかけたところだった。
しかし、そんな待ち焦がれていた幸せな時は一瞬で過ぎ去ってしまい、当惑の面持ちで、ぬくもりと行き場を失った手を頭に持っていく。
蒼矢の謝罪の意図も、彼の中でどういう心境の変化があったのかもわからず、かける言葉を見つけることができなかった。
蒼矢は目をそらしたまま閉口し、両腕で包むように身体を抱いていた。
幾分か気落ちした烈だったが、寒そうに背を丸めて立つ彼を見、顔を窺うように身を屈め、優しく声をかけた。
「…ここじゃ体冷えるだろ。家ん中入んねぇか…?」
視線を地面へ落とし頬を染めながら、蒼矢はかすかに頷いた。
――不安だったのは、俺も同じだよ――
――…俺は、ずっと待ってたよ――
…そうだった…蒼矢は、俺よりはるか前から俺を見守ってくれてたんだ。
…きっとひとりで不安抱えながらも、俺が気付くまで待ち続けてくれてたんだ…
蒼矢がはたしてどの立場から見ているのか、烈にはわからない。
しかしいかなる背景があろうとも、彼が烈を受けいれてくれていることは、"あの時"そう言葉を紡いだ紅く染まる頬と緩む目元から、まぎれもなく胸に伝わっていた。
…影斗の言う通り、ずっと待ってた蒼矢が求めてるのは、今みたいに悩む前の…蒼矢の想いに気付けてなかった時の俺なんだ。
…こんな情けねぇ今の俺じゃ、また不安にさせちまうだけだ…
……あいつの想いを裏切っちゃいけねぇ。求められてることに、もっと自信持たなきゃ…!
そう自分へ向けて喝を入れると、烈はスマホを取り出し、蒼矢へチャットアプリで到着予定を伝えておく。
そして木枯らしに肌を冷やされながら、自身を奮い立たせるように夜道を駆けだした。
髙城邸が見えてきた頃合いで、烈が到着する前に玄関の明かりがつき、ドアが開かれた。
「!」
そして邸内から慌ただしく現れた人物を見、烈は目を丸くする。
「蒼矢!」
「! 烈っ…!」
蒼矢はドアを半開きにしたまま飛び出し、門にもたれかかるように掴まりながら鍵を外す。
ともしたらそのまま道路へ倒れ込んでしまいそうな挙動に驚いた烈は、慌てて駆け寄る。
「蒼矢、待てっ! 行くからっ!」
門が開いた瞬間、彼が飛び出す前に受けとめる。
ふらつく脚を腰から抱えて支えてやると、蒼矢は烈の上着を両手で強く引っ張りながら掴み、頭を胸に押しつけた。
およそ彼らしくない行動に面食らうものの、ようやく間近で見れた蒼矢の顔とぬくもりに烈は安堵し、抱きながらその背中を軽くさすってやった。
「…危ねぇなぁ。大丈夫か?」
烈の胸におさまっていた蒼矢は、上から小さく声をかけられると、身体をびくりと跳ねあげ、我に返ったように顔をあげる。
そして着衣を握っていた手を外し、烈から後ずさりした。
「!? 蒼矢…?」
にわかに飛びつかれたと思ったらすぐまた距離を置かれ、展開についていけない烈は、戸惑った風に蒼矢の表情を追う。
「……ごめん」
蒼矢は烈から視線を外し、小さくそう漏らす。
先ほど玄関から出てきた時に見えた切迫した面差しは消え去り、一転して気まずそうな面持ちでうつむいていた。
「…」
烈にしてみれば、傍にいたい蒼矢と離ればなれという心中穏やかならざる状況のまま『転異空間』に入り、辛い戦闘に耐えた末にようやく再会でき、しおれていた心が一気に高揚しかけたところだった。
しかし、そんな待ち焦がれていた幸せな時は一瞬で過ぎ去ってしまい、当惑の面持ちで、ぬくもりと行き場を失った手を頭に持っていく。
蒼矢の謝罪の意図も、彼の中でどういう心境の変化があったのかもわからず、かける言葉を見つけることができなかった。
蒼矢は目をそらしたまま閉口し、両腕で包むように身体を抱いていた。
幾分か気落ちした烈だったが、寒そうに背を丸めて立つ彼を見、顔を窺うように身を屈め、優しく声をかけた。
「…ここじゃ体冷えるだろ。家ん中入んねぇか…?」
視線を地面へ落とし頬を染めながら、蒼矢はかすかに頷いた。
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