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本編
第9話_惨劇のあと-5
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影斗は一旦話を区切り、改めて瞳に鋭さを帯びる。
「…今度はこっちの番だ。長いことお預け喰らわせちまったな」
その口ぶりに、烈は途端に目を見張り顔色を変える。
焦燥感募るように前のめりになる彼へ、影斗は落ち着いた面差しで口を開いた。
「一番知りたいだろうところから先に結論言うと、こっちの一戦で蒼矢は結構なダメージ受けた。…後発属性使い過ぎのオーバーワークに加えて、物理的にも負傷してる」
「…っ…!」
「意識はあるけど今は動ける状態じゃねぇから、家に置いてきた。回復までちょい時間かかりそう」
影斗の報告に烈は顔を強張らせ、なにかを言いかけようとしたが口から空気だけを漏らし、視線を落として黙りこんだ。
静かに実情を告白する影斗の面持ちには、沈着を保つなかにも少し陰りが見られ、彼も自分と同じように疲弊し、結末に悔いを残しているだろうと察せたからだった。
影斗は、ため息まじりに消沈したトーンで続ける。
「…お前らも未解決だろうが、こっちも"再戦確定"だ」
「…『放逐』使ったのか?」
「ああ。こっちに出没した[侵略者]はなかなかしぶとくてな…2馬力じゃ倒しきれなかった。しかも急所特定する余裕もなかったから、まるで意味のねぇ一戦になっちまったよ。…こっちの被害だけ出て終わりだ」
影斗は自分自身への不甲斐なさに苛立っているのか、面差しを歪めながらそう吐き捨てた。
「…どっちも仕留めきれてねぇとなると、だいぶ面倒くせぇことになるな…」
「再戦も同時湧きしたら、どうすればいいんだろ」
「むこう数日は、なるべく居るとこ固まっといた方がいいだろうな」
「影斗はどうするんだ? お前いないと、また倒しきれなくなっちまうとかなりかねないぞ」
「しばらく楠瀬邸に厄介になることにするわ。合鍵持ってるし」
「…えぇっ!?」
衝撃の事実に、烈は一瞬止まってから驚きの声をあげるが、影斗は涼しい顔でしゃあしゃあと続ける。
「泊まること多かったからさー。葉月が出張してる間に来ることも結構あったし、都度いるかいねぇか確認とるの面倒臭くなって作らせた」
「…そ、そっか。とにかく鍵があるなら大丈夫だな…」
「おー。で、陽はどうすっかね。自宅待機とか言うとまたごねるんじゃねぇか? 奴は」
「ああ…そうだな。花房家に泊めれられねぇか、母ちゃんに頼んでみる」
「了解、任せた」
そう示し合わせると、疲労を重ねた男たちは手早く解散の流れに動いていく。
立ちあがった烈は、改めて楠瀬家の今の光景を見渡す。
「……」
本来ならば今日、数時間前から始まる予定だった、誕生パーティー。
その心躍るイベントのために、主賓である葉月・苡月兄弟が用意していた、居間一面の飾りつけと、キッチンに所狭しと並べられた手料理の数々。
きっと今頃は、食事も済み適度に腹も満たされて、歓談のなか蒼矢が買ってきたケーキを切り分けていただろう。
今件の被害者となってしまった彼らが、どんな思いでこの場を作りあげ、パーティの時間を心待ちにしていたのだろうかと思うと、烈の胸に熱いものがこみあげ、拳を硬く握る。
居間を眺めたまま固まる烈の背中を、影斗はやはり黙って見やり、彼の気が済むまでその場で待ってやった。
「…今度はこっちの番だ。長いことお預け喰らわせちまったな」
その口ぶりに、烈は途端に目を見張り顔色を変える。
焦燥感募るように前のめりになる彼へ、影斗は落ち着いた面差しで口を開いた。
「一番知りたいだろうところから先に結論言うと、こっちの一戦で蒼矢は結構なダメージ受けた。…後発属性使い過ぎのオーバーワークに加えて、物理的にも負傷してる」
「…っ…!」
「意識はあるけど今は動ける状態じゃねぇから、家に置いてきた。回復までちょい時間かかりそう」
影斗の報告に烈は顔を強張らせ、なにかを言いかけようとしたが口から空気だけを漏らし、視線を落として黙りこんだ。
静かに実情を告白する影斗の面持ちには、沈着を保つなかにも少し陰りが見られ、彼も自分と同じように疲弊し、結末に悔いを残しているだろうと察せたからだった。
影斗は、ため息まじりに消沈したトーンで続ける。
「…お前らも未解決だろうが、こっちも"再戦確定"だ」
「…『放逐』使ったのか?」
「ああ。こっちに出没した[侵略者]はなかなかしぶとくてな…2馬力じゃ倒しきれなかった。しかも急所特定する余裕もなかったから、まるで意味のねぇ一戦になっちまったよ。…こっちの被害だけ出て終わりだ」
影斗は自分自身への不甲斐なさに苛立っているのか、面差しを歪めながらそう吐き捨てた。
「…どっちも仕留めきれてねぇとなると、だいぶ面倒くせぇことになるな…」
「再戦も同時湧きしたら、どうすればいいんだろ」
「むこう数日は、なるべく居るとこ固まっといた方がいいだろうな」
「影斗はどうするんだ? お前いないと、また倒しきれなくなっちまうとかなりかねないぞ」
「しばらく楠瀬邸に厄介になることにするわ。合鍵持ってるし」
「…えぇっ!?」
衝撃の事実に、烈は一瞬止まってから驚きの声をあげるが、影斗は涼しい顔でしゃあしゃあと続ける。
「泊まること多かったからさー。葉月が出張してる間に来ることも結構あったし、都度いるかいねぇか確認とるの面倒臭くなって作らせた」
「…そ、そっか。とにかく鍵があるなら大丈夫だな…」
「おー。で、陽はどうすっかね。自宅待機とか言うとまたごねるんじゃねぇか? 奴は」
「ああ…そうだな。花房家に泊めれられねぇか、母ちゃんに頼んでみる」
「了解、任せた」
そう示し合わせると、疲労を重ねた男たちは手早く解散の流れに動いていく。
立ちあがった烈は、改めて楠瀬家の今の光景を見渡す。
「……」
本来ならば今日、数時間前から始まる予定だった、誕生パーティー。
その心躍るイベントのために、主賓である葉月・苡月兄弟が用意していた、居間一面の飾りつけと、キッチンに所狭しと並べられた手料理の数々。
きっと今頃は、食事も済み適度に腹も満たされて、歓談のなか蒼矢が買ってきたケーキを切り分けていただろう。
今件の被害者となってしまった彼らが、どんな思いでこの場を作りあげ、パーティの時間を心待ちにしていたのだろうかと思うと、烈の胸に熱いものがこみあげ、拳を硬く握る。
居間を眺めたまま固まる烈の背中を、影斗はやはり黙って見やり、彼の気が済むまでその場で待ってやった。
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