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本編
第9話_惨劇のあと-3
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その夜、烈は昼間に起きた出来事に関する諸用を全て終わらせてから、楠瀬邸へ戻ってきた。
警察沙汰になった駐車場は立入禁止になっていたが、住居へは出入りできるようになっていた。
チャットアプリで前もって示し合せたとおり、玄関には明かりがついていて、戸を引くと上り框に影斗が立っていた。
誰かを出迎えるなどという真似は一番似合わない彼だったが、方々へ走り回って疲労困憊だろう烈を気遣ってのことと思われた。
「…よう、お疲れ」
「…おー、お前もな」
低く声をかけ合うと、ふたりは家主のいない家の中を進み、居間へと入っていく。
ほぼ同時に座りこむと、影斗から口を開く。
「とんだ一日になっちまったな。…かいつまんで経過と顛末聞かせろ」
「…葉月さんはひとまず無事だった。しばらく入院するけど、適切に処置されればそんなに長引かないだろうって」
「苡月は?」
「葉月さんと同じ病院にいる。着いてから意識取り戻したみたいだけど、念のための検査と経過観察で1,2日入院するってさ」
烈は、『転異空間』から帰還し警察官と鉢合わせた後、陽と楠瀬邸へ入り、葉月の実家へ一報を入れた。
葉月が運ばれた病院から連絡が来たら共有してもらえるように頼んで待機し、ほどなくして折り返しが入り、病院へ向かった。
花房酒店へ預けた栞奈へは、実家から知らされた方がいいだろうと考え、烈からはあえて連絡は入れなかった。
病院へ着いて受付で面会を希望したが、親族ではないからと拒否された。
同行していた陽がごねたところ、葉月の外傷は著しい程度だったものの昏睡状態からは脱した、とだけ説明をもらえた。
数時間後、報せを受けた葉月の母親と、母が着くまで花房宅で待機していた栞奈が到着した。
彼女たちが病院へ来るまで、そして病院関係者から経過と今後の説明を受けている間も、烈と陽は待合スペースでひたすら待ち続けた。
その日に出来ることが済むと、葉月の母親は近郊のホテルにそのまま宿泊、栞奈は実家へ帰ることとなった。
自分がいない間に兄弟を襲った惨劇に、栞奈はひどく動揺し、現実を受け入れられない様子だった。
しかし、合流した母としばらく共にし、医師らから冷静かつ真摯な説明がされたからか、病院をあとにする頃には沈鬱な面持ちながらも落ち着きを取り戻していた。
実家までつき添おうかと声がけした烈だったが、栞奈は静かに断った。
「大丈夫よ、これ以上つき合わせたら烈君倒れちゃう。電車乗るだけだし、帰ればお父さんたち待っててくれてるから」
自分と同じようにショックを受けているだろうと察したか、栞奈は烈を見あげてそう言い、薄く微笑ってみせた。
気丈な栞奈を駅まで見送り、まだ幾分か情緒不安定な陽を自宅まで送り届け、烈はようやく楠瀬邸へと戻ってきたのだった。
警察沙汰になった駐車場は立入禁止になっていたが、住居へは出入りできるようになっていた。
チャットアプリで前もって示し合せたとおり、玄関には明かりがついていて、戸を引くと上り框に影斗が立っていた。
誰かを出迎えるなどという真似は一番似合わない彼だったが、方々へ走り回って疲労困憊だろう烈を気遣ってのことと思われた。
「…よう、お疲れ」
「…おー、お前もな」
低く声をかけ合うと、ふたりは家主のいない家の中を進み、居間へと入っていく。
ほぼ同時に座りこむと、影斗から口を開く。
「とんだ一日になっちまったな。…かいつまんで経過と顛末聞かせろ」
「…葉月さんはひとまず無事だった。しばらく入院するけど、適切に処置されればそんなに長引かないだろうって」
「苡月は?」
「葉月さんと同じ病院にいる。着いてから意識取り戻したみたいだけど、念のための検査と経過観察で1,2日入院するってさ」
烈は、『転異空間』から帰還し警察官と鉢合わせた後、陽と楠瀬邸へ入り、葉月の実家へ一報を入れた。
葉月が運ばれた病院から連絡が来たら共有してもらえるように頼んで待機し、ほどなくして折り返しが入り、病院へ向かった。
花房酒店へ預けた栞奈へは、実家から知らされた方がいいだろうと考え、烈からはあえて連絡は入れなかった。
病院へ着いて受付で面会を希望したが、親族ではないからと拒否された。
同行していた陽がごねたところ、葉月の外傷は著しい程度だったものの昏睡状態からは脱した、とだけ説明をもらえた。
数時間後、報せを受けた葉月の母親と、母が着くまで花房宅で待機していた栞奈が到着した。
彼女たちが病院へ来るまで、そして病院関係者から経過と今後の説明を受けている間も、烈と陽は待合スペースでひたすら待ち続けた。
その日に出来ることが済むと、葉月の母親は近郊のホテルにそのまま宿泊、栞奈は実家へ帰ることとなった。
自分がいない間に兄弟を襲った惨劇に、栞奈はひどく動揺し、現実を受け入れられない様子だった。
しかし、合流した母としばらく共にし、医師らから冷静かつ真摯な説明がされたからか、病院をあとにする頃には沈鬱な面持ちながらも落ち着きを取り戻していた。
実家までつき添おうかと声がけした烈だったが、栞奈は静かに断った。
「大丈夫よ、これ以上つき合わせたら烈君倒れちゃう。電車乗るだけだし、帰ればお父さんたち待っててくれてるから」
自分と同じようにショックを受けているだろうと察したか、栞奈は烈を見あげてそう言い、薄く微笑ってみせた。
気丈な栞奈を駅まで見送り、まだ幾分か情緒不安定な陽を自宅まで送り届け、烈はようやく楠瀬邸へと戻ってきたのだった。
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