ガイアセイバーズ９ -萌える若葉を摘む獣-

本編

第9話_惨劇のあと-1

人員不足により波乱含む経過があったものの、烈レツと陽アキラは、窮地を乗り越えた末に[獣の異形]を『転異空間』で残らず駆逐し、無事『現実世界』へと帰還してきた。

回復役の『エピドート』不在ゆえ、負傷を回復できないまま帰還したふたりは全身怪我まみれだったが、痛みを感覚の片隅に追いやってすぐさま走りだし、神社裏手の駐車場へ向かう。

特にわかる説明もなくついてくるように言われ、烈のあとを追った陽だったが、駐車場の全景が見えてくると、目を見張り立ち止まる。

「…な、なんだよ、これ…！？」
「……！」

全身を凍らせる陽の隣で、烈も絶句し息を詰まらせる。

駐車場には赤色灯を点したまま停まる警察車両と、数人の警察官の姿があった。
周囲を警戒するように歩き回っている者もいたが、彼らの概ねはある一箇所にまとまり、腕を組んで目を落としていたり、しゃがんで地面を確かめたりしていた。

地面には血痕が広く残されていて、敷き詰められた白い玉砂利は、嫌がおうにもその様を目立たせていた。

警察官が囲うその場所には、烈が『転送』する前には葉月の身体が横たわっていたはずだった。
しかし彼の姿はおろか、近くで倒れていた苡月の姿もなくなっていた。

ごくりと大きく喉を鳴らしてから、烈は意を決して歩み寄っていく。

「――ああきみ、近付いちゃだめだよ」
「す、すんません。ここの神社の宮司さん…楠瀬 葉月さんに用があって来たんすけど…」
「…！　楠瀬さんの知り合い？　…そうか」

近寄る烈へ注意を送る警察官だったが、彼の問いかけに目を見張り、思案するように少し沈黙してから続ける。

「…少し前に参拝者から通報があって、病院へ運ばれていったよ」
「…！！」
「どうやら全身を負傷していたらしくて…事件性があるということで、我々もこうして呼ばれてね」
「まぁ…この現場じゃねぇ…」

警察官たちはそう言葉を濁し、変わりはてた地面へ目を落としていた。