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本編
第8話_二点同時戦闘-15
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やがて、蒼矢の首が力なくゆっくり前に折れると、[浬]はとどめとばかりに、一段と大きく槍をふり被った。
「これで終わりだ…落ちろ!!」
と、[浬]が吠えると同時に、辺りが漆黒の闇に包まれる。
「…!?」
突如起きた異変に[浬]は周囲を見渡そうとするが、既に視界は失われ、眼前には闇だけが漂う。
状況が解らず二、三度見回す素振りを見せたものの、やがて闇の正体に思考が行きつき、顔貌を不快に歪ませた。
「…くたばり損ないめ。まことに美徳の欠片もない下郎共よ」
意識を呼び戻した影斗は、離れた地点から『放逐』能力を使い、[浬]を闇色の霧に包む。
『放逐』は闇属性を駆るオニキスが使う固有能力で、[異界のもの]を強制的に『転異空間』から[異界]へ還す、セイバー側勢力が窮地に追いやられた場合に唯一の突破口となり得る、奥の手とも言える技である。
その高い有用性に比例して、発動には全快状態の『オニキス』が持つ体力・精神力のほとんどを消耗し、戦局の経過・動向次第では発動できなくなるリスクを抱えるなど、使うタイミングにシビアな判断が求められる。
『放逐』の効果を知る[浬]は悪態をつきながらも早々に諦め、底先のない闇の中で棒立ちになる。
オニキスの掌が固く握りしめられると、闇色の霧は徐々に収縮していく。
極小の粒になった闇は、捕えた[浬]ごと『転異空間』から消え去った。
『転異空間』内から、[異界のもの]の気配がなくなった。
「……っ!」
額に油汗を浮かばせ、オニキスは肩を上下しながら脱力する。
次いですぐに立ちあがり、氷の破片が一面に飛び散る氷塊へと飛ぶ。
「…アズライト!!」
[浬]から連撃を浴び続けたアズライトは氷塊に埋まり、頭を前へ傾げていた。
オニキスが『暗虚』で周りの氷を崩し、軽く身体を揺り動かすと、頭だけがぴくりと動く。
「アズライト…!」
「……[奴]…は…」
「『放逐』使った。…一旦終わりだ」
頭をもたげるアズライトへ、オニキスが小さくそう告げる。
アズライトは氷に塗れる髪の隙間からオニキスへと見あげ、青い唇をかすかに動かす。
「…すみません…、倒しきれませんでした…」
「俺だって同じだ。…悪かったな、加勢に来たのに期待に応えてやれなくて」
そう応えながらも、オニキスはふと眉をひそめる。
視線を合わせたアズライトの眼は、藍色の瞳に差し込む光が幾分か濁っているように見えた。
しかし、彼の意識は再び遠のいて目が閉じられてしまい、その一瞬の違和感を確かめることはできなかった。
『放逐』によりすべての力を使い果たしたオニキスは、失神したアズライトを氷塊から掘り出したあと膝が立たなくなり、彼の身体を抱えながら、よろよろとその場に崩れて尻もちをついた。
「……」
胡座をかいた脚の間にアズライトを寝かせ、オニキスは次第に薄れていく『転異空間』を苦々しげに見送っていた。
「これで終わりだ…落ちろ!!」
と、[浬]が吠えると同時に、辺りが漆黒の闇に包まれる。
「…!?」
突如起きた異変に[浬]は周囲を見渡そうとするが、既に視界は失われ、眼前には闇だけが漂う。
状況が解らず二、三度見回す素振りを見せたものの、やがて闇の正体に思考が行きつき、顔貌を不快に歪ませた。
「…くたばり損ないめ。まことに美徳の欠片もない下郎共よ」
意識を呼び戻した影斗は、離れた地点から『放逐』能力を使い、[浬]を闇色の霧に包む。
『放逐』は闇属性を駆るオニキスが使う固有能力で、[異界のもの]を強制的に『転異空間』から[異界]へ還す、セイバー側勢力が窮地に追いやられた場合に唯一の突破口となり得る、奥の手とも言える技である。
その高い有用性に比例して、発動には全快状態の『オニキス』が持つ体力・精神力のほとんどを消耗し、戦局の経過・動向次第では発動できなくなるリスクを抱えるなど、使うタイミングにシビアな判断が求められる。
『放逐』の効果を知る[浬]は悪態をつきながらも早々に諦め、底先のない闇の中で棒立ちになる。
オニキスの掌が固く握りしめられると、闇色の霧は徐々に収縮していく。
極小の粒になった闇は、捕えた[浬]ごと『転異空間』から消え去った。
『転異空間』内から、[異界のもの]の気配がなくなった。
「……っ!」
額に油汗を浮かばせ、オニキスは肩を上下しながら脱力する。
次いですぐに立ちあがり、氷の破片が一面に飛び散る氷塊へと飛ぶ。
「…アズライト!!」
[浬]から連撃を浴び続けたアズライトは氷塊に埋まり、頭を前へ傾げていた。
オニキスが『暗虚』で周りの氷を崩し、軽く身体を揺り動かすと、頭だけがぴくりと動く。
「アズライト…!」
「……[奴]…は…」
「『放逐』使った。…一旦終わりだ」
頭をもたげるアズライトへ、オニキスが小さくそう告げる。
アズライトは氷に塗れる髪の隙間からオニキスへと見あげ、青い唇をかすかに動かす。
「…すみません…、倒しきれませんでした…」
「俺だって同じだ。…悪かったな、加勢に来たのに期待に応えてやれなくて」
そう応えながらも、オニキスはふと眉をひそめる。
視線を合わせたアズライトの眼は、藍色の瞳に差し込む光が幾分か濁っているように見えた。
しかし、彼の意識は再び遠のいて目が閉じられてしまい、その一瞬の違和感を確かめることはできなかった。
『放逐』によりすべての力を使い果たしたオニキスは、失神したアズライトを氷塊から掘り出したあと膝が立たなくなり、彼の身体を抱えながら、よろよろとその場に崩れて尻もちをついた。
「……」
胡座をかいた脚の間にアズライトを寝かせ、オニキスは次第に薄れていく『転異空間』を苦々しげに見送っていた。
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