81 / 109
本編
第8話_二点同時戦闘-14
しおりを挟む
[浬]は蒼矢を追い、氷塊に当たって跳ね返る痩躯を腕ひとつで受けとめ、首を掴んで氷塊へ押しつける。
「っんぅ…!」
「どうやら力が底を尽きたとみえるな。存外手こずらされたぞ、非力な生命体よ」
踵を浮かし、首を絞められながらももがくアズライトへ鼻を鳴らし、その手に握られる『氷柱』へふと目を落とす。
「…その得物を見ていると、かつての記憶が蘇って無性に気が昂る。我に呑まれて墜ち、姿を消した不出来と同じ末路を辿るといい」
[浬]は顔面を至近距離まで寄せ、憎悪をさらけ出した面様で耳元に囁くと、薄目を開くアズライトの顔に息を吹きかけた。
「…!?」
冷たい空気が藍色の眼を包み、視界が白む。
「…あああぁっ!!」
アズライトは一瞬思考と身体を固まらせた後、目を見開きながら絶叫をあげた。
首を解放された身体は地に崩れ落ち、膝を折って両手で目を覆う。
[浬]は、しゃがみ込み悶えるアズライトを見下ろし、口角をあげる。
「我の手を煩わせた汝の罪は重い。生命体としての最期、そして"『守護するもの』"としての最期をくれてやろう」
ついでそう言い捨て、三叉槍を持つ腕を高くあげ、その身体へふり降ろす。
「あ゛っ…!!」
回避動作をとれないままに直撃を受け、アズライトは弾かれ飛んでいく。
[浬]は宙へ弧を描く標的を巨体を揺らして猛追し、脚で地をひび割らせながら跳躍して追いつくと、更に追撃を与える。
「あう゛っ!!」
軌道を変えられたアズライトは斜め下方へ急速落下していき、氷塊に叩きつけられた。
「……ぅ…」
「…見てくれに反して、実にしぶとい奴よ…」
氷塊に身体をめり込ませながらも、かすかにうめくアズライトへ、[浬]は眉をあげて苛立ちを表出する。
そして身動きを取れず磔にされた身体へ三叉槍の穂先を向け、渾身の腕力で突く。
「…っ…!!」
「下等生物が、形も残らぬようにしてくれるわ…!」
[浬]の攻撃はとめどなくくり出され、突かれる度にアズライトの身体は埋もれていき、周りの氷片が弾け飛ぶ。
氷気で防御を固めているアズライトだったが、損傷は確実に蓄積されていく。
戦闘スーツは胸や腹を中心に千切れ飛び、赤痣にまみれていく。
身体の自由を奪われ、なすすべもないまま余すことなく攻撃を浴び続けるアズライトは、苦悶に満ちた面持ちから少しずつ強張りを失い、意識を遠のかせていく。
「っんぅ…!」
「どうやら力が底を尽きたとみえるな。存外手こずらされたぞ、非力な生命体よ」
踵を浮かし、首を絞められながらももがくアズライトへ鼻を鳴らし、その手に握られる『氷柱』へふと目を落とす。
「…その得物を見ていると、かつての記憶が蘇って無性に気が昂る。我に呑まれて墜ち、姿を消した不出来と同じ末路を辿るといい」
[浬]は顔面を至近距離まで寄せ、憎悪をさらけ出した面様で耳元に囁くと、薄目を開くアズライトの顔に息を吹きかけた。
「…!?」
冷たい空気が藍色の眼を包み、視界が白む。
「…あああぁっ!!」
アズライトは一瞬思考と身体を固まらせた後、目を見開きながら絶叫をあげた。
首を解放された身体は地に崩れ落ち、膝を折って両手で目を覆う。
[浬]は、しゃがみ込み悶えるアズライトを見下ろし、口角をあげる。
「我の手を煩わせた汝の罪は重い。生命体としての最期、そして"『守護するもの』"としての最期をくれてやろう」
ついでそう言い捨て、三叉槍を持つ腕を高くあげ、その身体へふり降ろす。
「あ゛っ…!!」
回避動作をとれないままに直撃を受け、アズライトは弾かれ飛んでいく。
[浬]は宙へ弧を描く標的を巨体を揺らして猛追し、脚で地をひび割らせながら跳躍して追いつくと、更に追撃を与える。
「あう゛っ!!」
軌道を変えられたアズライトは斜め下方へ急速落下していき、氷塊に叩きつけられた。
「……ぅ…」
「…見てくれに反して、実にしぶとい奴よ…」
氷塊に身体をめり込ませながらも、かすかにうめくアズライトへ、[浬]は眉をあげて苛立ちを表出する。
そして身動きを取れず磔にされた身体へ三叉槍の穂先を向け、渾身の腕力で突く。
「…っ…!!」
「下等生物が、形も残らぬようにしてくれるわ…!」
[浬]の攻撃はとめどなくくり出され、突かれる度にアズライトの身体は埋もれていき、周りの氷片が弾け飛ぶ。
氷気で防御を固めているアズライトだったが、損傷は確実に蓄積されていく。
戦闘スーツは胸や腹を中心に千切れ飛び、赤痣にまみれていく。
身体の自由を奪われ、なすすべもないまま余すことなく攻撃を浴び続けるアズライトは、苦悶に満ちた面持ちから少しずつ強張りを失い、意識を遠のかせていく。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる