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本編
第8話_二点同時戦闘-12
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「面倒臭ぇ奴だな。潔く肉塊になるか大人しく退くか、早いとこどっちかに決めな。こちとら薄鈍にかまけてる暇なんざねぇんだからよ」
影斗は青い巨体へ向け軽く挑発してからふいに距離を詰め、鉤爪を三叉槍へ引っかけて相手の動きを封じる。
[浬]は得物を外そうともがいたが、オニキスはその懐に入りこみ、身体中から一気に紫黒色の霧を噴出した。
双方が霧に包まれる直前に、蒼矢は素早くその場から退避する。
と次の瞬間、黒い霧の隙間から幾束もの白い長毛が突き出る。
白髪は一時空間をゆらゆらとうねったあと、霧をさらに外側から覆うように丸い篭型に成型し、再び霧の中へ収縮していく。
「――!!」
やや離れて様子をうかがっていたアズライトは目を見張り、退避したはずの毒霧の空間へと全速で向かう。
しかし到達にはひと足遅く、オニキスと[侵略者]を包む霧は、海域へ引きずり込まれるように落ちていった。
「オニキス!!」
[浬]の伸ばした頭髪に全身を絡め取られたオニキスは、息の出来ない水域に拘束される。
噴出した毒霧は水に溶かされ、[浬]へ影響を及ぼす前に散りぢりにかき消えていく。
[浬]は、捕えたオニキスを睨み据える。
「無断で我の"目的"に介入してきおってからに、造作もないことよ。汝の望み通り、早々に引導を渡してくれるわ、『水使い』の前座としてな」
「……っ!!」
全身を締められ、オニキスの顔が苦悶に歪み、顎をあげて空気を大量に吐き出す。
三叉槍にふり払われた暗虚が両腕から離れ、水界の底へ沈んでいく。
アズライトは『凍氷』属性に変えて入水し、絡む双方へ追いつくと『氷柱』の切っ先を[浬]の頭部めがけて差す。
攻撃は水界に手馴れる[浬]に容易く回避されるが、わずかにその体躯がオニキスから離れ、アズライトは素早く切り替えふた振り目を双方の間に漂う白髪へ入れる。
『氷柱』に断たれた白髪が、氷気にあてられて凝固し、周囲の水域へ及んで青白くひび割れていく。
「…ちっ…!」
白髪を伝って氷化が体躯へ到達する前に、[浬]は頭髪を自切して退避する。
[浬]が離れたことを目視すると、アズライトは属性を『水』に戻し、オニキスの肩を抱いて急ぎ浮上する。
影斗は青い巨体へ向け軽く挑発してからふいに距離を詰め、鉤爪を三叉槍へ引っかけて相手の動きを封じる。
[浬]は得物を外そうともがいたが、オニキスはその懐に入りこみ、身体中から一気に紫黒色の霧を噴出した。
双方が霧に包まれる直前に、蒼矢は素早くその場から退避する。
と次の瞬間、黒い霧の隙間から幾束もの白い長毛が突き出る。
白髪は一時空間をゆらゆらとうねったあと、霧をさらに外側から覆うように丸い篭型に成型し、再び霧の中へ収縮していく。
「――!!」
やや離れて様子をうかがっていたアズライトは目を見張り、退避したはずの毒霧の空間へと全速で向かう。
しかし到達にはひと足遅く、オニキスと[侵略者]を包む霧は、海域へ引きずり込まれるように落ちていった。
「オニキス!!」
[浬]の伸ばした頭髪に全身を絡め取られたオニキスは、息の出来ない水域に拘束される。
噴出した毒霧は水に溶かされ、[浬]へ影響を及ぼす前に散りぢりにかき消えていく。
[浬]は、捕えたオニキスを睨み据える。
「無断で我の"目的"に介入してきおってからに、造作もないことよ。汝の望み通り、早々に引導を渡してくれるわ、『水使い』の前座としてな」
「……っ!!」
全身を締められ、オニキスの顔が苦悶に歪み、顎をあげて空気を大量に吐き出す。
三叉槍にふり払われた暗虚が両腕から離れ、水界の底へ沈んでいく。
アズライトは『凍氷』属性に変えて入水し、絡む双方へ追いつくと『氷柱』の切っ先を[浬]の頭部めがけて差す。
攻撃は水界に手馴れる[浬]に容易く回避されるが、わずかにその体躯がオニキスから離れ、アズライトは素早く切り替えふた振り目を双方の間に漂う白髪へ入れる。
『氷柱』に断たれた白髪が、氷気にあてられて凝固し、周囲の水域へ及んで青白くひび割れていく。
「…ちっ…!」
白髪を伝って氷化が体躯へ到達する前に、[浬]は頭髪を自切して退避する。
[浬]が離れたことを目視すると、アズライトは属性を『水』に戻し、オニキスの肩を抱いて急ぎ浮上する。
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