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本編
第8話_二点同時戦闘-9
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双方が衝突すると、周囲の水面が大きく波立ち、二手、三手と得物がぶつかる度に、津波のように放射状に散っていく。
体格には歴然の差があったが得物の攻撃力は同程度で、蒼矢は相手との筋力差を属性の威力で埋め、ほぼ互角に渡り合う。
[浬]は三叉槍をふるう手を緩めて少しずつ後退していき、ふと身を引いて水中へ沈んでいく。
「…!」
そのまま姿を消す相手にアズライトは一瞬迷いを見せたが、属性を『水』に変え、水中に潜って追う。
アズライトの視界に、遠ざかっていく[浬]の尾ひれが見える。
[浬]を追い、得物を『水面』に替えたアズライトは足を蹴り出そうとしたが、周囲の水域に数多の魚影が浮かびあがる。
ふいに現れた[魚の異形]は、アズライトの進路を妨げるように大挙で旋回し、動きを止めた彼へ向け顎を開いて鋭い歯を見せ、全方位から襲いかかる。
「うぁっ…!!」
多勢を『水面』のひと太刀ではかわしきれず、アズライトは一瞬にして全身の戦闘スーツを裂かれ、口から大きな泡を吐く。
アズライトが体勢を崩したところを、翻って戻った[浬]は機を逃さず猛接近し、槍先を差す。
が、身体を貫かれる直前でアズライトは翻し、喰いつく[魚群]を振り払って水中から逃れる。
空中へ脱し、呼吸を整え足下を注視するが、[浬]が追って出てくる様子はない。
波立つことなく沈黙する水面を見、アズライトは一時思案した後、再び属性を『凍氷』に変える。
そして手のひらをかざして数多の氷塊の刃を生み出し、眼下へ向けて放つ。
刃はとどまることなく無尽蔵に繰り出され、水中へ向けて穿たれていく。
時おり衝撃に弾かれたか[魚]が宙へ跳ね、氷気にあてられて一瞬にして凍りつき、粉々に砕けて水面へ散っていく。
あたり一面に水飛沫があがり続け、次第に氷の膜が張り、もはや水中を通りきらなくなった刃が水面に突き刺さっていく。
一帯が氷の世界へ変貌した頃合いで、水中に潜んでいた[浬]が氷を割って躍り出てくる。
全身に霜を帯び、鼻から凍った息を噴き出しながら、[浬]は空中に佇むアズライトを睨みあげる。
「…まことに小賢しい奴よ…まさに"害悪"。…我の手で確実に葬ってくれる」
尾ひれから頭頂部へと身震いさせ、まとわりつく霜をふり払うと、[浬]は丸太のように太い四肢の筋肉を張り、三叉槍を硬く握りしめる。
憤怒の表情を露出する[侵略者]を静かに見やりながら、アズライトは青白い氷気をまとい防御を固め、再び『氷柱』を呼び出す。
今度は凍てついた氷上にて、真っ向からぶつかり合った。
体格には歴然の差があったが得物の攻撃力は同程度で、蒼矢は相手との筋力差を属性の威力で埋め、ほぼ互角に渡り合う。
[浬]は三叉槍をふるう手を緩めて少しずつ後退していき、ふと身を引いて水中へ沈んでいく。
「…!」
そのまま姿を消す相手にアズライトは一瞬迷いを見せたが、属性を『水』に変え、水中に潜って追う。
アズライトの視界に、遠ざかっていく[浬]の尾ひれが見える。
[浬]を追い、得物を『水面』に替えたアズライトは足を蹴り出そうとしたが、周囲の水域に数多の魚影が浮かびあがる。
ふいに現れた[魚の異形]は、アズライトの進路を妨げるように大挙で旋回し、動きを止めた彼へ向け顎を開いて鋭い歯を見せ、全方位から襲いかかる。
「うぁっ…!!」
多勢を『水面』のひと太刀ではかわしきれず、アズライトは一瞬にして全身の戦闘スーツを裂かれ、口から大きな泡を吐く。
アズライトが体勢を崩したところを、翻って戻った[浬]は機を逃さず猛接近し、槍先を差す。
が、身体を貫かれる直前でアズライトは翻し、喰いつく[魚群]を振り払って水中から逃れる。
空中へ脱し、呼吸を整え足下を注視するが、[浬]が追って出てくる様子はない。
波立つことなく沈黙する水面を見、アズライトは一時思案した後、再び属性を『凍氷』に変える。
そして手のひらをかざして数多の氷塊の刃を生み出し、眼下へ向けて放つ。
刃はとどまることなく無尽蔵に繰り出され、水中へ向けて穿たれていく。
時おり衝撃に弾かれたか[魚]が宙へ跳ね、氷気にあてられて一瞬にして凍りつき、粉々に砕けて水面へ散っていく。
あたり一面に水飛沫があがり続け、次第に氷の膜が張り、もはや水中を通りきらなくなった刃が水面に突き刺さっていく。
一帯が氷の世界へ変貌した頃合いで、水中に潜んでいた[浬]が氷を割って躍り出てくる。
全身に霜を帯び、鼻から凍った息を噴き出しながら、[浬]は空中に佇むアズライトを睨みあげる。
「…まことに小賢しい奴よ…まさに"害悪"。…我の手で確実に葬ってくれる」
尾ひれから頭頂部へと身震いさせ、まとわりつく霜をふり払うと、[浬]は丸太のように太い四肢の筋肉を張り、三叉槍を硬く握りしめる。
憤怒の表情を露出する[侵略者]を静かに見やりながら、アズライトは青白い氷気をまとい防御を固め、再び『氷柱』を呼び出す。
今度は凍てついた氷上にて、真っ向からぶつかり合った。
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