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本編
第8話_二点同時戦闘-8
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一方、陽が転送した楠神社の最寄駅から2駅離れた地点で、数分遅れて別の『転異空間』が造られる。
『転異空間』を造成した蒼矢はやはり単独で転送し、日常から隔絶されたその『狭間』に降り立つ。
目を開けると、下方には青い水面が果てまで広がり、その中に巨大な氷塊がぽつぽつと浮かんで、わずかに揺れ動いていた。
辺りには細かな氷の粒が漂い、空気中を青白く漂う微細な粒子に満たされた視界は少しかすんでいた。
まるで北極か南極のような極寒の光景のなか、蒼矢は見定めたようにある一点だけを見据える。
宙に浮き、視線を固めたまま動かずにいると、やがて正面の水面が泡立つ。
現れた侵略者[浬]は、体躯をずぶずぶと水域から揚げ、脚先まで出すと水面に足裏を落とす。
ひとの形に酷似してはいるものの、ひとならざるほどの巨躯で、青緑の皮膚に覆われ、全身には波紋様を走らせていた。
四肢の指間には薄く透き通った膜が張り、脚の間から水棲哺乳類のような太い尾を生やす風貌は、さながら"海の化身"のようだった。
長くうねる白髪から水滴を滴らせ、顔にはりつくそれをかきあげると、アズライトを蔑むように睨んだ。
「手間取らせおって、『餌』風情が。本来であれば姿さえ目にもしたくないところ、こうして足労してやったのだ。我の時間をいたずらに損なわせるな」
[浬]の顔貌は憎悪に満ち、肌に刺さるほどの敵意を向けてくる。
「当然、わかっているだろうな? この我が『下等生物』ごときにここまで出向いた理由が。深い恩情をもって汝の最期を見届けてやるのだ、感謝するがいい」
『現実世界』での執拗な追跡から、明らかな標的意識を向けられていることを自認するアズライトは、特段表情は変えずに[敵]の口上を受け入れていた。
[浬]を静かに見据えたまま、身体の前に大剣の装具『氷柱』を呼び出す。
遣い手の姿を透かす儚い見目でありながら、壮麗で神々しいその得物を見、[浬]は片眉をあげ鼻を鳴らした。
「…ふん、抗うか。せいぜい足掻くがいい、我に面した時既に、汝の死地は決められている。この場から逃れられると思うな、罪深きものよ」
[浬]はそう言い捨てると、掌に青い三叉槍を造りあげる。
片手に携えたそれを脇に払うと、アズライトへ向けて足裏で水面を蹴る。
同時に、アズライトも『氷柱』を両手で構えて踏みこみ、[浬]へ真正面から当たっていく。
『転異空間』を造成した蒼矢はやはり単独で転送し、日常から隔絶されたその『狭間』に降り立つ。
目を開けると、下方には青い水面が果てまで広がり、その中に巨大な氷塊がぽつぽつと浮かんで、わずかに揺れ動いていた。
辺りには細かな氷の粒が漂い、空気中を青白く漂う微細な粒子に満たされた視界は少しかすんでいた。
まるで北極か南極のような極寒の光景のなか、蒼矢は見定めたようにある一点だけを見据える。
宙に浮き、視線を固めたまま動かずにいると、やがて正面の水面が泡立つ。
現れた侵略者[浬]は、体躯をずぶずぶと水域から揚げ、脚先まで出すと水面に足裏を落とす。
ひとの形に酷似してはいるものの、ひとならざるほどの巨躯で、青緑の皮膚に覆われ、全身には波紋様を走らせていた。
四肢の指間には薄く透き通った膜が張り、脚の間から水棲哺乳類のような太い尾を生やす風貌は、さながら"海の化身"のようだった。
長くうねる白髪から水滴を滴らせ、顔にはりつくそれをかきあげると、アズライトを蔑むように睨んだ。
「手間取らせおって、『餌』風情が。本来であれば姿さえ目にもしたくないところ、こうして足労してやったのだ。我の時間をいたずらに損なわせるな」
[浬]の顔貌は憎悪に満ち、肌に刺さるほどの敵意を向けてくる。
「当然、わかっているだろうな? この我が『下等生物』ごときにここまで出向いた理由が。深い恩情をもって汝の最期を見届けてやるのだ、感謝するがいい」
『現実世界』での執拗な追跡から、明らかな標的意識を向けられていることを自認するアズライトは、特段表情は変えずに[敵]の口上を受け入れていた。
[浬]を静かに見据えたまま、身体の前に大剣の装具『氷柱』を呼び出す。
遣い手の姿を透かす儚い見目でありながら、壮麗で神々しいその得物を見、[浬]は片眉をあげ鼻を鳴らした。
「…ふん、抗うか。せいぜい足掻くがいい、我に面した時既に、汝の死地は決められている。この場から逃れられると思うな、罪深きものよ」
[浬]はそう言い捨てると、掌に青い三叉槍を造りあげる。
片手に携えたそれを脇に払うと、アズライトへ向けて足裏で水面を蹴る。
同時に、アズライトも『氷柱』を両手で構えて踏みこみ、[浬]へ真正面から当たっていく。
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