ガイアセイバーズ9 -萌える若葉を摘む獣-

独楽 悠

文字の大きさ
上 下
73 / 109
本編

第8話_二点同時戦闘-6

しおりを挟む
引き続き[獣の異形]の群れを相手に奮戦するロードナイトだったが、全身に負傷と疲労を重ねて動きに精彩を欠き、少しずつ防戦に追い込まれていく。
無数の爪に戦闘スーツを裂かれ、露出する肌が赤く染まっていく。
腕や脚に喰らいつく牙をふりほどく度に体勢を崩され、『紅蓮』を振るう手の動きが鈍くなっていく。

迎撃をくり出す頻度を減らしていく『敵』の動向を察した[獣の異形]は、攻撃手法を爪牙による斬撃から、体躯をそのまま叩きつける突進へと変化させていく。

「っく…!」

八方からふりかかる体当たりが重く刺さり、損傷が身体の奥深くへ蓄積していく。

「ぐうっ…!!」

紅蓮グレン』の刃をかいくぐった[異形]のひとつがみぞおちを狙って入り、ロードナイトは片膝を落としかける。

…まずい…、俺ひとりじゃもう身がもたねぇ…!!
…せめて、属性攻撃が効きゃあ、突破口が開けるんだけどなぁ…

そう、もはや選択肢として断たれている活路へ思考を巡らせ始めたロードナイトの頭の片隅に、「絶望」の二文字がよぎる。

…あそこで軽はずみに『炎』を使ってなければ…
…あとひとり頭数が揃ってたら…

とり戻せない後悔と、叶わない願望が脳内を少しずつ埋めていき、ロードナイトの意識が薄らいでいく。

攻撃の手を鈍らせ、闘気を失っていく赤のセイバーへ、黒い獣たちが鋭い爪牙と共に押し寄せる。

と、正面から口を開いて襲いかかった[獣の異形]が、なにかに弾かれたように突然仰向けにひるがえり、後方へ倒れ込んだ。
その周囲にいたいくつかも同じように後方へ飛ばされ、赤茶けた砂地に体躯を叩きつけられる。
倒れた[異形]は再び起きあがることがないまま蒸発して消えていき、塵になっていく同胞を見、ロードナイトを囲っていた[異形]たちが攻勢から一転して距離を取り、身構え始める。

「……?」

にわかに目の前で起きた異変と、一寸前に耳そばで響いた風切り音に、遠のきかけていたロードナイトの意識がとり戻される。
状況が飲み込めないままに再び体勢を整えると、頭の後ろから鋭い叫び声が届いた。

「ロード、踏ん張れ!! 手を休めんな!!」

耳に染みついている従弟・・の声色と横柄な檄に、正面へ圧を与えつつもちらりとふり返ったロードナイトは、およそ予想もたてられなかった光景に、我が目を疑った。

「……!!?」

背後にはみずからが造った球体状の灼熱の防御壁があり、その内部には、自分が先ほど投げ飛ばした少年セイバーが、全身を焼け焦がしながらも大股を広げ、堂々たる佇まいで立っていた。
片手には、彼の背丈を優に超える巨大な弓が握られ、その身を包む戦闘スーツと揃いの金色の輝きを放っていた。

ロードナイトはそれがなにかを解りつつも、現状ではあるはずがないそれ・・が視界に映っている事実に絶句し、頭の中が真っ白になる。

……『陽光ヨウコウ』…だと…!?

…いや待て、あれは『サルファー』の後発装具だろ…先代も、覚醒してから発現までに年単位かかったって言ってたはず…
が後発発現したってこと…なのか…!? まだ『セイバー』になって一年も経ってねぇぞ…!?

…ありえるのか、そんなこと…!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...