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本編
第8話_二点同時戦闘-1
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楠瀬邸中庭で[獣の異形]と遭遇し、葉月を遠ざけてひとり対峙していた陽は、頃合いを見て『起動装置』を発動させて『セイバーサルファー』に変身し、同時に造成した『転異空間』への転移を遂げていた。
『転異空間』は薄闇に覆われ、赤茶けて乾燥した大地に遺跡のような石柱が点々と建つ、星月のない夜の砂漠のような光景が広がっていた。
陽は転送と同時に双細剣の装具『閃光』を呼び出し、地に降りたつと得物を両手にひと振りずつ構え、腰を落とす。
サルファーが見据える闇の中に、二対の赤い光がいくつも現れ、こちらを照らす。
ついで、真っ黒な体躯の四脚獣の輪郭が徐々に浮き出て、赤い地を斑に埋め尽くしていく。
無数の[獣の異形]に八方から囲われたサルファーは、数多ふり注がれる眼光を跳ね返すが如く、金色の瞳を見張った。
「…喧嘩の続きだ。来やがれ、ワン公共」
サルファーの構える『閃光』の切っ先がかすかに振れると同時に、[獣の異形]が一斉にざわめき、体躯を振るって地を蹴る。
サルファーは正面へ跳びあがり、みずから黒い群へ突っ込んでいった。
先ほどまで、『現実世界』でも生身の人間でしばらくやり合っていた陽は、すでにこの[獣の異形]たちから痛手を負っていて、露出している顔や腕などにはもちろん、戦闘スーツに隠れた全身にも、噛み傷や切り傷が広がっていた。
『現実世界』では、人間のスペックで重いスコップをぶん回して爪や牙をなんとか退けることしかできなかったが、『転異空間』に入りセイバーの力を手にした今は、人間の出し得る力をはるかに凌駕することに加え、立体的な攻撃も可能になるため、孤立無援でリスクが高いとはいえ、『現実世界』にいるより[異形]とまともに対峙できるようになる。
地の利を得たサルファーは身体中の痛みを一旦忘れ、転送させた[異形]の駆逐に集中する。
跳びかかる[獣]の白く光る爪や牙が届く前に、高速で動くサルファーの駆る細剣が、その黒い体躯を貫く。
闇夜の空間に黄色いセイバーの飛び回る姿だけが浮かびあがって、一帯をうごめく黒い無数の塊を蹴散らしていく。
「位置がわかりやす過ぎんだよ、お前ら! 口閉じて爪しまっとけ!!」
そうひと声煽ると、サルファーは速度を増し、続々と現れる[獣]を湧き出るそばから仕留めていった。
『転異空間』は薄闇に覆われ、赤茶けて乾燥した大地に遺跡のような石柱が点々と建つ、星月のない夜の砂漠のような光景が広がっていた。
陽は転送と同時に双細剣の装具『閃光』を呼び出し、地に降りたつと得物を両手にひと振りずつ構え、腰を落とす。
サルファーが見据える闇の中に、二対の赤い光がいくつも現れ、こちらを照らす。
ついで、真っ黒な体躯の四脚獣の輪郭が徐々に浮き出て、赤い地を斑に埋め尽くしていく。
無数の[獣の異形]に八方から囲われたサルファーは、数多ふり注がれる眼光を跳ね返すが如く、金色の瞳を見張った。
「…喧嘩の続きだ。来やがれ、ワン公共」
サルファーの構える『閃光』の切っ先がかすかに振れると同時に、[獣の異形]が一斉にざわめき、体躯を振るって地を蹴る。
サルファーは正面へ跳びあがり、みずから黒い群へ突っ込んでいった。
先ほどまで、『現実世界』でも生身の人間でしばらくやり合っていた陽は、すでにこの[獣の異形]たちから痛手を負っていて、露出している顔や腕などにはもちろん、戦闘スーツに隠れた全身にも、噛み傷や切り傷が広がっていた。
『現実世界』では、人間のスペックで重いスコップをぶん回して爪や牙をなんとか退けることしかできなかったが、『転異空間』に入りセイバーの力を手にした今は、人間の出し得る力をはるかに凌駕することに加え、立体的な攻撃も可能になるため、孤立無援でリスクが高いとはいえ、『現実世界』にいるより[異形]とまともに対峙できるようになる。
地の利を得たサルファーは身体中の痛みを一旦忘れ、転送させた[異形]の駆逐に集中する。
跳びかかる[獣]の白く光る爪や牙が届く前に、高速で動くサルファーの駆る細剣が、その黒い体躯を貫く。
闇夜の空間に黄色いセイバーの飛び回る姿だけが浮かびあがって、一帯をうごめく黒い無数の塊を蹴散らしていく。
「位置がわかりやす過ぎんだよ、お前ら! 口閉じて爪しまっとけ!!」
そうひと声煽ると、サルファーは速度を増し、続々と現れる[獣]を湧き出るそばから仕留めていった。
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