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本編
第7話_神域を侵す禍(わざわい)-13
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★やや暴力的表現(身体の一部欠損)有
[犲牙]は葉月の頭の手前で立ちどまり、その身体を真上から眺めた。
「ふーん…さすがに甚振り過ぎた。…骸なりかけを持ち帰っても価値はないな」
ぴくりともしない様子を観察し、大仰に息を吐いて遺憾の意を表してから、すぐに表情を戻し口角をあげ、白い牙を露出する。
「まぁいい、既に"利確"はしている。こちら側としては当初の予定どおりだから、これで手打ちとしよう。…あとはあちらの成果次第だね…」
そらを見ながらほくそ笑む[犲牙]だったが、ふいに身体の片側が軽くなる。
「!」
気付くと同時に、かたわらで重量あるものが玉砂利へ落ちる音が鳴る。
[犲牙]がきょとんとした面様で視線をやると、地面には今しがたまで抱えていた少年と、自分の腕が落ちていた。
落ちた少年――苡月に絡む黒い腕はずるずると溶けて蒸発し、霧のように薄まって消えていく。
「…あらー」
痛覚という概念がないのか、[犲牙]は軽く感嘆の声をあげるにとどまり、棒立ちのまま消えゆくみずからの腕を見送る。
そしてはたと我に返り、慌てた風に残る手で苡月を拾いあげようとするが、それもまた目前で、手首から先がぽろりと落ちる。
残った腕が断面から崩れていくさまを眺めながら、[犲牙]は小さく呟いた。
「やらかしてしまったな…長居し過ぎた。やはり"この領域"とここに棲む『人間』は、俺には毒だった」
見る間に上腕まで溶け消え、[犲牙]は両腕をほぼ失う。
「…参った。これでは持って帰れない」
[犲牙]はため息をついてから、前傾していた姿勢を正す。
そして、横たわり目を閉じたままの苡月の横顔を名残惜しそうに見やった。
「心残りだけど、次の機会にしよう。…それまでに、お前の毒素を抜く手立てを考えなければならないね」
そう言い残すと[犲牙]は空気中にその姿を透かし、跡形もなく消えさった。
[犲牙]は葉月の頭の手前で立ちどまり、その身体を真上から眺めた。
「ふーん…さすがに甚振り過ぎた。…骸なりかけを持ち帰っても価値はないな」
ぴくりともしない様子を観察し、大仰に息を吐いて遺憾の意を表してから、すぐに表情を戻し口角をあげ、白い牙を露出する。
「まぁいい、既に"利確"はしている。こちら側としては当初の予定どおりだから、これで手打ちとしよう。…あとはあちらの成果次第だね…」
そらを見ながらほくそ笑む[犲牙]だったが、ふいに身体の片側が軽くなる。
「!」
気付くと同時に、かたわらで重量あるものが玉砂利へ落ちる音が鳴る。
[犲牙]がきょとんとした面様で視線をやると、地面には今しがたまで抱えていた少年と、自分の腕が落ちていた。
落ちた少年――苡月に絡む黒い腕はずるずると溶けて蒸発し、霧のように薄まって消えていく。
「…あらー」
痛覚という概念がないのか、[犲牙]は軽く感嘆の声をあげるにとどまり、棒立ちのまま消えゆくみずからの腕を見送る。
そしてはたと我に返り、慌てた風に残る手で苡月を拾いあげようとするが、それもまた目前で、手首から先がぽろりと落ちる。
残った腕が断面から崩れていくさまを眺めながら、[犲牙]は小さく呟いた。
「やらかしてしまったな…長居し過ぎた。やはり"この領域"とここに棲む『人間』は、俺には毒だった」
見る間に上腕まで溶け消え、[犲牙]は両腕をほぼ失う。
「…参った。これでは持って帰れない」
[犲牙]はため息をついてから、前傾していた姿勢を正す。
そして、横たわり目を閉じたままの苡月の横顔を名残惜しそうに見やった。
「心残りだけど、次の機会にしよう。…それまでに、お前の毒素を抜く手立てを考えなければならないね」
そう言い残すと[犲牙]は空気中にその姿を透かし、跡形もなく消えさった。
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