54 / 109
本編
第7話_神域を侵す禍(わざわい)-2
しおりを挟む
「――蒼兄、これからケーキ受け取りに行くって」
「了解」
陽は、SNSへ届いた蒼矢からの文面を読みあげ、ひと通りの用意を終えた葉月がそれへ応えながら居間に戻る。
「どんなケーキだろなぁ…注文先は影兄セレクトだって話だけど」
「あぁ、そうなんだ。確かに影斗なら、美味しいお店知ってそうだね」
「情報通だからなー。楽しみ! 烈も早めに配達終わりそうだってさ」
「それはよかった。この分だと、二人同時くらいにこっちに着きそうかな」
「ごちそうの準備はできた?」
「うん、おおむね。栞奈が今買い足しに行ってくれてるのを仕込んだら終わりだよ」
誕生パーティーの待機組は一旦休憩に入り、居間でまったりする。
「…いよいよ15かぁ、苡月も」
そう話をふる陽に、葉月は静かに頷いた。
「本当に奇跡みたいな巡り合わせだよね…あの子の誕生日に、こうしてみんなに祝福して貰えるなんて。僕も幸せに思うよ」
「月兄は誕生日もう少し先だな! 月末だったよな?」
「うん。またひとつ歳とっちゃう…祝ってもらえるのは嬉しいけど、本音は結構憂鬱なんだよね…」
そう会話を交わし、ふたりはおかしそうに笑い合う。
直後、双方の耳に、ごく近くでなにかが割れるような音がした。
その硬い破砕音がした方へ、ふたりは同時に首を動かす。
「…なんだ? 中庭の方か?」
そう陽がつぶやく傍らで、葉月が素早く立ちあがり、廊下へと続くふすまを開ける。
みるみる顔色を変え、緊迫の面差しになっていく彼の顔を見、陽も素早く立ちあがってあとを追う。
葉月が思い当たる音の出どころは、陽が言うとおり中庭の、木々の植わる植木鉢や陶器製のプランターだった。
それらは基本野ざらしではあるものの、そうやすやすと割れるものではない。
なにか外的な打撃か圧力が加わらない限り、破損する機会など無いに等しい。
つまり、そういう対象が敷地内に入ったおそれがある、ということである。
「了解」
陽は、SNSへ届いた蒼矢からの文面を読みあげ、ひと通りの用意を終えた葉月がそれへ応えながら居間に戻る。
「どんなケーキだろなぁ…注文先は影兄セレクトだって話だけど」
「あぁ、そうなんだ。確かに影斗なら、美味しいお店知ってそうだね」
「情報通だからなー。楽しみ! 烈も早めに配達終わりそうだってさ」
「それはよかった。この分だと、二人同時くらいにこっちに着きそうかな」
「ごちそうの準備はできた?」
「うん、おおむね。栞奈が今買い足しに行ってくれてるのを仕込んだら終わりだよ」
誕生パーティーの待機組は一旦休憩に入り、居間でまったりする。
「…いよいよ15かぁ、苡月も」
そう話をふる陽に、葉月は静かに頷いた。
「本当に奇跡みたいな巡り合わせだよね…あの子の誕生日に、こうしてみんなに祝福して貰えるなんて。僕も幸せに思うよ」
「月兄は誕生日もう少し先だな! 月末だったよな?」
「うん。またひとつ歳とっちゃう…祝ってもらえるのは嬉しいけど、本音は結構憂鬱なんだよね…」
そう会話を交わし、ふたりはおかしそうに笑い合う。
直後、双方の耳に、ごく近くでなにかが割れるような音がした。
その硬い破砕音がした方へ、ふたりは同時に首を動かす。
「…なんだ? 中庭の方か?」
そう陽がつぶやく傍らで、葉月が素早く立ちあがり、廊下へと続くふすまを開ける。
みるみる顔色を変え、緊迫の面差しになっていく彼の顔を見、陽も素早く立ちあがってあとを追う。
葉月が思い当たる音の出どころは、陽が言うとおり中庭の、木々の植わる植木鉢や陶器製のプランターだった。
それらは基本野ざらしではあるものの、そうやすやすと割れるものではない。
なにか外的な打撃か圧力が加わらない限り、破損する機会など無いに等しい。
つまり、そういう対象が敷地内に入ったおそれがある、ということである。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる