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本編

第6話_それぞれがいるべき場所-8

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栞奈カンナ葉月ハヅキの指示を得、足りなくなった食材の買い足しに、近くのスーパーへ出かけた。
飾りつけを終えたアキラ苡月イツキは、仕上げに居間のテーブルや畳に散らかった折り紙の残骸や糸くず、包装紙の切れ端などの掃除にとりかかる。

拾いあげたものをゴミ袋へ落としていく苡月の動きが、しだいに緩慢になっていき、目がしょぼしょぼし始める。

「おぉい、寝るなよ。もうすぐ本番だぞ?」
「うん…」
「苡月は昨晩も遅くまで起きて準備してたから、寝不足なんだろう」
「! そっか…疲れもたまってるだろうしな」

今にも落ちそうになっている苡月へつっこむ陽だったが、台所から目ざとく葉月の注釈が飛んできて、ため息まじりに納得する。

「苡月、始まるまであと2時間くらいあるから、少し仮眠してきたら?」
「…うん…」
「あとで俺が起こしにいってやるからな!」
「うん…めざましもかけとく」

そうふたりに声がけされた苡月は、目をこすりながら2階の自室へ行く前に、トイレへ向かった。

残された陽は引き続き居間を掃除しつつ、台所の葉月へ話を振る。

月兄つきにぃさぁ、さっきの話・・・・・って、やっぱり栞奈はこの家になるべくいない方がいいからってことなのか?」

陽の問いかけに、葉月は立ちどまって少し目を見張り、居間へとふり返る。

「…聞こえてた?」
「うん、ちょろっと。栞奈には内緒な」

そう断りを入れるものの、真剣な眼差しを返してくる陽を見、葉月は料理の準備を中断させて居間へ入った。

「…そう思うかもしれないけど、違うんだ。さっき僕が栞奈に伝えた理由は、セイバーズ別の事情を抜きにした本心からくるものだよ」
「そっか」

葉月は、苡月が使っていたゴミ袋を手に取って片付けを手伝いつつ、ぽつぽつと語り続ける。

「きっと栞奈は、苡月を羨ましがってるんだろうとは察してる。実家へ移住するって決まった当時も、揃ってごねてたしね…ふたりとも小学校途中で転校になったし、友達と別れることも、知らない土地に行かされることも、嫌だったと思う」
「…月兄と一緒にいられるかそうでないか、ってのもかなりでかいと思うけどな」
「あぁ…うん、それもあるかもね」

陽の冷静かつ的を射たつけ足しに、葉月は少し困り顔になりつつ笑った。
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