ガイアセイバーズ９ -萌える若葉を摘む獣-

本編

第6話_それぞれがいるべき場所-4

再び準備が中断され、栞奈カンナも含めた一同は、ひとまず居間のテーブルへ落ち着いた。
想定外の訪問者・楠瀬クスノセ 栞奈は、出された緑茶をひと口飲んでから頬杖をつき、やや細めた下がり目を対面へ注ぐ。
視線の先に座る苡月イツキは、張りつめた面持ちで、テーブルの木目をじっと見つめていた。


栞奈は葉月ハヅキと苡月のきょうだいで、3人きょうだいの真ん中にあたる。
とはいえ、苡月とは年子で葉月とは11歳年が離れているほか、数年前に長兄・葉月だけを残して下のふたりは母方の実家へ移住したことから、実質ふたりきょうだいの姉という位置づけに落ち着いた。
よって、中間子というよりは長子・長女のような扱いを受けて育てられてきている。

普段は疎遠で、たまに帰ると親代わりのように迎えてくれる葉月へは素直で年相応な"妹"らしさをみせるが、同居する苡月へは、自分と比較して色々と思うところがあり、"姉"として厳しく接することも多かった。

そうして数年間2箇所に別れて暮らしていた楠瀬きょうだいだったが、約2ヶ月前に苡月がひとり実家を出、葉月の家へ移り住む、もとい生家へ居住地を戻したことで、とりまく状況に変化が訪れた。
端的に言えば、苡月が出ていったことで、3きょうだいで栞奈だけがとり残された形になった、ということである。
また苡月の移住は、きょうだいの両親から葉月へは身元引き受け依頼と共に連絡がいったが、栞奈へ知らされたのは移住後で、苡月が実家からいなくなってからようやく事情を聞かされた、という背景さえも含んでいた。


しかしながら、数か月ぶりに姉弟が面と向かったこの日、一連の問題の当事者である苡月に対する栞奈の態度は、比較的落ち着いていた。
教室の輪に入れず保健室通いするなど、学校生活で普段から両親へ気苦労をかけ、はては兄にまでわがままを言って居住地を移した弟への憤りによる叱責、あるいは家庭内事情から蚊帳の外扱いを受けたことによる文句か嫌味を浴びせても許されるだろう立場だったが、今のところ至らない弟の態度を、姉らしくたしなめるような言動を見せるにとどまっている。

ちなみに、今日の誕生日会への栞奈の参加は、彼女と葉月だけが知るところのことで、サプライズというよりは、前もって来ることがわかっていると土壇場で逃げるか隠れるかしかねない、苡月の性格を見越しての配慮とのことだった。