ガイアセイバーズ９ -萌える若葉を摘む獣-

本編

第6話_それぞれがいるべき場所-2

顔を真っ赤にして風船に空気を入れ込みながら、陽アキラは苡月イツキへ今日の参加者の動向を伝えた。

「あとのみんなは、午後から集まる予定だからな。烈兄貴は配達終わり次第、蒼兄あおにぃは注文してるケーキ受け取ってから来るって」
「うん、わかった」
「影兄かげにぃだけは、顔見せに来るくらいになっちまうって話だ。悪いな！」
「ううん。…みなさん忙しいはずなのに、来てくれるだけでも嬉しいよ」

主賓を気遣う陽だったが、苡月はそう頬を染めながら返し、幸せそうな笑顔を浮かべた。


全ての飾り準備が終わったところでちょうど昼頃になり、葉月ハヅキはふたりの作業を一旦中断させ、昼食の炒飯とスープをテーブルに並べる。

「簡単になっちゃってごめんね。その分夜は豪華にするから、期待しててね」
「充分！　うまそー」

葉月も交ざって昼食を手早く食べ、腹も気力も回復した陽と苡月は作業に戻り、めいめいに居間へ飾りつけを施し始める。

陽が苡月を肩車して、桟へ飾りを貼りつけていると、今日参加予定の誰が来る時分でもないのに呼び鈴が鳴った。

「あぁん？　誰だぁ？」
「お客さんかな」
「！　…ああ」

玄関の方を見、肩車をしたまま二人が首を傾げるなか、葉月はなにかに察しがついたのか、台所から顔を出す。
そして、苡月を降ろし、揃って玄関へ向かおうとしかけたところへ声をかけた。

「陽、出てきてくれる？」
「！　？　おう」

葉月は苡月を手招きして止めて、陽だけを玄関へ向かわせる。

「？」

背後から肩に手を置き、にこにこ顔で陽の背中を見送る葉月を、苡月はぽかんと見上げていた。



「誰だ、誰だー…っと」

玄関へ到着した陽は、擦りガラス越しに見える尋ね人のシルエットからも想像がつかず、首をひねりながら引き戸を開ける。
そして現れた人物に、目を剥いた。

「…まぁたあんたが出迎えなの？」
「……！？　栞奈カンナあぁ！？」

尋ねてきた少女・栞奈は、驚き過ぎて叫んだものの二の句が継げなくなる陽へ眉を寄せる。

「いつ会っても同じリアクションしかしないのね、まったく」

そしてうんざり顔を浮かべながら、そう呆れ声を漏らした。