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本編
第5話_買い物帰り-1
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次の日の土曜日、楠神社では午前中から昼過ぎにかけてまで、比較的大規模な神事がとり行われていた。
予定されていた全ての行程を無事終え、参列者たちをお見送りしたあと遅い昼食を軽くとり、苡月は長丁場の神事を仕切ってくたくたな兄・葉月を休ませて、ひとりで買い物へ出かけた。
翌日曜日は、葉月と自分の誕生会が予定されている。
それにむけての買い出しでもあるので、苡月は兄から手渡された食材リストに自分なりの飾りつけ材料も書き加え、買い物メモへ目を落としつつ、うきうきでショッピングセンターへと向かった。
「――…買い過ぎちゃった」
そして、エコバッグとそれに入りきらなかったビニール袋と、両手にひとつずつ下げて店を出る。
部屋の装飾品にと買ったものが想定以上にかさばり、荷物は小柄な彼の筋肉許容を大きく超えてしまい、いつものスーパーより遠くのショッピングセンターを選んでしまったことを、苡月は遅ればせながら後悔した。
地面を擦ってしまいそうな袋へ気を遣いつつ、よろよろと神社への帰路をたどる。
途中小さな公園にさしかかり、車両進入止めの石ブロックの上に荷物を乗せ、一旦休憩することにする。
ひと息つき、赤くなった手のひらをこすっていると、足もとにふと黒いかたまりがまとわりついた。
「! わぁ」
毛玉のかたまりは苡月の片足の周りをくるくる回り始め、驚いた苡月は飛びのきそうになるが、誤って踏んでしまうかもとなんとかとどまり、両足をぎこちなく開いて固まったまま、足もとを見つめた。
「――こら」
すると頭の斜め上から声がかかり、黒い毛玉から伸びる紐をたどって視線を動かしていくと、背の高い男へといき着いた。
紐の先は男の手に握られ、軽く引かれると毛玉は器用に逆方向へ回り、苡月から少し離れてちょこんとお座りした。
黒い毛玉は小さな犬で、豆柴のような外見だったが尾は丸まっておらず、通常の黒柴のように薄いポイントカラーもない全身真っ黒な毛並みから、おそらく別種かミックスと思われた。
足が自由になり、苡月がほっと胸をなでおろしたところで、男が声をかけてきた。
「ごめんね、驚かせちゃって」
「いえ…大丈夫です」
そう返し、苡月は黒い子犬の前にしゃがむ。
おそるおそる手を伸ばすと、子犬は歩き寄って指先をふんふんとかぎ、口元をこすりつける。
少し動揺した苡月が手を引っ込めると、彼のひざに両前足をかけて顔を寄せてきた。
真っ黒のつぶらな瞳から興味深そうに見つめられ、苡月の胸がきゅんとなる。
「…可愛い」
「ありがとう。実は、今日が初めての散歩なんだ」
「! そうなんですか」
「ちょっと神経質なんだけど、きみには全然警戒しないな。…きみにとても興味があるみたいだ」
飼い主らしき男はそう感心したように言い、笑みを浮かべた。
予定されていた全ての行程を無事終え、参列者たちをお見送りしたあと遅い昼食を軽くとり、苡月は長丁場の神事を仕切ってくたくたな兄・葉月を休ませて、ひとりで買い物へ出かけた。
翌日曜日は、葉月と自分の誕生会が予定されている。
それにむけての買い出しでもあるので、苡月は兄から手渡された食材リストに自分なりの飾りつけ材料も書き加え、買い物メモへ目を落としつつ、うきうきでショッピングセンターへと向かった。
「――…買い過ぎちゃった」
そして、エコバッグとそれに入りきらなかったビニール袋と、両手にひとつずつ下げて店を出る。
部屋の装飾品にと買ったものが想定以上にかさばり、荷物は小柄な彼の筋肉許容を大きく超えてしまい、いつものスーパーより遠くのショッピングセンターを選んでしまったことを、苡月は遅ればせながら後悔した。
地面を擦ってしまいそうな袋へ気を遣いつつ、よろよろと神社への帰路をたどる。
途中小さな公園にさしかかり、車両進入止めの石ブロックの上に荷物を乗せ、一旦休憩することにする。
ひと息つき、赤くなった手のひらをこすっていると、足もとにふと黒いかたまりがまとわりついた。
「! わぁ」
毛玉のかたまりは苡月の片足の周りをくるくる回り始め、驚いた苡月は飛びのきそうになるが、誤って踏んでしまうかもとなんとかとどまり、両足をぎこちなく開いて固まったまま、足もとを見つめた。
「――こら」
すると頭の斜め上から声がかかり、黒い毛玉から伸びる紐をたどって視線を動かしていくと、背の高い男へといき着いた。
紐の先は男の手に握られ、軽く引かれると毛玉は器用に逆方向へ回り、苡月から少し離れてちょこんとお座りした。
黒い毛玉は小さな犬で、豆柴のような外見だったが尾は丸まっておらず、通常の黒柴のように薄いポイントカラーもない全身真っ黒な毛並みから、おそらく別種かミックスと思われた。
足が自由になり、苡月がほっと胸をなでおろしたところで、男が声をかけてきた。
「ごめんね、驚かせちゃって」
「いえ…大丈夫です」
そう返し、苡月は黒い子犬の前にしゃがむ。
おそるおそる手を伸ばすと、子犬は歩き寄って指先をふんふんとかぎ、口元をこすりつける。
少し動揺した苡月が手を引っ込めると、彼のひざに両前足をかけて顔を寄せてきた。
真っ黒のつぶらな瞳から興味深そうに見つめられ、苡月の胸がきゅんとなる。
「…可愛い」
「ありがとう。実は、今日が初めての散歩なんだ」
「! そうなんですか」
「ちょっと神経質なんだけど、きみには全然警戒しないな。…きみにとても興味があるみたいだ」
飼い主らしき男はそう感心したように言い、笑みを浮かべた。
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