ガイアセイバーズ9 -萌える若葉を摘む獣-

独楽 悠

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本編

第4話_M大寮の一室で-7

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影斗エイトの進路の件が共有できたところで、ふたりの話は主題メインの『セイバーズ』関連、ひいては楠瀬クスノセ家関連の議題へ移る。

先週末、旅行先にいた蒼矢ソウヤレツへ一報を入れた影斗は、葉月ハヅキがセイバーを退く瞬間に、目の前で立ち会っていた。

「…あいつもなー。もったいぶってねぇで早く知らせろってな。引退する直前に聞かされる方の身にもなれっての。ひとりでしみじみ浸りながら言い逃げしやがって」

影斗は舌打ちしながら愚痴を言い、そのまま蒼矢へ鋭い視線をやる。

「葉月の次が苡月イツキだってことまで把握してるんだよな?」
「! はい。烈とアキラへも共有できてます」

蒼矢は少し姿勢を正して応じる。

「他に俺らん中で考えられる候補の宛もいねぇし、葉月の言うとおり、"確定"だろうな」
「そう考えて動いていいと思います」

そう同意したうえで、蒼矢は自分が考える、現状くすのき神社を『セイバーズ』のアジトにしてしまっている事実の危険性を、影斗へ進言した。
彼の中でも思うところがあったのか、影斗も聞きながら頷く。

「苡月が同居し始めた時点で、わりと動きが取りづらい部分は出てただろ。"一般人は巻き込まない"、それが『俺ら』の大前提だ。ものわかりがいい奴にとって替わろうが、同じことだ…お互い距離感バグらねぇよう、気ぃ遣ってくしかねぇだろうな」
「苡月が覚醒するまでは、全員距離を置いた方がいいでしょうね」
「んだな。覚醒後しばらくは苡月単独で狙われることも多くなるだろうから、葉月の巻き込まれ事故防止に、誰かがすぐに向かえるような体制を整えておくべきかもな…」
「はい、そのつもりです。俺と烈で対応します」
「悪いな、負担かけちまって」
「いえ、ふたりでもそう示し合せましたので」

そう了承すると、蒼矢は少し顔色を変え、トーンを落として続ける。

「…と、決まったところで、言いにくい話になるんですが…」
「あん?」
「明後日の日曜日、葉月さんと苡月の誕生会をやることが決まったんです」
「! おぉ…」
「烈と陽も含めて、みんな参加する予定なんですが…影斗先輩はどうしますか?」
「……仕方ねぇ、一瞬だけ出るか」

決まった方向性と逆行するイベントへの出欠を、おずおずと確認する蒼矢へ、影斗はやや迷った末に出席の意思を伝えた。

「その席で、葉月さんへも今の件を伝えようと思います」
「わかった、任せるわ」
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