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本編
第3話_新たに選ばれし者-6
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蒼矢の進言を聞き、陽が沈鬱した面持ちでうかがう。
「…もう神社には、みんなで集まれねぇってこと?」
「…そこまでは言わないけど、いつも集まるところして使わせてもらうのは、弊害が多いと思う」
重い口調でそう返され、陽はなにも続けられずに頭を落とし、再びベンチへ崩れるように座った。
すっかり消沈する陽の肩に手を置きながら、蒼矢は烈へ見上げた。
「…近い内に、葉月さんともう一度よく話し合おう。お互いに調整が必要だ」
「そうだな。苡月が覚醒する前にある程度固めといた方がいいかもしれねぇ。影斗も交えて」
「ああ」
ふたりで頷き合うと、烈は大きく息をついてから表情を変え、背中のボディバッグを腹側に回す。
「陽、元気出せ! お前用に箱根土産持ってきたから」
少し顔をあげた陽へ、烈はボディバッグから取り出した土産物屋のビニール袋を差し出す。
「…お土産…なに?」
「まぁ開けてみろって。セレクトは俺、会計は蒼矢だぜ」
「…逆が良かった」
「四の五の言わずに受け取れっ」
鼻先に突きつけられた袋を受けとると、陽は促されるままに中をのぞき込む。
「…レトルトカレー?」
「おうよ、大涌谷名物・特製大涌谷カレーだ! お前、カレー好きだろ?」
「いや、カレー好きなのは陽じゃなくて烈だよな」
横から蒼矢のツッコミが入るなか、陽は袋の中のパッケージを手に取った。
「…げー、箱ボコボコじゃん!」
「うっ! そそれは、輸送時にアクシデントが…」
「こんなくたびれたやつ、やだー! 食欲削がれる!!」
「箱がくたびれようが、味に影響ねぇだろ! 黙って食っとけ、実際美味かったんだぞ!」
「うぅ~、一瞬SNSにUPできるかなーと思ったのにっ…これじゃ単に食って終わりじゃんかー!」
ボリュームは戻りつつも悲痛な声をあげる陽を見、蒼矢は眉を寄せながらため息をつく。
「…だから俺が持って帰るって言ったじゃないか」
「! いやだって、俺なら配達ついでにちゃちゃっと渡せると思って…」
「俺も大学帰りに寄れる。…なんとなく心配してたけど、ここまで残念なことになるとは思わなかった」
「仕方ねぇだろ、他の荷物の間に入れるしかなかったし、急いでたしっ…」
「わかるけど…これはないだろ。一応俺からでもあるんだから、せめてひとに渡すものは大切に扱うようにしろ」
「う…わかったよ。ごめん」
ひとり悲嘆に暮れていた陽だったが、蒼矢と烈の言い合いにいつしか釘づけにされ、ぼんやりとふたりを眺めていた。
やがて、ややご立腹の蒼矢にたしなめられた烈が、陽へ向けてすまなそうに頭を下げた。
「…悪かったな、陽。また土産買ってくることがあったら、今度は安全輸送心掛けるよ」
「さっき烈が言った通り、そのレトルト提供してるレストランで食べたカレーは美味しかったから。中身だけでも楽しんで」
そう声がけしてくるふたりを、陽は黙ったままじとっと見つめていた。
反応を返してこない彼に、烈と蒼矢は少し眉をひそめる。
「…? 陽? どした?」
「…いんや、なんかあついなーって思って」
「は?」
「…なんでもねー。お土産あんがと」
首を傾げるふたりをおき、陽は立ちあがり、悪戯気ににやりと笑った。
「…もう神社には、みんなで集まれねぇってこと?」
「…そこまでは言わないけど、いつも集まるところして使わせてもらうのは、弊害が多いと思う」
重い口調でそう返され、陽はなにも続けられずに頭を落とし、再びベンチへ崩れるように座った。
すっかり消沈する陽の肩に手を置きながら、蒼矢は烈へ見上げた。
「…近い内に、葉月さんともう一度よく話し合おう。お互いに調整が必要だ」
「そうだな。苡月が覚醒する前にある程度固めといた方がいいかもしれねぇ。影斗も交えて」
「ああ」
ふたりで頷き合うと、烈は大きく息をついてから表情を変え、背中のボディバッグを腹側に回す。
「陽、元気出せ! お前用に箱根土産持ってきたから」
少し顔をあげた陽へ、烈はボディバッグから取り出した土産物屋のビニール袋を差し出す。
「…お土産…なに?」
「まぁ開けてみろって。セレクトは俺、会計は蒼矢だぜ」
「…逆が良かった」
「四の五の言わずに受け取れっ」
鼻先に突きつけられた袋を受けとると、陽は促されるままに中をのぞき込む。
「…レトルトカレー?」
「おうよ、大涌谷名物・特製大涌谷カレーだ! お前、カレー好きだろ?」
「いや、カレー好きなのは陽じゃなくて烈だよな」
横から蒼矢のツッコミが入るなか、陽は袋の中のパッケージを手に取った。
「…げー、箱ボコボコじゃん!」
「うっ! そそれは、輸送時にアクシデントが…」
「こんなくたびれたやつ、やだー! 食欲削がれる!!」
「箱がくたびれようが、味に影響ねぇだろ! 黙って食っとけ、実際美味かったんだぞ!」
「うぅ~、一瞬SNSにUPできるかなーと思ったのにっ…これじゃ単に食って終わりじゃんかー!」
ボリュームは戻りつつも悲痛な声をあげる陽を見、蒼矢は眉を寄せながらため息をつく。
「…だから俺が持って帰るって言ったじゃないか」
「! いやだって、俺なら配達ついでにちゃちゃっと渡せると思って…」
「俺も大学帰りに寄れる。…なんとなく心配してたけど、ここまで残念なことになるとは思わなかった」
「仕方ねぇだろ、他の荷物の間に入れるしかなかったし、急いでたしっ…」
「わかるけど…これはないだろ。一応俺からでもあるんだから、せめてひとに渡すものは大切に扱うようにしろ」
「う…わかったよ。ごめん」
ひとり悲嘆に暮れていた陽だったが、蒼矢と烈の言い合いにいつしか釘づけにされ、ぼんやりとふたりを眺めていた。
やがて、ややご立腹の蒼矢にたしなめられた烈が、陽へ向けてすまなそうに頭を下げた。
「…悪かったな、陽。また土産買ってくることがあったら、今度は安全輸送心掛けるよ」
「さっき烈が言った通り、そのレトルト提供してるレストランで食べたカレーは美味しかったから。中身だけでも楽しんで」
そう声がけしてくるふたりを、陽は黙ったままじとっと見つめていた。
反応を返してこない彼に、烈と蒼矢は少し眉をひそめる。
「…? 陽? どした?」
「…いんや、なんかあついなーって思って」
「は?」
「…なんでもねー。お土産あんがと」
首を傾げるふたりをおき、陽は立ちあがり、悪戯気ににやりと笑った。
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