26 / 109
本編
第3話_新たに選ばれし者-5
しおりを挟む
蒼矢の言う"リスク"とは、一般人とセイバーの両方を指していた。
『セイバー』が[異界のもの]と遭遇し、『起動装置』で『転異空間』を造るとなったときに近くに一般人がいた場合、巻き込んで一緒に転送してしまうおそれがある。
『転異空間』は、人間としての能力を最大限に高められ、体力的・防御力的に強靭な肉体を得られるセイバーにとっては有益な戦闘フィールドだが、なんの能力補正もされていない生身の人間が転送された場合の危険性ははかり知れないし、そもそも無事に『現実世界』へ戻れる保証もない。
近々の例だと、[侵略者]に標的にされた烈が、偶然が重なって変身しないまま『転異空間』へ転送されたことがあったが、空間内で変身したため、帰還するときは『セイバー』だった。
[異界]にまでさらわれた経験を持つ蒼矢も、[異界]で変身し、『セイバー』で帰還している。
帰還時に、セイバー以外の人間を帯同した事例は経てきておらず、安全性への不確定要素ばかりだ。
よってセイバーたちは、なるべくひと気を避けて[異界のもの]へ接触する、また万が一ひとの密集地で接触した場合は、みずから[異界のもの]をさそい出し、セイバーだけになる機会を狙って『転異空間』を造るよう心がけている。
多くのセイバーが、自らの『もうひとつの顔』を肉親にさえ明かしていない理由は、おしなべてここに集約されている。
そしてそれは同時に、セイバーたち自身の危険を減らすことにもつながる。
そもそも、セイバーの肉体強化は変身後、つまり『転異空間』へ転送されてから施されるもので、『現実世界』で[異界のもの]と対峙することは想定されていない。
セイバーとしても、『現実世界』で一般人を伴った状態で[異界のもの]と接触するとなると、彼らを庇いながら立ち回らざるを得なくなるため、相当なリスクを抱えることになる。
『現実世界』でのリスクをなるべく抑える。
素性を秘匿して過ごし、ことが起きたら衆目につかないよう動き、ひと知れず[異界のもの]を討伐する。
基本的に『セイバーズ』にはそのような動きが求められるのだった。
「――でも、葉月さんは立場的に難しい。…苡月がセイバーになれば、自分のリスクを承知したうえで傍に居続けることになる」
「…そうだな…」
「葉月さんは今まで通りサポートするって言ってくれたけど、俺たちが変わらずに楠神社に集まってたら、葉月さんの身を危険に晒し続けることになってしまう」
「確かに…葉月さんは自分ちで仕事してるわけだから、俺らが転送する度に遠くへ避難してもらうってわけにもいかねぇしな…」
「…葉月さんたちの家に、今までと変わらず入りびたりになるような状況は、なるべく避けるべきだ」
『セイバー』が[異界のもの]と遭遇し、『起動装置』で『転異空間』を造るとなったときに近くに一般人がいた場合、巻き込んで一緒に転送してしまうおそれがある。
『転異空間』は、人間としての能力を最大限に高められ、体力的・防御力的に強靭な肉体を得られるセイバーにとっては有益な戦闘フィールドだが、なんの能力補正もされていない生身の人間が転送された場合の危険性ははかり知れないし、そもそも無事に『現実世界』へ戻れる保証もない。
近々の例だと、[侵略者]に標的にされた烈が、偶然が重なって変身しないまま『転異空間』へ転送されたことがあったが、空間内で変身したため、帰還するときは『セイバー』だった。
[異界]にまでさらわれた経験を持つ蒼矢も、[異界]で変身し、『セイバー』で帰還している。
帰還時に、セイバー以外の人間を帯同した事例は経てきておらず、安全性への不確定要素ばかりだ。
よってセイバーたちは、なるべくひと気を避けて[異界のもの]へ接触する、また万が一ひとの密集地で接触した場合は、みずから[異界のもの]をさそい出し、セイバーだけになる機会を狙って『転異空間』を造るよう心がけている。
多くのセイバーが、自らの『もうひとつの顔』を肉親にさえ明かしていない理由は、おしなべてここに集約されている。
そしてそれは同時に、セイバーたち自身の危険を減らすことにもつながる。
そもそも、セイバーの肉体強化は変身後、つまり『転異空間』へ転送されてから施されるもので、『現実世界』で[異界のもの]と対峙することは想定されていない。
セイバーとしても、『現実世界』で一般人を伴った状態で[異界のもの]と接触するとなると、彼らを庇いながら立ち回らざるを得なくなるため、相当なリスクを抱えることになる。
『現実世界』でのリスクをなるべく抑える。
素性を秘匿して過ごし、ことが起きたら衆目につかないよう動き、ひと知れず[異界のもの]を討伐する。
基本的に『セイバーズ』にはそのような動きが求められるのだった。
「――でも、葉月さんは立場的に難しい。…苡月がセイバーになれば、自分のリスクを承知したうえで傍に居続けることになる」
「…そうだな…」
「葉月さんは今まで通りサポートするって言ってくれたけど、俺たちが変わらずに楠神社に集まってたら、葉月さんの身を危険に晒し続けることになってしまう」
「確かに…葉月さんは自分ちで仕事してるわけだから、俺らが転送する度に遠くへ避難してもらうってわけにもいかねぇしな…」
「…葉月さんたちの家に、今までと変わらず入りびたりになるような状況は、なるべく避けるべきだ」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる