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本編
第3話_新たに選ばれし者-4
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陽は、気持ちを入れ替えるように長く息をついた。
「…まぁでも正直、ちょっと安心しちまったかもってところがあるんだよね」
「え?」
「なんつーか、場面は変わっちまったけど、役者は変わってないっていうか。月兄はセイバー辞めちゃったけど、次はそこにそっくりそのまま苡月が入るんだから」
「…!」
蒼矢が少し目を見張る前で、陽は声色に明るさを取り戻していく。
「今まで通りみんなで一緒にいられるって状況は、これからも変わりねぇってことだもんな。…うん、そう考えれば、なんとかやってけそうな気がしてきた」
「陽…」
「別によそから誰かが入ってきたとしても、やることは同じなんだろうけど、俺やっぱり今の空気感好きだからさ。超勝手だけど、引き続きたまり場が確保できたって意味では嬉しいかな!」
「…まて。お前、ゲームやりたいだけだろ。手料理ゴチになって寝泊まりしたいだけだろ」
蒼矢に代わり相槌を打っていた烈は、ぽろりと零れた言葉から真意を察し、眉を寄せる。
従兄からの鋭いツッコミに、陽は一瞬固まってから盛大に慌てはじめた。
「!! ちち、ちげーよ!! それもある…けど、それはそれ、これはこれだっ!」
「無理すんな。顔に本音出過ぎだし、言い訳フワフワ過ぎなんだって、お前」
「月兄が辞めちまって寂しいのも、苡月が候補にあがってちょっとモヤってするのも、本当なんだって! 信じて!!」
立ちあがり、陽が必死の形相でしらける烈へ言い訳をまくしたてるなか、蒼矢はひとり座ったまま、なにかを思案するように視線を手元へと落していた。
拳を振りあげて訴える陽をあしらいつつ、なにやら沈みこむ蒼矢に気付いた烈は声をかける。
「蒼矢? どうした?」
「いや…このまま変わらず過ごしていいんだろうかって思って」
「? どういうこと?」
ふいに疑問を呈した蒼矢へ、ふたりは首を傾げる。
「俺が知る限りでは、退いた元セイバーが、現役セイバーと引き続き密に関わるということはなかった。暗黙の了解で、お互いに距離を置くようになる。…それは、"一般人"になった彼らがセイバーに近しいままだと、リスクを伴うからだ」
「…!」
「元セイバーは、そのリスクを解ってる…だからこそ、退いたら離れていく。自分の立場に置き換えたら、俺もきっとそうすると思う」
自分の言葉を聞いて思い至った彼らの表情を認めつつ、蒼矢はそう静かに持論を語った。
「…まぁでも正直、ちょっと安心しちまったかもってところがあるんだよね」
「え?」
「なんつーか、場面は変わっちまったけど、役者は変わってないっていうか。月兄はセイバー辞めちゃったけど、次はそこにそっくりそのまま苡月が入るんだから」
「…!」
蒼矢が少し目を見張る前で、陽は声色に明るさを取り戻していく。
「今まで通りみんなで一緒にいられるって状況は、これからも変わりねぇってことだもんな。…うん、そう考えれば、なんとかやってけそうな気がしてきた」
「陽…」
「別によそから誰かが入ってきたとしても、やることは同じなんだろうけど、俺やっぱり今の空気感好きだからさ。超勝手だけど、引き続きたまり場が確保できたって意味では嬉しいかな!」
「…まて。お前、ゲームやりたいだけだろ。手料理ゴチになって寝泊まりしたいだけだろ」
蒼矢に代わり相槌を打っていた烈は、ぽろりと零れた言葉から真意を察し、眉を寄せる。
従兄からの鋭いツッコミに、陽は一瞬固まってから盛大に慌てはじめた。
「!! ちち、ちげーよ!! それもある…けど、それはそれ、これはこれだっ!」
「無理すんな。顔に本音出過ぎだし、言い訳フワフワ過ぎなんだって、お前」
「月兄が辞めちまって寂しいのも、苡月が候補にあがってちょっとモヤってするのも、本当なんだって! 信じて!!」
立ちあがり、陽が必死の形相でしらける烈へ言い訳をまくしたてるなか、蒼矢はひとり座ったまま、なにかを思案するように視線を手元へと落していた。
拳を振りあげて訴える陽をあしらいつつ、なにやら沈みこむ蒼矢に気付いた烈は声をかける。
「蒼矢? どうした?」
「いや…このまま変わらず過ごしていいんだろうかって思って」
「? どういうこと?」
ふいに疑問を呈した蒼矢へ、ふたりは首を傾げる。
「俺が知る限りでは、退いた元セイバーが、現役セイバーと引き続き密に関わるということはなかった。暗黙の了解で、お互いに距離を置くようになる。…それは、"一般人"になった彼らがセイバーに近しいままだと、リスクを伴うからだ」
「…!」
「元セイバーは、そのリスクを解ってる…だからこそ、退いたら離れていく。自分の立場に置き換えたら、俺もきっとそうすると思う」
自分の言葉を聞いて思い至った彼らの表情を認めつつ、蒼矢はそう静かに持論を語った。
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