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本編
第3話_新たに選ばれし者-1
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T大学からバイクで30分ほどかけ、烈と蒼矢は陽の住むマンションへたどり着いた。
烈と陽は、母親同士が姉妹の従兄弟関係であり、また要家が酒屋のお得意様でもあるため、烈にとっては普段から慣れ親しんだ配達ルートのひとつだった。
蒼矢も、陽から定期考査などへの対策講座を毎度請われるため、烈ほどではないがたびたび家にお邪魔している。
今日のように、ふたり連れだって訪れる機会は少ないものの、双方勝手知ったる住所だった。
ふたりはインターホンは鳴らさず、チャットツールで彼を呼び出してエントランスで待機する。
ほどなくしてエレベーターで降りてきた陽が姿を現し、烈は軽く手をあげて外へと視線で誘導した。
話の議題が『セイバーズ』関係であり、自身もセイバーのひとりである陽はやはり両親へは明かしておらず、個室ドアはあるとはいえ、母親がいる状況でひとつづきの家の中で話題を出すことは憚られるため、であった。
烈と陽はもちろん陽が産まれて間もない頃から、蒼矢と陽も、烈を通じて幼少期から顔見知りで、相関が密なセイバーズの中でもとりわけ交友年数が長い"幼馴染グループ"ともいえる彼らだったが、こうして葉月宅以外の場で3人だけで会うというシチュエーションは、意外と珍しいことだった。
3人は暗がりのなか、マンション敷地内にある公園へ向かった。
もう遅い時間とあって遊ぶ子供たちの姿は消え、ぽつぽつと据えられた公園灯の明かりだけが、静かな園内へ淡い光を落としていた。
陽は、唐突な呼び出し指示にすんなり了解し、SNSへの反応もよかったが、面持ちは感情の表出が乏しいように見られ、ここへ着く間もいつものように無関係な世間話をしゃべりだすことはなく、口を閉ざしたままだった。
脇のベンチ付近に落ち着いて陽を座らせ、烈から話を切り出す。
「――平気か?」
数分の沈黙を破る第一声にしてはまったく脈略のない、言葉裏を読ませるにもほどがある問いかけだったが、陽は少しうつむいた姿勢のまま、こくりと頷いた。
「…うん」
傍から聞いていれば、果たしてなにに対する了解なのかわかりかねる頷きであったものの、3人の間だけでは"葉月のセイバー引退"という共通項で、はっきりと一致していた。
「丁度買い物から帰ってくる時だったんだけど…瞬間伝わってきたんだ、月兄がいなくなっちまったって。急いで戻って、顔を見た時も…なんか改めて初対面くらいの頃からやり直されたみたいに、距離遠く感じた」
陽のその表現に、彼を見守るふたりも、二、三度軽く頷いた。
彼ら自身も、先輩セイバーたちが役目を降りていった時に、似た感覚を抱いた過去を経てきていたからだった。
現状のセイバーズで一番後にセイバーになった陽にとっては初めての経験で、歴は浅いもののセイバーに加わる前から葉月とは若干の交流があり、プライベートな部分でも順調に密な関係を築いてきていたこともあって、衝撃はより大きいだろうと察せられた。
烈と陽は、母親同士が姉妹の従兄弟関係であり、また要家が酒屋のお得意様でもあるため、烈にとっては普段から慣れ親しんだ配達ルートのひとつだった。
蒼矢も、陽から定期考査などへの対策講座を毎度請われるため、烈ほどではないがたびたび家にお邪魔している。
今日のように、ふたり連れだって訪れる機会は少ないものの、双方勝手知ったる住所だった。
ふたりはインターホンは鳴らさず、チャットツールで彼を呼び出してエントランスで待機する。
ほどなくしてエレベーターで降りてきた陽が姿を現し、烈は軽く手をあげて外へと視線で誘導した。
話の議題が『セイバーズ』関係であり、自身もセイバーのひとりである陽はやはり両親へは明かしておらず、個室ドアはあるとはいえ、母親がいる状況でひとつづきの家の中で話題を出すことは憚られるため、であった。
烈と陽はもちろん陽が産まれて間もない頃から、蒼矢と陽も、烈を通じて幼少期から顔見知りで、相関が密なセイバーズの中でもとりわけ交友年数が長い"幼馴染グループ"ともいえる彼らだったが、こうして葉月宅以外の場で3人だけで会うというシチュエーションは、意外と珍しいことだった。
3人は暗がりのなか、マンション敷地内にある公園へ向かった。
もう遅い時間とあって遊ぶ子供たちの姿は消え、ぽつぽつと据えられた公園灯の明かりだけが、静かな園内へ淡い光を落としていた。
陽は、唐突な呼び出し指示にすんなり了解し、SNSへの反応もよかったが、面持ちは感情の表出が乏しいように見られ、ここへ着く間もいつものように無関係な世間話をしゃべりだすことはなく、口を閉ざしたままだった。
脇のベンチ付近に落ち着いて陽を座らせ、烈から話を切り出す。
「――平気か?」
数分の沈黙を破る第一声にしてはまったく脈略のない、言葉裏を読ませるにもほどがある問いかけだったが、陽は少しうつむいた姿勢のまま、こくりと頷いた。
「…うん」
傍から聞いていれば、果たしてなにに対する了解なのかわかりかねる頷きであったものの、3人の間だけでは"葉月のセイバー引退"という共通項で、はっきりと一致していた。
「丁度買い物から帰ってくる時だったんだけど…瞬間伝わってきたんだ、月兄がいなくなっちまったって。急いで戻って、顔を見た時も…なんか改めて初対面くらいの頃からやり直されたみたいに、距離遠く感じた」
陽のその表現に、彼を見守るふたりも、二、三度軽く頷いた。
彼ら自身も、先輩セイバーたちが役目を降りていった時に、似た感覚を抱いた過去を経てきていたからだった。
現状のセイバーズで一番後にセイバーになった陽にとっては初めての経験で、歴は浅いもののセイバーに加わる前から葉月とは若干の交流があり、プライベートな部分でも順調に密な関係を築いてきていたこともあって、衝撃はより大きいだろうと察せられた。
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