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本編
第1話_功労者の格言_10
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すっかり夜が更け、真っ暗ななか楠瀬家をあとにした烈と蒼矢は、バイクで夜道を駆ける。
髙城邸へたどり着くと、タンデムから降りた蒼矢はヘルメットを脱ぎ、烈へふり向いた。
「…陽が心配だ。葉月さんは大丈夫なように言ってたけど…」
そう小さく漏れる声に、烈はバイザーを上げる。
「…そうだな。あいつだいぶ葉月さんに懐いてたし、まだ歴も浅いからなぁ…」
「ちゃんと全部割り切って受けとめられてるか…一度直接聞いてみた方がいいと思うんだ」
「確かに、ことが起きてからこっちになんの音沙汰もないってのは、大人し過ぎて奴らしくねぇしな。…明日の夕方、様子見に家行ってくるよ」
「俺も行く。大学の講義終えてからでもいいか?」
「おう、悪いな。終わる頃に連絡くれ、迎えに行くから」
そう、翌日ふたりで陽の実家である要家宅へ向かう約束をしたあと、一時の沈黙を置いてから、烈がヘルメットを脱ぐ。
「…蒼矢、あのさ。…聞きたいことがあるんだけど」
烈の挙動を不思議そうに眺める蒼矢を、烈は少し言い淀みながら見つめた。
「今朝…電話で話してたろ」
「…!」
「あれ…相手誰だったんだ、とか聞いてもいいのか?」
烈の問いかけを受け、蒼矢の顔に緊張が走った。
烈と蒼矢は今朝まで、一泊旅行先の箱根の宿に身を置いていた。
同じ部屋でふたりきりの夜を過ごし、抱き合ったまま朝を迎え、極上の目覚めを体感した烈が真っ先に視界にとらえたのは、ベッドから離れてスマホで通話する蒼矢の姿だった。
どうやら自分が起きるだいぶ前に目覚めていたらしい彼が、電話で誰と、なにを話していたのかは、夢うつつの烈には皆目見当がつかなかった。
しかしながら、起きたすぐ後…烈が目覚めたことに気付き、視線が合った時の蒼矢の表情は、凍ったように固まり、見開かれた目には隠しきれない内の動揺が表れているように感じられた。
まるで、今の蒼矢が表出している面持ちのように。
髙城邸へたどり着くと、タンデムから降りた蒼矢はヘルメットを脱ぎ、烈へふり向いた。
「…陽が心配だ。葉月さんは大丈夫なように言ってたけど…」
そう小さく漏れる声に、烈はバイザーを上げる。
「…そうだな。あいつだいぶ葉月さんに懐いてたし、まだ歴も浅いからなぁ…」
「ちゃんと全部割り切って受けとめられてるか…一度直接聞いてみた方がいいと思うんだ」
「確かに、ことが起きてからこっちになんの音沙汰もないってのは、大人し過ぎて奴らしくねぇしな。…明日の夕方、様子見に家行ってくるよ」
「俺も行く。大学の講義終えてからでもいいか?」
「おう、悪いな。終わる頃に連絡くれ、迎えに行くから」
そう、翌日ふたりで陽の実家である要家宅へ向かう約束をしたあと、一時の沈黙を置いてから、烈がヘルメットを脱ぐ。
「…蒼矢、あのさ。…聞きたいことがあるんだけど」
烈の挙動を不思議そうに眺める蒼矢を、烈は少し言い淀みながら見つめた。
「今朝…電話で話してたろ」
「…!」
「あれ…相手誰だったんだ、とか聞いてもいいのか?」
烈の問いかけを受け、蒼矢の顔に緊張が走った。
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どうやら自分が起きるだいぶ前に目覚めていたらしい彼が、電話で誰と、なにを話していたのかは、夢うつつの烈には皆目見当がつかなかった。
しかしながら、起きたすぐ後…烈が目覚めたことに気付き、視線が合った時の蒼矢の表情は、凍ったように固まり、見開かれた目には隠しきれない内の動揺が表れているように感じられた。
まるで、今の蒼矢が表出している面持ちのように。
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