上 下
15 / 99
本編

第1話_功労者の格言_8

しおりを挟む
食事を終え、片付いたテーブルで3人お茶をすする中、レツはふとあることに気づいて葉月へ話を振った。

「そういや、セイバーじゃなくなっても『回想』の記憶は残ったままなんすね!」
「ああ、うん。更に記憶を掘りさげることができなくなったってだけで、なくなるわけじゃないみたいだね。これから徐々に薄れてくかもしれないけど、一応まだ全部覚えてるよ」

そう烈へ返すと、葉月ハヅキはふと目を大きく見開いた。

「そういえば…ずっと不鮮明だった先代のアズライトの在席時期に、少し前にようやく辿れたんだった。そこだけずっと、虫食い穴ができたみたいに不鮮明だったんだけど」
「えっ…?」
「マジすか!?」

葉月が『エピドート』に就いてからずっとわからずじまいだった、蒼矢ソウヤの先代のアズライトに関する情報が口に出され、蒼矢と烈は思わず前のめりになる。

「どれくらい前なんすか?」
「在席してたのは30年前くらいだね。おおよそで換算すると、覚醒時期は今から35年前くらいかも」
「そんなに前…って、その間ずっと空席だったってことかよ…!!」
「僕ら時点で数年ばかし過去を追っても、わかるはずないよね」

衝撃の事実に唖然とする烈へ、葉月はため息混じりに相槌を打った。
当代である蒼矢が、つっ込んで問いかけていく。

「それで…実際には?」
「うん。先代もまた、『凍氷』まで発現してたらしい。もう少し前に遡っていくと、わりと『水』止まりだった人が多かったから、彼も適合性が高めだったのかもしれないね。…ただもちろん、装具なしで『索敵』を使った、という記録は残されてなかったよ」
「…そうですか…」
「残念だね…なにか参考にできるところがあれば、と思ったんだけど…」
「いえ、充分です」

そう言い、また沈黙に戻っていく蒼矢の隣で、烈がひとりとある点に気付く。

「30年前っていえば、蒼矢の父ちゃん世代じゃねぇか? うちの父ちゃんも、生きてりゃ50手前くらいだし」
「! あぁ…」
「そういえばそうか。今年50歳だとして、35年前で15歳。系譜で考えると、親子ほどの間隔なんだね」
「…」

ふたりのやり取りを耳にし、蒼矢は内で、身近な例をあげて考えてみる。

…確かに…、父さんが今年51歳。
…35年前だとすると、覚醒時期と丁度合ってくるんだな…

「まぁ、セイバーの世代で考えれば途方もねぇ不在期間だけどな!」
「そうだねぇ。それに、『アズライト』はなにしろ代替わりという概念はなくて、アズライトに足る適合者が現れ次第だから、30年ていうのもあくまで一例。それ以上開くこともあるだろうし、逆もあっただろう」

ひとり思案にふける蒼矢を置き、残ったふたりで話が進む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

青年は淫らな儀式の場に連行される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

屈した少年は仲間の隣で絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...