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本編
第1話_功労者の格言_6
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その後、葉月は旅行先から飲まず食わずで駆けつけたままだったふたりへ、遅い夕食をふるまった。
「ところで蒼矢。僕ちょっと聞きたいことがあったんだけど」
彼らの食事風景を眺める葉月が、箸を進める蒼矢へふと問いかけた。
「この間の戦闘で、『索敵』するのに装具使ってなかったって言ってたよね?」
「! はい」
「そういえば、そんなこと口走ってたな」
葉月は先日の侵略者[蜀]との一戦のことを話題にあげ、烈もああ、と思い出す。
「蒼矢が考えてた作戦のついでみたいな扱いになってたから、すっかり忘れちまってたわ。もしかして、冷静に考えるとすげぇことしてるんじゃねぇか?」
「そうなんだよ。あの時はこっちもうっかり流しちゃったけど、改めて詳しく聞かせてくれるかな?」
ふたりから興味深げな顔を向けられるなか、蒼矢は当時をふり返りながら口を開く。
「…今まで、『水面』を使わなければ[異界のもの]の気配を感じ取ることしかできませんでした。水面を通さない限り、弱点属性や急所はどれだけ視ようとしてもわかりませんでした」
「俺も、『索敵』は水面なしじゃできねぇもんだと思ってたな」
「それが最近になって、装具を介さずに"通常であれば見えないもの"を視覚できるようになったんです。最初は偶然かと思いかけましたが、水面を使うとそれらが鮮明に見えてくることに、戦闘を重ねるごとに気付いていきました」
「あくまで能力を増幅させるための装具だから、なくてもできる素養はあったってことなんだろうね」
「…ただし、水面使うよりすげぇ時間がかかるってことなんだよな?」
「うん。それに、よほど集中しないと視えない。それこそ、索敵以外に神経を使っていられないくらいに」
そう断り、蒼矢はふたりへ向けて苦笑いを浮かべた。
「先日の一戦では、"どうしても必要になった"から粘ってみただけです。おそらく通常の戦闘で、『水面』無しで『索敵』する意味はほとんどないでしょう。使わない状況にする有意性がありませんし」
「…いや、そうとも限らないんじゃない?」
たわむれと自己完結しかけた蒼矢へ、葉月は意見を差し挟む。
「今後、『水面』を使わない索敵能力が順調に伸びたとする。そのうち装具無しでも、あるときと遜色ないくらいに解析精度と速度があがって、水面を補助具としてではなく純粋に武器として使える日が来るかもしれない。…そしたら、次はなにが期待できるだろう」
「…? なん、でしょうか」
「たとえばの話だけど、ゆくゆくは『凍氷』属性でも『索敵』できるようになる。…こんな未来は想像できないかな?」
葉月の推論に、蒼矢は落雷に打たれたような衝撃を覚え、目を見張る。
「ところで蒼矢。僕ちょっと聞きたいことがあったんだけど」
彼らの食事風景を眺める葉月が、箸を進める蒼矢へふと問いかけた。
「この間の戦闘で、『索敵』するのに装具使ってなかったって言ってたよね?」
「! はい」
「そういえば、そんなこと口走ってたな」
葉月は先日の侵略者[蜀]との一戦のことを話題にあげ、烈もああ、と思い出す。
「蒼矢が考えてた作戦のついでみたいな扱いになってたから、すっかり忘れちまってたわ。もしかして、冷静に考えるとすげぇことしてるんじゃねぇか?」
「そうなんだよ。あの時はこっちもうっかり流しちゃったけど、改めて詳しく聞かせてくれるかな?」
ふたりから興味深げな顔を向けられるなか、蒼矢は当時をふり返りながら口を開く。
「…今まで、『水面』を使わなければ[異界のもの]の気配を感じ取ることしかできませんでした。水面を通さない限り、弱点属性や急所はどれだけ視ようとしてもわかりませんでした」
「俺も、『索敵』は水面なしじゃできねぇもんだと思ってたな」
「それが最近になって、装具を介さずに"通常であれば見えないもの"を視覚できるようになったんです。最初は偶然かと思いかけましたが、水面を使うとそれらが鮮明に見えてくることに、戦闘を重ねるごとに気付いていきました」
「あくまで能力を増幅させるための装具だから、なくてもできる素養はあったってことなんだろうね」
「…ただし、水面使うよりすげぇ時間がかかるってことなんだよな?」
「うん。それに、よほど集中しないと視えない。それこそ、索敵以外に神経を使っていられないくらいに」
そう断り、蒼矢はふたりへ向けて苦笑いを浮かべた。
「先日の一戦では、"どうしても必要になった"から粘ってみただけです。おそらく通常の戦闘で、『水面』無しで『索敵』する意味はほとんどないでしょう。使わない状況にする有意性がありませんし」
「…いや、そうとも限らないんじゃない?」
たわむれと自己完結しかけた蒼矢へ、葉月は意見を差し挟む。
「今後、『水面』を使わない索敵能力が順調に伸びたとする。そのうち装具無しでも、あるときと遜色ないくらいに解析精度と速度があがって、水面を補助具としてではなく純粋に武器として使える日が来るかもしれない。…そしたら、次はなにが期待できるだろう」
「…? なん、でしょうか」
「たとえばの話だけど、ゆくゆくは『凍氷』属性でも『索敵』できるようになる。…こんな未来は想像できないかな?」
葉月の推論に、蒼矢は落雷に打たれたような衝撃を覚え、目を見張る。
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