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本編
第1話_功労者の格言_4
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空席が多く他セイバーからの認知も低い『アズライト』として覚醒した蒼矢は、当初から常に不安定な立ち位置にさらされ、つい最近まで存在理由をも自問する苦難を味わい続けてきた。
通常、異形のものと対峙する守護者として、肉体的な強化のほか精神力にも補正がかかるようになっているが、アズライトに限っては、他セイバーよりも多大な精神的重圧がかかり、無に帰すことができない不安や自責の念が、心に降りそそいでいく。
補正の網をかいくぐるそれらは、普通の人間であれば当然感じるもので、そういう意味ではアズライトは本来の人間と近い感覚を持ちあわせている、と言えるかもしれない。
苡月のセイバー入りに複雑な感情を抱く蒼矢に、葉月は優しく同調した。
「…僕もね、"今"は『セイバー』を降りた時とは違う心境になってるんだ」
「? というと?」
「苡月が候補であると確信を得た時は、心の底から嬉しいと感じてた。でも今は…不安がどんどん大きくなってる」
頬杖を崩し、テーブルにゆるく置いた手元を見つめながら話す葉月の言葉に、烈と蒼矢は目を見張る。
「…なんだろう、漠然とね。僕にもなんでかわからない」
「……」
「身内だからなのかな? 親心みたいなものかもしれないね」
まっすぐ見るふたりへ、葉月は柔らかく笑ってみせた。
表情からは彼らしい柔和さが感じられたが、目端には少し、陰りが表れているようだった。
「…」
セイバーであった頃には無かった"ひととしての感覚"をとり戻している葉月に、烈と蒼矢は返す言葉が見つからず、視線を落とした。
沈黙するふたりの前で、葉月は姿勢を一度正し、お茶を一口すすった。
「…退く僕の口から言うのもおこがましいんだけど、今後しばらくは確実に戦力が落ちるだろう」
「…!」
「君たちも"欠け"のある期間を経験してきたから、理解はしてるよね?」
歴代のセイバーたちの代替わりごとに繰り返されてきた、一時的な防衛力低下期間。
葉月からやにわに語られ始めた話題に、烈と蒼矢は面差しを変える。
「"欠け"のある期間と、新たな『エピドート』が育つまでの期間。きっと前例に漏れず、厳しい体制が強いられると思う。今までは遭うはずがなかった苦境を味わうことになるかもしれない」
「…はい」
「でも…まぁそれは避けがたいとしても、僕はそれほど案じてはいないんだ。…今までに3人の返上機会を見届けてきたけど、今回は一番不安要素が少ないと思ってる」
「…?」
「…どういった理由からですか? 根拠を聞かせて下さい」
粛々と聞いていた烈と蒼矢は、ふと眉を寄せて問いかける。
通常、異形のものと対峙する守護者として、肉体的な強化のほか精神力にも補正がかかるようになっているが、アズライトに限っては、他セイバーよりも多大な精神的重圧がかかり、無に帰すことができない不安や自責の念が、心に降りそそいでいく。
補正の網をかいくぐるそれらは、普通の人間であれば当然感じるもので、そういう意味ではアズライトは本来の人間と近い感覚を持ちあわせている、と言えるかもしれない。
苡月のセイバー入りに複雑な感情を抱く蒼矢に、葉月は優しく同調した。
「…僕もね、"今"は『セイバー』を降りた時とは違う心境になってるんだ」
「? というと?」
「苡月が候補であると確信を得た時は、心の底から嬉しいと感じてた。でも今は…不安がどんどん大きくなってる」
頬杖を崩し、テーブルにゆるく置いた手元を見つめながら話す葉月の言葉に、烈と蒼矢は目を見張る。
「…なんだろう、漠然とね。僕にもなんでかわからない」
「……」
「身内だからなのかな? 親心みたいなものかもしれないね」
まっすぐ見るふたりへ、葉月は柔らかく笑ってみせた。
表情からは彼らしい柔和さが感じられたが、目端には少し、陰りが表れているようだった。
「…」
セイバーであった頃には無かった"ひととしての感覚"をとり戻している葉月に、烈と蒼矢は返す言葉が見つからず、視線を落とした。
沈黙するふたりの前で、葉月は姿勢を一度正し、お茶を一口すすった。
「…退く僕の口から言うのもおこがましいんだけど、今後しばらくは確実に戦力が落ちるだろう」
「…!」
「君たちも"欠け"のある期間を経験してきたから、理解はしてるよね?」
歴代のセイバーたちの代替わりごとに繰り返されてきた、一時的な防衛力低下期間。
葉月からやにわに語られ始めた話題に、烈と蒼矢は面差しを変える。
「"欠け"のある期間と、新たな『エピドート』が育つまでの期間。きっと前例に漏れず、厳しい体制が強いられると思う。今までは遭うはずがなかった苦境を味わうことになるかもしれない」
「…はい」
「でも…まぁそれは避けがたいとしても、僕はそれほど案じてはいないんだ。…今までに3人の返上機会を見届けてきたけど、今回は一番不安要素が少ないと思ってる」
「…?」
「…どういった理由からですか? 根拠を聞かせて下さい」
粛々と聞いていた烈と蒼矢は、ふと眉を寄せて問いかける。
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