ガイアセイバーズ9 -萌える若葉を摘む獣-

独楽 悠

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本編

第1話_功労者の格言_1

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11月末。

少し冷え込みの増した日の夕方遅く、日の暮れかけた小さな神社の境内脇にバイクが停まり、ふたりの人影が敷地内に据えられた住居へ早足で近付いていく。

呼び鈴が木霊し、ほどなくして内側から玄関がからりと開かれた。

「――いらっしゃい」
「…っ、すみません…遅くに」
「ううん。どうだった? 旅行は。紅葉は綺麗だった?」

家主らしき男は、訪ねてきた彼らへにこりと笑いかけたが、ふたりは張りつめた面差しを帯び、黙ったまま男を見上げるだけだった。

気さくに話しかけ始めたものの、靴も脱がず玄関土間に立ち尽くしたきりの彼らを眺め、男の方も浮かべていた笑みに少しだけ憂いを含ませた。

「…一旦やめとこうか。とにかくあがって」


住宅街に囲まれたくすのき神社の宮司で楠瀬クスノセ邸家主の楠瀬 葉月クスノセ ハヅキは、訪ねてきた青年たちを居間へ通す。
通されたふたり――花房 烈ハナブサ レツ髙城 蒼矢タカシロ ソウヤは、神妙な面持ちのまま、葉月へ対面して腰を下ろす。

ほうじ茶の入った湯呑みを差し出すと、葉月からゆっくりと口を開いた。

「…影斗エイトから、もう聞いてるのかな?」
「はい、…今日の昼過ぎくらいにSNSが入って。…そこから引き返してきたので、こんな時間になってしまいました…ご迷惑を」
「そんなことはないよ。かえって、僕の都合で帰宅を急がせてしまったんだね。折角の機会だったのに、こちらこそすまないことをした」

頭を下げながら返答する蒼矢へ、葉月は首を横に振りながら優しくとりなした。
依然静かな面差しを崩さない葉月へ、傍らの烈は力のこもった視線を送る。

「こっちに帰ってくるにつれて、だんだん実感が湧いてきた気がしました」
「遠隔地だと感じ取れないってことなんだろう。今までは、きまってみんな近場にいることが多かったから…丁度タイミングが合って、気付けずにきてしまってたんだね」
「…今まであるのが当たり前だったものが、ぽっかりなくなっちまった…みたいな、そんな気分です…」

烈の吐露は、傍から聞いていれば不鮮明でひたすら感覚的だったが、葉月はなんの疑問符もないようにこくりと頷いた。
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