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本編
第14話_摘みとられる青い蕾(R18)
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抹殺が目的だったはずの[侵略者]の挙動が、獲物であるアズライトの反応に触発され、いつの間にか凌辱へと切り替わっていた。
「! …まずい」
遠目から隙を窺っていたロードナイトは、[鉛鎖]の背面に隠された双方の変化に顔を歪める。[侵略者]による"搾取"が始まったことを察知したのだ。
搾取は、[異界のもの]――中でも[侵略者]が人間に対して行う生命維持活動で、『現実世界』に侵入し、人間を襲う理由である。[侵略者]の命の源は"人間の体液"であり、体に吸収することで体力や筋力、精神力、個々が持つ特殊能力のエネルギーとなり、それらを維持することができる。頻繁に行わずとも生きられるが、ある一定のラインを下回ると"飢餓状態"になり、最終的には消滅する。
なお、人間の"体液"であれば成分は問わず、血液や唾液、汗などあらゆるものが対象になるが、吸収する上で最も効率が良く、搾取後のパフォーマンスが最良なのは、精液であった。よって[侵略者]の多くは主に、人間の中でも精通を終えた男性を狙う。数日前に楠神社で蒼矢を襲った[侵略者]は、なんらかの事由で長らく搾取できず、飢餓状態に陥った末にことに及んでいた。周囲に注意を払えず葉月の存在にも一切気付けないまま嬲ったのも、自然の摂理であったと言えるだろう。
「んん…、んく…っ…」
交わり、口端から滲み出る唾液が顎を伝い、戦闘スーツへ落ちていく。その胸元にある二つの突起は徐々に誇張し始め、拇指の腹で擦ると内側から艶やかに勃ち、強く押し潰すと硬く閉じていた目が薄く開き、全身を震わせた。
「…んぅっ…!」
息つく間もなく[鉛鎖]の手は両脇を通り、背骨を辿って腰を撫ぜながら尻を掴む。小振りでも柔らかなそれは、感触を愉しむように揉まれながら[鉛鎖]の腹部へ引き付けられ、間に挟まった局部がスーツの中で熱を帯びていった。宙吊りになる脚は無意識にぴくぴくと反応し、アズライトの身体が少しずつ大きく、深くなっていく快感に支配されていく。
しかしその片隅で意識はまだ、はっきりと無言の抵抗を示していた。
「!! っ…く」
口腔を嬲っていた[鉛鎖]は、不意に異変を感じて唇から離れた。歪んだその口元には赤黒い血液が滲む。唾を吐き捨て、見下げるように視線を送ると、獲物は真っ向から鋭い眼で睨みあげていた。
アズライトの[侵略者]へ対する感覚の中に、普通の人間では感じえないだろう意識が湧きあがっていた。
嫌厭、憎悪、敵意。
…この[異界の侵入者]に、俺は絶対に屈しない。
そこにはもはや、惧れや恐怖は無かった。
「…面白い」
[鉛鎖]は噛みちぎられた舌で血液を舐め取ると、鋼鉄の拳をアズライトの顔に浴びせた。鈍い音が数度ロードナイトの耳端まで届き、足止めを喰らっていた身体が思わず前のめりになる。
「アズライト!!」
太い叫び声が脳内に届くが、アズライトはそれには応ぜず、首を前に傾げた。[鉛鎖]はばさりと揺れる前髪を掴んで頭を起こすと、鼻先まで顔を寄せ、目を見開く。手酷く甚振られ無抵抗に従うが、アズライトはなおも敵意剥き出しで[鉛鎖]を見返した。
「凡庸な輩とは一味違うという訳か。…玩具として嬲り尽くしてやるというのも一興か」
そう耳元で呟くと、片腕をアズライトの首元から真下にまっすぐ振るう。鋼の刃は表面のみを断ち、スーツは真ん中で二つに切り裂かれ、白い痩躯が局部まで露わになる。
「――!!」
その惨景に、ロードナイトは装具を呼び出して一歩踏み込んだ。が、後方の気配を察した[鉛鎖]は片手をアズライトの首にあてる。
「下手な真似はするなよ。…これをどうするか、全て俺の気分次第…今この場で八つ裂きにしてもかまわんのだ」
「……っ」
後方が沈黙したことを認めると、[鉛鎖]は僅かに口角をあげ、目の前の均整の取れた肢体に手を触れる。首筋から鎖骨を掌でなぞり胸を揉みあげ、くびれた腰を辿って下腹部まで撫でさすり、更に下方へ伸ばすと太腿の付け根に揺れる陰茎を握った。
「っぅ…!」
顎が浮き、引き結ばれていた口から声が漏れる。
先ほどまでの凌辱で既に硬くなっていた局部は簡単に勃起し、[鉛鎖]は握る手に力を徐々に加えながら、ゆっくりと上下に動かしていく。
「っ、あ、あぁ…っ…!」
先走って漏れ出した精液が陰茎に滴り、滑りの良くなった手の動きは少しずつ速くなっていく。
「…っあ…、あぁ、や、ぁ……っ!」
息をあげ、拒むように頭を横に振るが、[鉛鎖]は首と顎を押さえて正面を向かせる。そして熱い吐息を漏らす彼と視線を合わせたまま、陰茎を強く扱いた。
「! あぅっ、あぁっ…、ああぁっ!!」
アズライトは喘ぎ声をあげながら、腰を突き出して射精した。果てても[鉛鎖]の手は止まらず激しく上下に擦られ、全身をびくびくと跳ねさせる。嬲られ続ける陰茎の迸るような感覚に、長い睫毛の奥にある藍色の瞳から光が薄れていく。
「あはっ…は、ぁ…、っあ…っ…」
[鉛鎖]は途切れとぎれに漏れる嬌声を聞きながら、うっすらと歯列を覗かせる。そして、精液にまみれた手を彼の視界に入るようかざし、その虚ろな面差しの目の前で口に含む。
「…すさまじい痴態だ…さぞや悔しかろう。しかし人間など、選ばれたにしろこの程度…『己』が[我ら]に喰われる側だということを思い知るがいい」
言葉責めを受けながらも、獲物の艶やかな唇は続きを求めるように舌を出し、応える[鉛鎖]は再び喰いついた。
「んぅ…、んくぅ…」
アズライトは徐々に増す快楽に逆らえず、口内を蹂躙する長い舌に自身の舌を絡ませる。濡れた音をたてながら、合わさった口元が激しく動く。[鉛鎖]は反り返る痩躯に鎖を回して自身の体と密着させると、スーツの中へ手を滑り込ませていく。しっとりと汗ばんだ柔らかな肌の上を[鉛鎖]の両手が這い、薄地の中で激しく動き回る。
あらゆる性感帯を駆け巡っていく快感に、アズライトはなす術無く溺れていく。
「っんく…っ…、んんぅ…」
剥き出しになった陰茎は、先端からねばつく糸を引きながら身体の動きに合わせて揺れ、[鉛鎖]はそれを再び扱き始めると、更なる射精を促していく。
そして、スーツの中を動き回る手が、傷を負った脇腹を強く撫ぜた。
「ん゛、んうぅっ!」
全身に感じる快楽に焼けるような痛みが混ざり、アズライトは悶えながら再び射精した。硬直する両脚の間から白濁の液が噴き出し、太腿を伝い地に滴り落ちていく。
「はっぁ…、あは…っ…、あ…」
口を外した[鉛鎖]は、頬を染め息を荒げる面差しを半嗤いで眺めながら、陰茎を掴んで下半身を引っ張りあげ、先端から溢れる精液を舌で舐め取った。
「! あうぅっ…! っあぁっ…あはぁっ…」
乱暴に弄ばれる未成熟な身体が、浅い息遣いに喘ぎ声を混じらせながら小刻みに震えていた。
[異形]の集中砲火を光弾で退け、サルファーが再び怒鳴った。
「ロード、動け!! このままじゃあいつ[異界]に持っていかれちまうぞ!!」
「っわかってる!! でもどうすればいいっ…アズライトは[奴]の手の中にあるんだぞ!?」
「……んなもん、こっちの気迫次第だろうが!!」
そう脳内で吐き捨てると、サルファーは執拗に取り囲う[異形]へ目を剥き、頭頂に浮かぶ陽光に力を込める。
「おらああぁっ!!!」
咆哮と共にまばゆい光が空間一帯を支配し、視認できないほどに質量を増した光の矢が[異形]たちに浴びせかけられる。サルファーは陽光をその場に残し、閃光を構え[鉛鎖]へ高速で降下する。彼の動きに合わせるようにロードナイトも瞬時に攻撃姿勢を取り、紅蓮を手に突撃した。
二方向からの特攻に、顔貌を素に戻した[鉛鎖]は刃状に変形させた片腕をあげ、アズライトへ振り下ろす。
「――!!」
が、彼の首を断つ寸前で、突然目の前が真っ暗になった。アズライトへ最期の一太刀を浴びせようとした刃の腕には、視認する間もない内に黒い霧状の帯が巻きついていた。
「ぐ…ぅ…っ」
捕えられた腕に外側から圧力がかかるような感じを覚え、縮められると共に刃先が己の身の方へと動かされていき、咄嗟に形状を元の人の腕型に戻す。
やがて体躯の全てが黒い霧に覆われ、収縮される感覚は全身へ及び、中心へと凝縮されていく。
「……っ!!」
万力を持ってしても抗えない[鉛鎖]は抵抗を諦め、濃くなっていく霧の隙間から、セイバーたちへ向けて鋭い眼光を送った。
「…次は…必ず始末する」
小さくなっていく霧の塊の中から低い声が漏れ、[鉛鎖]は空間からかき消えた。
「……!!」
「…オニキス」
サルファーとロードナイトが目を見張る先に、闇色の霧が残る拳を前方に突き出すオニキスが立っていた。額にはうっすらと汗がにじみ、やや息を弾ませながらも、二人へ睨むような視線を送っていた。
ふいな彼の参戦に、サルファーはぽかんとなった後、一瞬で啖呵を切った。
「っ…てめぇ、何しやがる!! 決着つかなかったじゃねぇかっ…」
が、それを無視するようにオニキスは地に伏せるアズライトへと駆け寄っていく。
「サルファー、今はアズライトだ」
それを見たロードナイトも冷静を取り戻し、二人の元へ走っていった。
「……っ!!」
片割れに諭され、憤激しかけていたサルファーはその場で荒々しく地団太を踏み、幾分か気を落ち着かせてからガニ股で彼らへと歩み寄っていった。
「! …まずい」
遠目から隙を窺っていたロードナイトは、[鉛鎖]の背面に隠された双方の変化に顔を歪める。[侵略者]による"搾取"が始まったことを察知したのだ。
搾取は、[異界のもの]――中でも[侵略者]が人間に対して行う生命維持活動で、『現実世界』に侵入し、人間を襲う理由である。[侵略者]の命の源は"人間の体液"であり、体に吸収することで体力や筋力、精神力、個々が持つ特殊能力のエネルギーとなり、それらを維持することができる。頻繁に行わずとも生きられるが、ある一定のラインを下回ると"飢餓状態"になり、最終的には消滅する。
なお、人間の"体液"であれば成分は問わず、血液や唾液、汗などあらゆるものが対象になるが、吸収する上で最も効率が良く、搾取後のパフォーマンスが最良なのは、精液であった。よって[侵略者]の多くは主に、人間の中でも精通を終えた男性を狙う。数日前に楠神社で蒼矢を襲った[侵略者]は、なんらかの事由で長らく搾取できず、飢餓状態に陥った末にことに及んでいた。周囲に注意を払えず葉月の存在にも一切気付けないまま嬲ったのも、自然の摂理であったと言えるだろう。
「んん…、んく…っ…」
交わり、口端から滲み出る唾液が顎を伝い、戦闘スーツへ落ちていく。その胸元にある二つの突起は徐々に誇張し始め、拇指の腹で擦ると内側から艶やかに勃ち、強く押し潰すと硬く閉じていた目が薄く開き、全身を震わせた。
「…んぅっ…!」
息つく間もなく[鉛鎖]の手は両脇を通り、背骨を辿って腰を撫ぜながら尻を掴む。小振りでも柔らかなそれは、感触を愉しむように揉まれながら[鉛鎖]の腹部へ引き付けられ、間に挟まった局部がスーツの中で熱を帯びていった。宙吊りになる脚は無意識にぴくぴくと反応し、アズライトの身体が少しずつ大きく、深くなっていく快感に支配されていく。
しかしその片隅で意識はまだ、はっきりと無言の抵抗を示していた。
「!! っ…く」
口腔を嬲っていた[鉛鎖]は、不意に異変を感じて唇から離れた。歪んだその口元には赤黒い血液が滲む。唾を吐き捨て、見下げるように視線を送ると、獲物は真っ向から鋭い眼で睨みあげていた。
アズライトの[侵略者]へ対する感覚の中に、普通の人間では感じえないだろう意識が湧きあがっていた。
嫌厭、憎悪、敵意。
…この[異界の侵入者]に、俺は絶対に屈しない。
そこにはもはや、惧れや恐怖は無かった。
「…面白い」
[鉛鎖]は噛みちぎられた舌で血液を舐め取ると、鋼鉄の拳をアズライトの顔に浴びせた。鈍い音が数度ロードナイトの耳端まで届き、足止めを喰らっていた身体が思わず前のめりになる。
「アズライト!!」
太い叫び声が脳内に届くが、アズライトはそれには応ぜず、首を前に傾げた。[鉛鎖]はばさりと揺れる前髪を掴んで頭を起こすと、鼻先まで顔を寄せ、目を見開く。手酷く甚振られ無抵抗に従うが、アズライトはなおも敵意剥き出しで[鉛鎖]を見返した。
「凡庸な輩とは一味違うという訳か。…玩具として嬲り尽くしてやるというのも一興か」
そう耳元で呟くと、片腕をアズライトの首元から真下にまっすぐ振るう。鋼の刃は表面のみを断ち、スーツは真ん中で二つに切り裂かれ、白い痩躯が局部まで露わになる。
「――!!」
その惨景に、ロードナイトは装具を呼び出して一歩踏み込んだ。が、後方の気配を察した[鉛鎖]は片手をアズライトの首にあてる。
「下手な真似はするなよ。…これをどうするか、全て俺の気分次第…今この場で八つ裂きにしてもかまわんのだ」
「……っ」
後方が沈黙したことを認めると、[鉛鎖]は僅かに口角をあげ、目の前の均整の取れた肢体に手を触れる。首筋から鎖骨を掌でなぞり胸を揉みあげ、くびれた腰を辿って下腹部まで撫でさすり、更に下方へ伸ばすと太腿の付け根に揺れる陰茎を握った。
「っぅ…!」
顎が浮き、引き結ばれていた口から声が漏れる。
先ほどまでの凌辱で既に硬くなっていた局部は簡単に勃起し、[鉛鎖]は握る手に力を徐々に加えながら、ゆっくりと上下に動かしていく。
「っ、あ、あぁ…っ…!」
先走って漏れ出した精液が陰茎に滴り、滑りの良くなった手の動きは少しずつ速くなっていく。
「…っあ…、あぁ、や、ぁ……っ!」
息をあげ、拒むように頭を横に振るが、[鉛鎖]は首と顎を押さえて正面を向かせる。そして熱い吐息を漏らす彼と視線を合わせたまま、陰茎を強く扱いた。
「! あぅっ、あぁっ…、ああぁっ!!」
アズライトは喘ぎ声をあげながら、腰を突き出して射精した。果てても[鉛鎖]の手は止まらず激しく上下に擦られ、全身をびくびくと跳ねさせる。嬲られ続ける陰茎の迸るような感覚に、長い睫毛の奥にある藍色の瞳から光が薄れていく。
「あはっ…は、ぁ…、っあ…っ…」
[鉛鎖]は途切れとぎれに漏れる嬌声を聞きながら、うっすらと歯列を覗かせる。そして、精液にまみれた手を彼の視界に入るようかざし、その虚ろな面差しの目の前で口に含む。
「…すさまじい痴態だ…さぞや悔しかろう。しかし人間など、選ばれたにしろこの程度…『己』が[我ら]に喰われる側だということを思い知るがいい」
言葉責めを受けながらも、獲物の艶やかな唇は続きを求めるように舌を出し、応える[鉛鎖]は再び喰いついた。
「んぅ…、んくぅ…」
アズライトは徐々に増す快楽に逆らえず、口内を蹂躙する長い舌に自身の舌を絡ませる。濡れた音をたてながら、合わさった口元が激しく動く。[鉛鎖]は反り返る痩躯に鎖を回して自身の体と密着させると、スーツの中へ手を滑り込ませていく。しっとりと汗ばんだ柔らかな肌の上を[鉛鎖]の両手が這い、薄地の中で激しく動き回る。
あらゆる性感帯を駆け巡っていく快感に、アズライトはなす術無く溺れていく。
「っんく…っ…、んんぅ…」
剥き出しになった陰茎は、先端からねばつく糸を引きながら身体の動きに合わせて揺れ、[鉛鎖]はそれを再び扱き始めると、更なる射精を促していく。
そして、スーツの中を動き回る手が、傷を負った脇腹を強く撫ぜた。
「ん゛、んうぅっ!」
全身に感じる快楽に焼けるような痛みが混ざり、アズライトは悶えながら再び射精した。硬直する両脚の間から白濁の液が噴き出し、太腿を伝い地に滴り落ちていく。
「はっぁ…、あは…っ…、あ…」
口を外した[鉛鎖]は、頬を染め息を荒げる面差しを半嗤いで眺めながら、陰茎を掴んで下半身を引っ張りあげ、先端から溢れる精液を舌で舐め取った。
「! あうぅっ…! っあぁっ…あはぁっ…」
乱暴に弄ばれる未成熟な身体が、浅い息遣いに喘ぎ声を混じらせながら小刻みに震えていた。
[異形]の集中砲火を光弾で退け、サルファーが再び怒鳴った。
「ロード、動け!! このままじゃあいつ[異界]に持っていかれちまうぞ!!」
「っわかってる!! でもどうすればいいっ…アズライトは[奴]の手の中にあるんだぞ!?」
「……んなもん、こっちの気迫次第だろうが!!」
そう脳内で吐き捨てると、サルファーは執拗に取り囲う[異形]へ目を剥き、頭頂に浮かぶ陽光に力を込める。
「おらああぁっ!!!」
咆哮と共にまばゆい光が空間一帯を支配し、視認できないほどに質量を増した光の矢が[異形]たちに浴びせかけられる。サルファーは陽光をその場に残し、閃光を構え[鉛鎖]へ高速で降下する。彼の動きに合わせるようにロードナイトも瞬時に攻撃姿勢を取り、紅蓮を手に突撃した。
二方向からの特攻に、顔貌を素に戻した[鉛鎖]は刃状に変形させた片腕をあげ、アズライトへ振り下ろす。
「――!!」
が、彼の首を断つ寸前で、突然目の前が真っ暗になった。アズライトへ最期の一太刀を浴びせようとした刃の腕には、視認する間もない内に黒い霧状の帯が巻きついていた。
「ぐ…ぅ…っ」
捕えられた腕に外側から圧力がかかるような感じを覚え、縮められると共に刃先が己の身の方へと動かされていき、咄嗟に形状を元の人の腕型に戻す。
やがて体躯の全てが黒い霧に覆われ、収縮される感覚は全身へ及び、中心へと凝縮されていく。
「……っ!!」
万力を持ってしても抗えない[鉛鎖]は抵抗を諦め、濃くなっていく霧の隙間から、セイバーたちへ向けて鋭い眼光を送った。
「…次は…必ず始末する」
小さくなっていく霧の塊の中から低い声が漏れ、[鉛鎖]は空間からかき消えた。
「……!!」
「…オニキス」
サルファーとロードナイトが目を見張る先に、闇色の霧が残る拳を前方に突き出すオニキスが立っていた。額にはうっすらと汗がにじみ、やや息を弾ませながらも、二人へ睨むような視線を送っていた。
ふいな彼の参戦に、サルファーはぽかんとなった後、一瞬で啖呵を切った。
「っ…てめぇ、何しやがる!! 決着つかなかったじゃねぇかっ…」
が、それを無視するようにオニキスは地に伏せるアズライトへと駆け寄っていく。
「サルファー、今はアズライトだ」
それを見たロードナイトも冷静を取り戻し、二人の元へ走っていった。
「……っ!!」
片割れに諭され、憤激しかけていたサルファーはその場で荒々しく地団太を踏み、幾分か気を落ち着かせてからガニ股で彼らへと歩み寄っていった。
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