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本編
第13話_遠方からの帰還者-1
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1週間後の日曜日、テスト期間を終えた陽が、愛車のロードバイクを立ちこぎしながら楠神社へ滑り込む。
いつも通り肩にかついで石段を飛び上がり、玉砂利に停めると、やはりインターホン無しで参道脇に構えた住居の引き戸を景気良く開いた。
「月兄っ、おわったぞー!!」
家主が応答する前に靴を脱ぎ捨て、何か洗い物の最中だったのか髪をお団子にし、たすき掛けしたまま出迎えた葉月の鼻先に、しわくちゃになった答案用紙を突き出す。
「全教科赤点、回避!!」
「そっか、良かったね…! よく頑張りました」
得意気にふんぞり返り、鼻の穴を広げる陽を見、葉月も自分のことのように喜んだ。
「もっと褒めて褒めてっ」
「うんっ、偉い偉い」
「へへっ。今回はどの科目も調子良くてさ、ヤマはほぼ当たるし苦手な所もあんま出なかったし。これで前回テストから順位うなぎのぼり!」
「ねぇ、僕が教えたところは出た? 出来た?」
「出た出た! やっぱ漢文捨てなくて良かったわ。言われたポイントばっちり!」
満面の笑みを浮かべながらぱちぱちと手を叩く26歳・宮司へ、陽はVサインをして見せた。
「! そういえば、兄貴たちは? 今日みんなココに集まるみたいなこと話してなかったっけ?」
「ああ、それが…予定と違っちゃってね」
キョロキョロと楠瀬邸内を見回す姿を見、葉月ははたと気づき、すまなそうに眉毛を下げた。
「烈は先週の一戦で店に穴開けちゃったから、お母さんに仕事もりもり任されたみたいで。元々来れるか微妙だったけど、やっぱり忙しくなっちゃったって、直前でキャンセル」
「ああ…ちょっと聞いた。ったく、間が悪いよなぁ…俺も参戦したかった!」
「それを回避しての、今回の結果だと思えば。ね」
「まぁねー。じゃあ、蒼兄と影兄は?」
「天気がいいからって、さっき2人で出掛けたよ」
「えーっ、なんだよぉ…折角報告に来たのにぃ…」
軒並み不在と知り、先ほどまでとはうって変わり、頬を膨らませてむくれる。
「まぁまぁ、みんな夕飯はここで食べる予定だから、その頃にはまた集まってくるよ」
そんな彼を困ったように葉月がなだめる中、玄関のインターホンが鳴る。
「あっほら、誰か来たよ。烈かも」
ぶう垂れる陽を伴い、玄関へ向かった葉月は引き戸を開ける。そして、目の前に現れた予想外の人物に一瞬固まり、目を丸くした。
玄関には、葉月を背格好そのまま小さくして、ひと世代ほど若返らせたような容姿の少年が立っていた。
葉月と、彼の傍らにいた陽が、同時に声をあげる。
「…苡月…!?」
「……ただいま、…お兄ちゃん」
いつも通り肩にかついで石段を飛び上がり、玉砂利に停めると、やはりインターホン無しで参道脇に構えた住居の引き戸を景気良く開いた。
「月兄っ、おわったぞー!!」
家主が応答する前に靴を脱ぎ捨て、何か洗い物の最中だったのか髪をお団子にし、たすき掛けしたまま出迎えた葉月の鼻先に、しわくちゃになった答案用紙を突き出す。
「全教科赤点、回避!!」
「そっか、良かったね…! よく頑張りました」
得意気にふんぞり返り、鼻の穴を広げる陽を見、葉月も自分のことのように喜んだ。
「もっと褒めて褒めてっ」
「うんっ、偉い偉い」
「へへっ。今回はどの科目も調子良くてさ、ヤマはほぼ当たるし苦手な所もあんま出なかったし。これで前回テストから順位うなぎのぼり!」
「ねぇ、僕が教えたところは出た? 出来た?」
「出た出た! やっぱ漢文捨てなくて良かったわ。言われたポイントばっちり!」
満面の笑みを浮かべながらぱちぱちと手を叩く26歳・宮司へ、陽はVサインをして見せた。
「! そういえば、兄貴たちは? 今日みんなココに集まるみたいなこと話してなかったっけ?」
「ああ、それが…予定と違っちゃってね」
キョロキョロと楠瀬邸内を見回す姿を見、葉月ははたと気づき、すまなそうに眉毛を下げた。
「烈は先週の一戦で店に穴開けちゃったから、お母さんに仕事もりもり任されたみたいで。元々来れるか微妙だったけど、やっぱり忙しくなっちゃったって、直前でキャンセル」
「ああ…ちょっと聞いた。ったく、間が悪いよなぁ…俺も参戦したかった!」
「それを回避しての、今回の結果だと思えば。ね」
「まぁねー。じゃあ、蒼兄と影兄は?」
「天気がいいからって、さっき2人で出掛けたよ」
「えーっ、なんだよぉ…折角報告に来たのにぃ…」
軒並み不在と知り、先ほどまでとはうって変わり、頬を膨らませてむくれる。
「まぁまぁ、みんな夕飯はここで食べる予定だから、その頃にはまた集まってくるよ」
そんな彼を困ったように葉月がなだめる中、玄関のインターホンが鳴る。
「あっほら、誰か来たよ。烈かも」
ぶう垂れる陽を伴い、玄関へ向かった葉月は引き戸を開ける。そして、目の前に現れた予想外の人物に一瞬固まり、目を丸くした。
玄関には、葉月を背格好そのまま小さくして、ひと世代ほど若返らせたような容姿の少年が立っていた。
葉月と、彼の傍らにいた陽が、同時に声をあげる。
「…苡月…!?」
「……ただいま、…お兄ちゃん」
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