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本編
第11話_決起-1
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夜が明けた楠神社に、蒼矢を伴った烈と、彼から連絡を受けた影斗が早朝からおち合った。
丁度先週末からテスト期間に入った陽へは、余計な刺激と不安を与えかねないと判断してあえて事の次第は伝えず、参加も見合わせることにした。
蒼矢はひとまず目の届く客間に寝かされ、残りの3人が居間に集まる。
早速、昨日髙城邸で起こった顛末が烈から打ち明けられ、影斗は双眸を大きく開かせたまま表情を固まらせた。
「…マジ、かよ…」
「…まさか、"ひと"から[異界のもの]になる者がいるなんて…出来る・出来ないの可能性は置いておくとして、そういう考えに至ることがあるとは想像出来なかった」
言葉を失う影斗の隣で、葉月が眉をひそめながら唸る。
「[彼]を[異界のもの]に変えたのは、きっとこの前の[蟲使い]なんだろうね…」
「転送した時と昨日の臭いが同じだったから、間違いないっす」
「幻惑系と神経毒系の能力があると見てる。短期決戦が必須だと思うけど、弱点は判ってるの?」
「[異形]相手には火炎はよく効いてました。あとは…まだ」
葉月と烈が言葉を交わす中、沈黙していた影斗が口を開いた。
「…結局一度目の戦闘から[侵略者]は現れてねぇ。また"狩場"を作れる機会を窺ってるんだろうな…近い内に必ず"次"はある」
「…!」
「[鱗]の[異界のもの]としての性質はわからねぇが、[侵略者]から造ったってなれば、多分同じだ。[親]が判ればなんとかなるだろ」
手元を見ながらつらつらと考察を述べる彼へ、烈は案ずるような視線を注ぐ。
「影斗…平気か?」
「あぁ、安心しろ。"敵"だと判った時点で、俺の中ではふっ切れた」
「…おう」
いつも通りにやりと笑って見せた影斗に、烈は安堵するように息をつきながら応えた。
「――起動装置に反応しない[彼]をどうにかするとなると、[侵略者]と一緒に転送させる必要がある。それと…『セイバー』の能力はおそらく、ひと相手には無効化されるだろう。…非常に難儀且つ目算が無いけど、[彼]を『転異空間』で迎え撃つことは正解なんだろうか」
口元に手を当てながら、葉月はひとり思案する。
「そっちの確証はねぇが、少なくとも『現実世界』では、[あいつ]をどうにもできねぇ確証が出来てる。だったら、賭けるしかねぇだろ」
「…だな」
「…2人とも覚悟が出来てるなら、そうしようか」
なんとなく話がまとまりかけたところで、静かにふすまが開く。
「俺も行きます」
「…蒼矢…!」
振り向き、一様に動揺する3人の視線を浴びる中、蒼矢は落ち着いた表情で彼らを見返していた。
「[立羽]の狙いは、俺です。行かないと、姿を現さないかもしれない」
「…蒼矢、言い分は解るけど…危険だ。それに、君は怪我もしてる。本調子じゃない」
葉月が諭すように止めるが、蒼矢は首を横に振る。
「すみません…葉月さん、もう決めたんです。…連れて行って下さい」
そう進言を受け、逡巡する葉月が返せずにいる中、意思のこもった眼差しを注ぐ彼を、影斗は睨むように見上げた。
「…囮になるつもりじゃねぇよな?」
「違います、『役目』を全うしたいだけです。先輩たちだって、俺が必要なはずです。…ここで何もしないで待ってるつもりは無い」
「…もう、大丈夫なんだな? 欠片でも、お前の中で無理してないな?」
「……」
そうゆっくりと問いかけた烈へ、目を合わせた蒼矢は、わずかに頬を染めながらしっかりと頷いてみせた。
2人の真っ直ぐな視線が重なり合う。
その両方を見やっていた影斗は、一時目を閉じてから、軽く息を吐き出した。
「――じゃ、とりあえずこの2日間で待機だな。十分あっちから仕掛けてきてる。何か動きがあるだろ」
「了解」
丁度先週末からテスト期間に入った陽へは、余計な刺激と不安を与えかねないと判断してあえて事の次第は伝えず、参加も見合わせることにした。
蒼矢はひとまず目の届く客間に寝かされ、残りの3人が居間に集まる。
早速、昨日髙城邸で起こった顛末が烈から打ち明けられ、影斗は双眸を大きく開かせたまま表情を固まらせた。
「…マジ、かよ…」
「…まさか、"ひと"から[異界のもの]になる者がいるなんて…出来る・出来ないの可能性は置いておくとして、そういう考えに至ることがあるとは想像出来なかった」
言葉を失う影斗の隣で、葉月が眉をひそめながら唸る。
「[彼]を[異界のもの]に変えたのは、きっとこの前の[蟲使い]なんだろうね…」
「転送した時と昨日の臭いが同じだったから、間違いないっす」
「幻惑系と神経毒系の能力があると見てる。短期決戦が必須だと思うけど、弱点は判ってるの?」
「[異形]相手には火炎はよく効いてました。あとは…まだ」
葉月と烈が言葉を交わす中、沈黙していた影斗が口を開いた。
「…結局一度目の戦闘から[侵略者]は現れてねぇ。また"狩場"を作れる機会を窺ってるんだろうな…近い内に必ず"次"はある」
「…!」
「[鱗]の[異界のもの]としての性質はわからねぇが、[侵略者]から造ったってなれば、多分同じだ。[親]が判ればなんとかなるだろ」
手元を見ながらつらつらと考察を述べる彼へ、烈は案ずるような視線を注ぐ。
「影斗…平気か?」
「あぁ、安心しろ。"敵"だと判った時点で、俺の中ではふっ切れた」
「…おう」
いつも通りにやりと笑って見せた影斗に、烈は安堵するように息をつきながら応えた。
「――起動装置に反応しない[彼]をどうにかするとなると、[侵略者]と一緒に転送させる必要がある。それと…『セイバー』の能力はおそらく、ひと相手には無効化されるだろう。…非常に難儀且つ目算が無いけど、[彼]を『転異空間』で迎え撃つことは正解なんだろうか」
口元に手を当てながら、葉月はひとり思案する。
「そっちの確証はねぇが、少なくとも『現実世界』では、[あいつ]をどうにもできねぇ確証が出来てる。だったら、賭けるしかねぇだろ」
「…だな」
「…2人とも覚悟が出来てるなら、そうしようか」
なんとなく話がまとまりかけたところで、静かにふすまが開く。
「俺も行きます」
「…蒼矢…!」
振り向き、一様に動揺する3人の視線を浴びる中、蒼矢は落ち着いた表情で彼らを見返していた。
「[立羽]の狙いは、俺です。行かないと、姿を現さないかもしれない」
「…蒼矢、言い分は解るけど…危険だ。それに、君は怪我もしてる。本調子じゃない」
葉月が諭すように止めるが、蒼矢は首を横に振る。
「すみません…葉月さん、もう決めたんです。…連れて行って下さい」
そう進言を受け、逡巡する葉月が返せずにいる中、意思のこもった眼差しを注ぐ彼を、影斗は睨むように見上げた。
「…囮になるつもりじゃねぇよな?」
「違います、『役目』を全うしたいだけです。先輩たちだって、俺が必要なはずです。…ここで何もしないで待ってるつもりは無い」
「…もう、大丈夫なんだな? 欠片でも、お前の中で無理してないな?」
「……」
そうゆっくりと問いかけた烈へ、目を合わせた蒼矢は、わずかに頬を染めながらしっかりと頷いてみせた。
2人の真っ直ぐな視線が重なり合う。
その両方を見やっていた影斗は、一時目を閉じてから、軽く息を吐き出した。
「――じゃ、とりあえずこの2日間で待機だな。十分あっちから仕掛けてきてる。何か動きがあるだろ」
「了解」
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