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本編
第8話_靄に隠れた脅威-2
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「……」
2人の見解をひと通り受け取ったものの、まだ初見の数分と一昨日の唐突な告白でしか麟とまみえていない影斗としては、判断がつきかねた。
唸ったきり沈黙してしまった彼を見、川崎と沖本は慌てた風に両手を振る。
「いや、あくまで感想です。俺たちも言うほど立羽と面と向かって話してるわけじゃないですから」
「…すみません、浅見過ぎました。最後のは忘れて下さい」
「まぁ、参考程度に覚えとくよ」
「お願いします。…この間、先輩と立羽が会った時…なんかあいつが先輩に気があるように見えちゃって」
「差し出がましいようですけど、気になって…」
「…ん、いいって。ありがとな」
話がひと段落したところで、川崎と沖本は再び真剣な面差しになる。
「話を戻します。俺たちはエイト先輩のファンであると同時に、髙城のファンでもあります。…そして、エイト先輩が目指してる2人のご関係も、内々にですが推してます」
「…!」
唐突な話の流れに、影斗は切れ長奥二重の目を丸くする。
「安心して下さい。これは俺たちの間だけの話です。2人で勝手に想像して、勝手に応援してるだけです」
「でも、これだけは伝えておきたくて。多分…今の先輩と髙城のポジションのままじゃ駄目なんです」
「は…」
呆気にとられたように見張る影斗へ、2人は少し強引ながらも、真摯な視線を注いでいた。
「髙城にとってエイト"先輩"である限り、あいつからは関係を縮められない。エイト先輩からもっと踏み込んでもらって…上下関係の殻を取っ払って欲しいんです」
「でないと、あいつには先輩の魅力も…愛情もわからない。俺たちから髙城に言っても伝わらないことなんです」
「…」
「あいつの家庭環境とかも…少し聞いてます。いつも世話になってるし、本当にいい奴だから…あいつの今後が今よりも笑ったり、落ち着いたりできる時間が増えていけばいいと思ってるんです」
「…エイト先輩なら、髙城をそうしてやれるって信じてます。…お願いします!」
揃って頭を下げてくる蒼矢の友人たちの姿を前に、影斗は何も答えられず、腕を組んだままテーブルを見つめていた。
ひとまず彼らの言い分を受け取った影斗は、持ち帰って今一度考えるとだけ返答し、川崎と沖本もこの後講義が控えているため解散となった。
銘々が立ち上がる中、川崎がスマホを確認し、眉をひそめた。立ち尽くす彼へ、影斗が声をかける。
「どうした?」
「…髙城、早退したそうです」
「は、もう帰ったってこと? なんでだよ、講義はどうなったんだ?」
「どういうことだ?」
「…次の講義の準備と予習を兼ねて、今ひとりで助教に個別講義受けに行ってるところなんです。おかしいな…」
「具合でも悪くなったかね」
2人が首をひねる中、影斗はバイクの鍵を手に持ち直す。
「…様子見に行ってみるわ」
「! お願いします、エイト先輩!」
「おう、なんかあったら知らせる。お前らは真面目に授業しとけよ」
「了解です!」
2人に見送られる中、影斗はバイクを停めた正門へと歩いていった。
2人の見解をひと通り受け取ったものの、まだ初見の数分と一昨日の唐突な告白でしか麟とまみえていない影斗としては、判断がつきかねた。
唸ったきり沈黙してしまった彼を見、川崎と沖本は慌てた風に両手を振る。
「いや、あくまで感想です。俺たちも言うほど立羽と面と向かって話してるわけじゃないですから」
「…すみません、浅見過ぎました。最後のは忘れて下さい」
「まぁ、参考程度に覚えとくよ」
「お願いします。…この間、先輩と立羽が会った時…なんかあいつが先輩に気があるように見えちゃって」
「差し出がましいようですけど、気になって…」
「…ん、いいって。ありがとな」
話がひと段落したところで、川崎と沖本は再び真剣な面差しになる。
「話を戻します。俺たちはエイト先輩のファンであると同時に、髙城のファンでもあります。…そして、エイト先輩が目指してる2人のご関係も、内々にですが推してます」
「…!」
唐突な話の流れに、影斗は切れ長奥二重の目を丸くする。
「安心して下さい。これは俺たちの間だけの話です。2人で勝手に想像して、勝手に応援してるだけです」
「でも、これだけは伝えておきたくて。多分…今の先輩と髙城のポジションのままじゃ駄目なんです」
「は…」
呆気にとられたように見張る影斗へ、2人は少し強引ながらも、真摯な視線を注いでいた。
「髙城にとってエイト"先輩"である限り、あいつからは関係を縮められない。エイト先輩からもっと踏み込んでもらって…上下関係の殻を取っ払って欲しいんです」
「でないと、あいつには先輩の魅力も…愛情もわからない。俺たちから髙城に言っても伝わらないことなんです」
「…」
「あいつの家庭環境とかも…少し聞いてます。いつも世話になってるし、本当にいい奴だから…あいつの今後が今よりも笑ったり、落ち着いたりできる時間が増えていけばいいと思ってるんです」
「…エイト先輩なら、髙城をそうしてやれるって信じてます。…お願いします!」
揃って頭を下げてくる蒼矢の友人たちの姿を前に、影斗は何も答えられず、腕を組んだままテーブルを見つめていた。
ひとまず彼らの言い分を受け取った影斗は、持ち帰って今一度考えるとだけ返答し、川崎と沖本もこの後講義が控えているため解散となった。
銘々が立ち上がる中、川崎がスマホを確認し、眉をひそめた。立ち尽くす彼へ、影斗が声をかける。
「どうした?」
「…髙城、早退したそうです」
「は、もう帰ったってこと? なんでだよ、講義はどうなったんだ?」
「どういうことだ?」
「…次の講義の準備と予習を兼ねて、今ひとりで助教に個別講義受けに行ってるところなんです。おかしいな…」
「具合でも悪くなったかね」
2人が首をひねる中、影斗はバイクの鍵を手に持ち直す。
「…様子見に行ってみるわ」
「! お願いします、エイト先輩!」
「おう、なんかあったら知らせる。お前らは真面目に授業しとけよ」
「了解です!」
2人に見送られる中、影斗はバイクを停めた正門へと歩いていった。
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