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本編

第19話_阻止奪還-1

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時をほぼ同じくして、ネットカフェで待機していた影斗エイト蒼矢ソウヤの泊まるホテルへ戻ってくる。

「疲れは取れたか?」
「…はい」

深夜にうなされて起きてリンと邂逅し、シャワーを浴びてから再び眠りについた蒼矢は、そこから先寝苦しさを感じることなく朝を迎えられていた。
鱗からはいまだに面白く思われてないようで、手酷い辱めを受けたり厳しい言葉を浴びせかけられたりしたものの、結果的にそれが気を紛らわせ、今抱えている不安を少しでも忘れることが出来ていたのかもしれないと感じていた。

影斗は蒼矢の手首の包帯を巻き直してやる。

「おそらく近日中――下手したら今日にでも、再戦があるかもしれねぇが…」
「はい」
「…まぁ、止めても無駄だろうな…」

来たるべき次戦の話を振った途端、蒼矢の面差しは神妙に変わり、強い意思が込められたその眼差しを浴びた影斗は、諦めたように息をつく。

「タイマンでは、後発属性をフル稼働させても不利だったんだな?」
「はい。『凍氷』は表面を凍らすだけで、組織を破壊することはできませんでした。[木蔦]が使う蔦も変形自在で、こちらの装具と同等の得物を造り出せ、盾としても隙がありませんでした」
「『毒』は効きそうだったが、次は敬遠されるかもしれねぇし、そもそも多数戦になったら使い辛いしな…」
「――気になってることがあるんですが」

策を練ろうと首をひねる影斗へ、蒼矢が小さく進言する。

「[木蔦ヘデラ]と[異形]は共生関係にあるように見えましたが、[侵略者]が[異形]を纏う、あるいは身体の一部を[異形]へ変形させて使役するというよりは、[侵略者]が[異形]を素体として中に入り、核になって操っているように感じられました」
「確かに俺が一撃浴びせた時も、蔦絡めて修復してたな。…共生ってより"寄生"タイプなのかもしれねぇ」
「ただ…『現実世界』では[異形]を隠し、[侵略者]単体で独立して生息していたので、その推測とは決定的に矛盾してます。それに、『現実世界』での[奴]は、身体的特徴は人間そのものでした。…『転異空間』で一戦交えて以降、その違和感がずっと引っ掛かってるんです。環境で生態を使い分けてるのか…」
「…[侵略者奴ら]にそんな器用な真似が出来るか疑わしいが、とりあえず可能性を優先して、先に[異形]を根絶しちまった方が良さそうだな。駄目ならその時また考えればいい」

そう考察を進めていた最中、隙間を空けていたベッド側の窓から黒い蝶が滑り込み、ふたりの視界の中に入る。

「[木蔦]に動きがありました。火炎のセイバーも一緒です」
「…!!」
「場所はけさせてます、急いで下さい」

影斗へそう告げると、鱗は翅を翻し、いち早く部屋を抜け出していく。
ふたりは蝶が姿を消していった窓を一時見やった後、無言でアイコンタクトを送り合い、手早く支度を整え始めた。
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