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本編
第16話_狭間より舞い戻る蝶-4
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影斗と小さな黒い蝶の奇妙な同棲が始まってから数日後、寮の部屋で卒研制作作業の合間の休憩を取っていた影斗のスマホに通知が入る。
「!」
影斗は開いたSNSの相手を見、片眉を上げる。
そして一言二言交わした後、通話に切り替えた。
「よう」
『エイト先輩、ご無沙汰してます』
通知を送ってきた相手は、蒼矢の大学の友人の川崎だった。
蒼矢への想いを清算してから、彼の送迎に大学へ通うこともすっぱり断っていたため、付随して疎遠になっていた川崎の声を聞くのは久々だった。
『すみません、突然。通話までして貰って、感謝します』
「いいって別に。話した方がお互い楽だろ」
そう軽く返されると、川崎はやや沈鬱なトーンで要件を話し出す。
『…最近、髙城の様子が少し変わったかなと感じてて』
「へぇ」
『元気が無いというか、ちょっと落ち込んでるなって。…普段から賑やかな奴じゃないんで、目に見えては判りにくくて、なんとなくそう感じるだけですけど」
「なるほどな」
川崎が蒼矢へ感じる杞憂に目星がついている影斗は、相槌を打ちながらどう誤魔化そうかと考えを巡らせる。
が、彼の次の一言で一瞬思考が止まった。
『うわの空で、心ここにあらずになってる時もあって…かと思えば、ひどく緊張してるように見える時もありました。…何かに怯えてるみたいに』
「…」
『…先輩は、なにか心当たりありませんか…?』
確かにここ数週間で、[異界のもの]関係で周囲を騒がせ、影斗自身も彼との関係性をはっきりさせていて、少なからず蒼矢はそれらをまだ引きずっていると思われた。
加えて影斗の一時的なセイバー離脱により戦力的な負担も掛かることとなり、蒼矢の心中は色んな意味で穏やかではないだろうと察せた。
が、それだけが理由とは考えにくい蒼矢の最近の様子が、川崎目線の考察から窺い知れた。
「!」
影斗は開いたSNSの相手を見、片眉を上げる。
そして一言二言交わした後、通話に切り替えた。
「よう」
『エイト先輩、ご無沙汰してます』
通知を送ってきた相手は、蒼矢の大学の友人の川崎だった。
蒼矢への想いを清算してから、彼の送迎に大学へ通うこともすっぱり断っていたため、付随して疎遠になっていた川崎の声を聞くのは久々だった。
『すみません、突然。通話までして貰って、感謝します』
「いいって別に。話した方がお互い楽だろ」
そう軽く返されると、川崎はやや沈鬱なトーンで要件を話し出す。
『…最近、髙城の様子が少し変わったかなと感じてて』
「へぇ」
『元気が無いというか、ちょっと落ち込んでるなって。…普段から賑やかな奴じゃないんで、目に見えては判りにくくて、なんとなくそう感じるだけですけど」
「なるほどな」
川崎が蒼矢へ感じる杞憂に目星がついている影斗は、相槌を打ちながらどう誤魔化そうかと考えを巡らせる。
が、彼の次の一言で一瞬思考が止まった。
『うわの空で、心ここにあらずになってる時もあって…かと思えば、ひどく緊張してるように見える時もありました。…何かに怯えてるみたいに』
「…」
『…先輩は、なにか心当たりありませんか…?』
確かにここ数週間で、[異界のもの]関係で周囲を騒がせ、影斗自身も彼との関係性をはっきりさせていて、少なからず蒼矢はそれらをまだ引きずっていると思われた。
加えて影斗の一時的なセイバー離脱により戦力的な負担も掛かることとなり、蒼矢の心中は色んな意味で穏やかではないだろうと察せた。
が、それだけが理由とは考えにくい蒼矢の最近の様子が、川崎目線の考察から窺い知れた。
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