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本編

第10話_叛意への仕置き-3

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「――!!」
柄方エガタさん!」

振り返った姿勢のまま固まり、凝視する蒼矢ソウヤの隣で、レツはお決まりの接客スマイルを見せる。

「いらっしゃい、また来てくれたんですか?」
「ああ…ごめん、今日は買いに来たわけじゃないんだ。この先の友人宅に用があってね。君が元気にしてるかなって、ちょっと顔を見に」
「そうすか! いやぁ、毎日変わらず元気っすよ! 風邪引いたことないもんで」
「丈夫でなにより」

柄方はにこりと笑うと、すぐにきびすを返す。

「――じゃ。今度はきちんと買いに来るよ、良い酒をケース単位でね」
「ありがとうございます!」

振り向きざまに、柄方は一瞬蒼矢へ視線を流す。
大口注文の予感に顔をにやつかせる烈は、もちろん気付かない。

「…」

頭を数回軽く下げながら柄方を見送る烈の隣で、蒼矢はひとり顔を強張らせていた。

「さーて、気を取り直してドレッシング選ぶかぁ」
「――悪い、烈」

柄方がいなくなると、烈は再び陳列棚へと目を向けるが、後ろから蒼矢が引き止めるように声を掛けた。

「ちょっと…俺も用を思い出した。後で必ず買いに来るから、取り置いといてくれるか? フレーバーはお前好みでいいから」
「…えっ!? あぁ、そりゃ構わねぇけど…」
「ごめん」

そう言い残すと、蒼矢は足早に店を出て行った。

「…」

両手に調味料を持ったまま、烈は店の中でひとりぽつんと残される。
蒼矢が駆けていった跡をしばらく眺め、ついで肩を落としながら嘆息を吐き出した。

「…わからねぇ。わからねぇよ、蒼矢ぁ…」



花房酒店を後にした蒼矢は、緊張の面持ちのまま早足で歩を進め、にわかに立ち止まった。

「――何をしていた?」

真横から掛けられる低い声色に、まっすぐ前を向いたまま身体を固まらせる。

「もう一度問う。何をしていた? …返答の内容次第では、契約は破棄するぞ」
「…何も」

そう答えるや否や、蒼矢は片腕を恐ろしい力でもって引かれ、路地裏へ吸い込まれた。

暗い建物の隙間で待っていた柄方――[木蔦ヘデラ]は、引き込んだ蒼矢を壁へ叩きつけ、両腕を壁についてその身体を覆う。

「なかなか大胆な手に出たものだ。…"種"は見つかったのかな?」
「…」
「彼の身体を探ってもいいと許した覚えはないんだがね。命令違反にはどうするとお前に伝えていたかな?」

柔らかい口調の中に嘲笑を交えながら、[木蔦ヘデラ]は視線をそらしたまま黙する蒼矢を見下ろす。

「…少しはねっ返りが過ぎるようだな」
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