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本編
第5話_埋め得ない隔たり-4
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ふたりはそのままトラックの方へと歩いていき、後ろ姿を見せながら並んで会話を続ける。
「…!」
ふいに、柄方の腕が烈の方へ動き、彼の肩を抱く。
なんてことのないボディタッチに見えたが、手は徐々に下へ下がっていき、烈の腰に回る。
少し引き寄せられたのか彼の身体が揺れ、驚いた烈はオーバーリアクション気味に柄方から離れ、慌てた風に手足を上下左右へ振り回す。
首に掛けたタオルで顔の汗を拭い、"汗っぽいからやめて下さいよ"とでも言いたげな、烈の困り笑顔が映る。
柄方は何事もなかったかのように軽く手を振り、それきり烈も作業へ戻り、駐車スペース奥へと消えていく。
蒼矢はその光景を眺めたまま、溜飲した。
そして次の瞬間、大きな目を一層見開き、ある一点へと凝視した。
蒼矢の視界正面には、烈と離れ、店先に残された柄方の後ろ姿があった。
烈に触れた手を上着のポケットへしまい、一時そのまま店頭の陳列を見やっていたが、にわかに振り返る。
「……っ!」
柄方のいる花房酒店からはかなりの距離があったが、蒼矢はそれでも、確実に視線を送られた感覚を抱いた。
彼と視線が合っている自覚は無い。が、柄方の首はこちらの方へ向いたまま、動かない。
焼けつくようにじりじりと感じる視線の気配に、蒼矢は耐えきれず反射的に目を下げ、手元の器を見つめる。
蒼矢はそれきり視線を前方へ戻すことが出来ず、きびすを返し、元来た道へと足早に歩き去っていった。
「…!」
ふいに、柄方の腕が烈の方へ動き、彼の肩を抱く。
なんてことのないボディタッチに見えたが、手は徐々に下へ下がっていき、烈の腰に回る。
少し引き寄せられたのか彼の身体が揺れ、驚いた烈はオーバーリアクション気味に柄方から離れ、慌てた風に手足を上下左右へ振り回す。
首に掛けたタオルで顔の汗を拭い、"汗っぽいからやめて下さいよ"とでも言いたげな、烈の困り笑顔が映る。
柄方は何事もなかったかのように軽く手を振り、それきり烈も作業へ戻り、駐車スペース奥へと消えていく。
蒼矢はその光景を眺めたまま、溜飲した。
そして次の瞬間、大きな目を一層見開き、ある一点へと凝視した。
蒼矢の視界正面には、烈と離れ、店先に残された柄方の後ろ姿があった。
烈に触れた手を上着のポケットへしまい、一時そのまま店頭の陳列を見やっていたが、にわかに振り返る。
「……っ!」
柄方のいる花房酒店からはかなりの距離があったが、蒼矢はそれでも、確実に視線を送られた感覚を抱いた。
彼と視線が合っている自覚は無い。が、柄方の首はこちらの方へ向いたまま、動かない。
焼けつくようにじりじりと感じる視線の気配に、蒼矢は耐えきれず反射的に目を下げ、手元の器を見つめる。
蒼矢はそれきり視線を前方へ戻すことが出来ず、きびすを返し、元来た道へと足早に歩き去っていった。
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