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本編

ありし日の記憶③-1

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そして、それからまた何度かの四季を繰り返し、レツ蒼矢ソウヤは小学6年生になっていた。

クラス替えで毎年すれ違っていたふたりは6年生になってようやく同じクラスになり、卒業を同級生で迎えることができ、烈の両親はなんとなくほっとしたような、満ち足りたような思いで彼らを見守っていた。
このまま何事もなく小学校を卒業し、近隣の公立中学へふたり揃って進学するのだろう。
烈を始め、花房ハナブサ家の誰もがそう思っていた。

6年生の3学期に入った頃、いつものように放課後近所の公園で友人たちに交ざって戯れている時だった。
蒼矢が蹴ったボールを、目を点にしながらも烈は器用に受け取った。

「…私立?」

それきりボールが返されることは無く、そのまま固まってしまった烈へ、蒼矢は黙ったまま頷いた。

「…すぐそこの西中じゃねぇの?」
「うん」
「それって、もう決まっちゃってることなのか?」
「父さんに言われてるから」
「! …」

淡々と返す蒼矢に、烈は言い返そうと口を開きかけたが、空気だけを一瞬吸いこんで、何も語られずに再び閉じられる。

「……そっか」

少しの沈黙の後、烈はそうぽつりとだけ、返事を絞り出した。

烈なりにも、月日が経つごとに蒼矢の日常に変化が起きていることは理解していた。
毎日のように遊んでいたのに、少しずつ蒼矢はまっすぐ帰宅することを選ぶようになり、時たま放課後時間があっても、図書室や近郊の図書館へ通うようになった。
この日こうして一緒に遊んでいることも、本当に久し振りだった。

そんな折、突然そんな大事な告白を受けて、久々に遊んで出る話題がこれかよと思っても、それをそのまま口には出すことは出来なかった。
烈が遊ぶ隙を狙っていたのと同じように、蒼矢も話す機会をスケジュールの合間を縫って覗っていたのだと思うと、文句も何も言えなくなってしまったのだ。
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