17 / 25
本編
ありし日の記憶③-1
しおりを挟む
そして、それからまた何度かの四季を繰り返し、烈と蒼矢は小学6年生になっていた。
クラス替えで毎年すれ違っていたふたりは6年生になってようやく同じクラスになり、卒業を同級生で迎えることができ、烈の両親はなんとなくほっとしたような、満ち足りたような思いで彼らを見守っていた。
このまま何事もなく小学校を卒業し、近隣の公立中学へふたり揃って進学するのだろう。
烈を始め、花房家の誰もがそう思っていた。
6年生の3学期に入った頃、いつものように放課後近所の公園で友人たちに交ざって戯れている時だった。
蒼矢が蹴ったボールを、目を点にしながらも烈は器用に受け取った。
「…私立?」
それきりボールが返されることは無く、そのまま固まってしまった烈へ、蒼矢は黙ったまま頷いた。
「…すぐそこの西中じゃねぇの?」
「うん」
「それって、もう決まっちゃってることなのか?」
「父さんに言われてるから」
「! …」
淡々と返す蒼矢に、烈は言い返そうと口を開きかけたが、空気だけを一瞬吸いこんで、何も語られずに再び閉じられる。
「……そっか」
少しの沈黙の後、烈はそうぽつりとだけ、返事を絞り出した。
烈なりにも、月日が経つごとに蒼矢の日常に変化が起きていることは理解していた。
毎日のように遊んでいたのに、少しずつ蒼矢はまっすぐ帰宅することを選ぶようになり、時たま放課後時間があっても、図書室や近郊の図書館へ通うようになった。
この日こうして一緒に遊んでいることも、本当に久し振りだった。
そんな折、突然そんな大事な告白を受けて、久々に遊んで出る話題がこれかよと思っても、それをそのまま口には出すことは出来なかった。
烈が遊ぶ隙を狙っていたのと同じように、蒼矢も話す機会をスケジュールの合間を縫って覗っていたのだと思うと、文句も何も言えなくなってしまったのだ。
クラス替えで毎年すれ違っていたふたりは6年生になってようやく同じクラスになり、卒業を同級生で迎えることができ、烈の両親はなんとなくほっとしたような、満ち足りたような思いで彼らを見守っていた。
このまま何事もなく小学校を卒業し、近隣の公立中学へふたり揃って進学するのだろう。
烈を始め、花房家の誰もがそう思っていた。
6年生の3学期に入った頃、いつものように放課後近所の公園で友人たちに交ざって戯れている時だった。
蒼矢が蹴ったボールを、目を点にしながらも烈は器用に受け取った。
「…私立?」
それきりボールが返されることは無く、そのまま固まってしまった烈へ、蒼矢は黙ったまま頷いた。
「…すぐそこの西中じゃねぇの?」
「うん」
「それって、もう決まっちゃってることなのか?」
「父さんに言われてるから」
「! …」
淡々と返す蒼矢に、烈は言い返そうと口を開きかけたが、空気だけを一瞬吸いこんで、何も語られずに再び閉じられる。
「……そっか」
少しの沈黙の後、烈はそうぽつりとだけ、返事を絞り出した。
烈なりにも、月日が経つごとに蒼矢の日常に変化が起きていることは理解していた。
毎日のように遊んでいたのに、少しずつ蒼矢はまっすぐ帰宅することを選ぶようになり、時たま放課後時間があっても、図書室や近郊の図書館へ通うようになった。
この日こうして一緒に遊んでいることも、本当に久し振りだった。
そんな折、突然そんな大事な告白を受けて、久々に遊んで出る話題がこれかよと思っても、それをそのまま口には出すことは出来なかった。
烈が遊ぶ隙を狙っていたのと同じように、蒼矢も話す機会をスケジュールの合間を縫って覗っていたのだと思うと、文句も何も言えなくなってしまったのだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
その女子高生は痴漢されたい
冲田
青春
このお話はフィクションです。痴漢は絶対にダメです!
痴漢に嫌悪感がある方は読まない方がいいです。
あの子も、あの子まで痴漢に遭っているのに、私だけ狙われないなんて悔しい!
その女子高生は、今日も痴漢に遭いたくて朝の満員電車に挑みます。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる