15 / 25
本編
ありし日の記憶②-4
しおりを挟む
その日の烈は、授業が終わる度に蒼矢のいるクラスへ来て彼の隣の席を陣取って戯れ、給食を食べ終った後も即遊びに誘い、休み時間を一緒に過ごした。
いつもそれなりに一緒にいる時間が多いにしろ、今日に限って異常なほどくっついて回る烈の行動に蒼矢は始終気遅れ気味だった。
しかし、顔を合わせる度に満面の笑みを浮かべてくる彼へ理由を聞く気は起きず、されるがままに受け入れて一日が過ぎた。
帰り道も朝と同じく手を繋ぎ、もはや既定路線のように花房家へと導かれていく。
「ただいまー!」
息子の大声に、母の珠代が店先へ顔を出す。
「おかえり。…あらぁ、随分と仲が良いのねぇ」
珠代は仲良く手を繋ぐ少年ふたりの姿に顔をほころばせかけたが、息子の次の台詞で顔を凍らせた。
「今日は、そうやとずーっといっしょにいたぞ! おれえらい?」
「…!? あんたまさか、今日一日そんな風に手を繋いで蒼ちゃん連れ回してたのかい?」
「つれまわしてねーよ! 手ぇつないでたのだって、行きと帰りだけだぞっ。でも、休み時間になったらすぐとなりについててやったぞ」
慌てて珠代が駆け寄りふたりの手を離すと、よほど長時間固く握られていたのか、蒼矢の手の甲は赤くなってしまっていた。
「そういうことじゃあないんだよ! あんたが始終付いてたんじゃあ、蒼ちゃん息つく暇もないじゃないか!」
「なんだよぉ、おれそうやとはなれないようにしてただけだぞ。母ちゃんが言ったんじゃんか、そうやがさみしくないように、ずっといっしょにいてやれって」
「~…!」
そう頬を膨らます烈に、珠代は言い返す言葉が無くなり、代わって蒼矢へ振り向く。
「ごめんね蒼ちゃん、実は昨日…結子さんから連絡貰って、”仕事”のお話聞いたのよ」
「…!」
「私ら、居ても立ってもいられなくなっちゃって…あなたに何かしてあげられること無いかって。それでとにかく、烈にはそばに付いててやんなさいって言ったんだけど…そのまんま受取っちゃったみたいで…」
いつもそれなりに一緒にいる時間が多いにしろ、今日に限って異常なほどくっついて回る烈の行動に蒼矢は始終気遅れ気味だった。
しかし、顔を合わせる度に満面の笑みを浮かべてくる彼へ理由を聞く気は起きず、されるがままに受け入れて一日が過ぎた。
帰り道も朝と同じく手を繋ぎ、もはや既定路線のように花房家へと導かれていく。
「ただいまー!」
息子の大声に、母の珠代が店先へ顔を出す。
「おかえり。…あらぁ、随分と仲が良いのねぇ」
珠代は仲良く手を繋ぐ少年ふたりの姿に顔をほころばせかけたが、息子の次の台詞で顔を凍らせた。
「今日は、そうやとずーっといっしょにいたぞ! おれえらい?」
「…!? あんたまさか、今日一日そんな風に手を繋いで蒼ちゃん連れ回してたのかい?」
「つれまわしてねーよ! 手ぇつないでたのだって、行きと帰りだけだぞっ。でも、休み時間になったらすぐとなりについててやったぞ」
慌てて珠代が駆け寄りふたりの手を離すと、よほど長時間固く握られていたのか、蒼矢の手の甲は赤くなってしまっていた。
「そういうことじゃあないんだよ! あんたが始終付いてたんじゃあ、蒼ちゃん息つく暇もないじゃないか!」
「なんだよぉ、おれそうやとはなれないようにしてただけだぞ。母ちゃんが言ったんじゃんか、そうやがさみしくないように、ずっといっしょにいてやれって」
「~…!」
そう頬を膨らます烈に、珠代は言い返す言葉が無くなり、代わって蒼矢へ振り向く。
「ごめんね蒼ちゃん、実は昨日…結子さんから連絡貰って、”仕事”のお話聞いたのよ」
「…!」
「私ら、居ても立ってもいられなくなっちゃって…あなたに何かしてあげられること無いかって。それでとにかく、烈にはそばに付いててやんなさいって言ったんだけど…そのまんま受取っちゃったみたいで…」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
あずさ弓
黒飛翼
青春
有名剣道家の息子として生まれる来人。当然のように剣道を始めさせられるも、才能がなく、親と比較され続けてきた。その辛さから非行を繰り返してきた彼は、いつしか更生したいと思うようになり、中学卒業を機に地元を出て叔母の経営する旅館に下宿することに決める。
下宿先では今までの行いを隠し、平凡な生活を送ろうと決意する来人。
しかし、そこで出会ったのは先天性白皮症(アルビノ)を患う梓だった。彼女もまた、かつての来人と同じように常人と比較されることに嫌気がさしているようで、周囲に棘を振りまくような態度をとっていた。来人はそんな彼女にシンパシーを感じて近づこうとするのだが、彼女はさらに重いものを抱えていたようで……
来人の生き様と梓の秘密が絡み合ったとき。そこに生まれる奇跡の出来事は必見―。
黒崎天斗!伝説へのプロローグ
CPM
青春
伝説の男と謳われた高校生の黒崎天斗(くろさきたかと)が突如姿を消した伝説のレディース矢崎薫(やざきかおり)との初めての出会いから別れまでを描くもう一つのエピソード!
なぜ二人は伝説とまで言われたのか。黒崎天斗はどういう人物だったのか。本編ではあまり触れられることの無かった二人の歴史…そして矢崎透(やざきとおる)の強さがここに明かされる。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる