ガイアセイバーズ6.5 -在りし日の君と僕-

独楽 悠

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本編

ありし日の記憶①-7

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花房ハナブサ家へと入ったレツはスモックを脱いで洗濯カゴへ放り、台所からコップをひとつ手に取ると、蒼矢ソウヤを二階へと連れていく。
階段を上がって襖を開けた先にあった八畳の畳部屋には、親子三人分の布団が隅に畳まれ、それらの逆の隅には玩具が乱雑に放り込まれたおもちゃ箱代わりの編みカゴと、小さい子供用テーブルが置かれていた。
おそらく子どもの遊びスペースと思われるそこに胡坐をかくと、烈は瓶ジュースを脚に挟み、慣れた手つきで栓を抜く。
持ってきたコップになみなみとジュースを注ぐと、ずいっと蒼矢へ差し出した。

「…ありがとう」
「んーやっ。おれ、れつ。おまえは?」
「…そうや」
「そーや! そーやね。よし、おぼえたっ」

小声で御礼を言う蒼矢へ軽く返し、なにやらご機嫌そうな烈は残りをラッパ飲みした。
あっという間に飲み干すと、立ちあがって後方のおもちゃ箱を漁り始める。

「おまえ、なんのあそびがすき? おれ、だいたいなんでももってるぞ! ほら、これとかかっこいいだろー?」

そう言いながら烈は音の出るおもちゃの腰ベルトを着け、効果音と共に蒼矢の目の前でポーズを取ってみせる。
が、そんな得意気に鼻の穴を広げる烈を、蒼矢はさして表情を変えないままに見やっていた。

「…!」

彼の反応にきょとんとした烈は、ベルトを脱ぎ捨てて再び箱を漁り、今度は腕にはめるおもちゃを蒼矢の眼前に突きつけ、やはり効果音と共にポーズを取ってみせる。

「これはどーだ!」

しかし、やはり蒼矢は興味なさ気に彼を眺めるだけだった。

完全に肩透かしを食らった格好になった烈は、顔を真っ赤にさせながらがなる。

「…っ…! おまえっ、しらないのか!? いますげーはやってんだぞ、これ!!」
「知らない」
「うそっ…まいしゅうにちようびのあさ8じから5ちゃんねるでやってるだろぉ!?」
「てれびみないんだ」
「…!?」

段々と行き場のない羞恥心に晒されていく烈へ、蒼矢は淡々としたトーンで返答した。

髙城家には、いわゆる幼児が欲しがる娯楽系玩具を与える習慣は無く、祖父母から送られるものも含めてもっぱら絵本や図鑑をはじめとする図書ばかりで、申し訳程度にパズルなどの知育系玩具があるくらいだった。
加えてテレビを長時間観る習慣もない蒼矢は、今の世の男児たちの間で流行っているヒーロー系の特撮やアニメを知らず、烈のポーズや仕草も全くわからなかった。
人見知り気質なことに加え、このような浮世離れした境遇が、彼の友人の出来にくさを助長しているのだった。
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