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エピローグ-3
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「…どういうことなんですか?」
扉を背にし、ソウヤは眉を寄せながら、エイト博士へと見上げた。
博士はきょとんとした顔でソウヤを見つめ返すと、にっと目を細める。
「お前には知らせてなかったな。例の件で、王室教師のポジション空いちゃったじゃん? 今まで問題アリアリだったことを受けて、これからは誰か一人だけ担当って決めるのはやめにして、適当に空気の入れ替えが出来るように、複数人で分野ごとに担当することにしたんだと」
「…はぁ」
「そのひとりが俺って訳」
「…は…!?」
「俺、王子殿下の教師に選ばれたんだよ」
至極軽い調子で大事な情報を伝えてくる博士に、ソウヤは開いた口が塞がらなくなった。
「…冗談じゃないんですよね?」
「俺がお前に、今まで嘘ついたことあったか?」
「はぐらかされたことは何度もあります」
「本当だっての。AIロボット工学と、宇宙科学専門で」
「……!」
イツキ王子の秘めていた夢を知るソウヤは、目を大きく見開く。
彼の反応に、エイト博士はにやりと笑った。
「…俺もまさか、"諦めた将来の学問"を、誰かに教えることになるとは思わなかったぜ。…これも、先に逝った奴から俺に向けられた愛情という名の叱咤激励かね」
博士は幼い王子へ視線をやるように壁の方を見ながら、そう感慨深げに語った。
「まるで俺の分身みたいだよな。将来は宇宙遊泳しながらアンドロイド造って、副業で国王してるかもしれねぇぞ。楽しみだな」
「王が本業ですっ」
博士の軽口にそうぴしゃりと言うと、ソウヤは面差しを戻し、改めて静かに問い掛けた。
「…それでは、これからはエイトとずっと一緒にいられるということですか…?」
「ああ、王宮に居室は持たねぇけどな。…通い愛ってのも悪くねぇ」
そう呟くと、博士はソウヤの腰と頭を引き寄せ、口を吸う。
「んぅ…」
柔らかな唇の感触にソウヤは頬を染め、引き寄せられるままに身体を博士へと密着させ、彼の背に手を回した。
ソウヤに応えるように、博士はソウヤの背を撫でつつ、首元のアシストスーツのファスナーへ手を伸ばす。
が、ファスナーを下げられる寸前でソウヤは身を引き、博士から離れる。
「! なんだよ、やめちまうのか?」
「ここは王子殿下の間ですから、これ以上は続けられません」
期待が外れてぼやくエイト博士へ、ソウヤはそうはっきり断った。
元の黒スーツへ戻すソウヤへ、博士は不満気に息をつきつつ、じろりと視線を浴びせる。
「…寂しくなっちまったもんだな。お前は俺と王子殿下とどっちが大事なんだ?」
「!」
そう問われ、ソウヤは少し考える素振りをしてみせる。
そして、口を尖らせながら答えを待つ博士へと見上げた。
「…比べようがありません。俺にとってお二人は、どちらも大事な方ですから」
「答えになってねぇぞ」
「いえ、これが答えです。俺に愛情を注いでいて欲しいのがエイト、俺が愛情を注いでいたいのがイツキです。…お二人は今の俺にとって、どちらも無くてはならないお方です」
目を細め、艶っぽく微笑いながらそう答えてみせたソウヤに、博士はあんぐりと口を開けて呆けた後、くすりと笑った。
「ソウヤは欲張りなんだな」
「このようになさったのは、エイトですよ」
「…確かにそうだな。お前を手放した俺の自業自得だ」
そう可笑しそうに笑い合うと、二人はもう一度唇を重ねた。
― 終 ―
扉を背にし、ソウヤは眉を寄せながら、エイト博士へと見上げた。
博士はきょとんとした顔でソウヤを見つめ返すと、にっと目を細める。
「お前には知らせてなかったな。例の件で、王室教師のポジション空いちゃったじゃん? 今まで問題アリアリだったことを受けて、これからは誰か一人だけ担当って決めるのはやめにして、適当に空気の入れ替えが出来るように、複数人で分野ごとに担当することにしたんだと」
「…はぁ」
「そのひとりが俺って訳」
「…は…!?」
「俺、王子殿下の教師に選ばれたんだよ」
至極軽い調子で大事な情報を伝えてくる博士に、ソウヤは開いた口が塞がらなくなった。
「…冗談じゃないんですよね?」
「俺がお前に、今まで嘘ついたことあったか?」
「はぐらかされたことは何度もあります」
「本当だっての。AIロボット工学と、宇宙科学専門で」
「……!」
イツキ王子の秘めていた夢を知るソウヤは、目を大きく見開く。
彼の反応に、エイト博士はにやりと笑った。
「…俺もまさか、"諦めた将来の学問"を、誰かに教えることになるとは思わなかったぜ。…これも、先に逝った奴から俺に向けられた愛情という名の叱咤激励かね」
博士は幼い王子へ視線をやるように壁の方を見ながら、そう感慨深げに語った。
「まるで俺の分身みたいだよな。将来は宇宙遊泳しながらアンドロイド造って、副業で国王してるかもしれねぇぞ。楽しみだな」
「王が本業ですっ」
博士の軽口にそうぴしゃりと言うと、ソウヤは面差しを戻し、改めて静かに問い掛けた。
「…それでは、これからはエイトとずっと一緒にいられるということですか…?」
「ああ、王宮に居室は持たねぇけどな。…通い愛ってのも悪くねぇ」
そう呟くと、博士はソウヤの腰と頭を引き寄せ、口を吸う。
「んぅ…」
柔らかな唇の感触にソウヤは頬を染め、引き寄せられるままに身体を博士へと密着させ、彼の背に手を回した。
ソウヤに応えるように、博士はソウヤの背を撫でつつ、首元のアシストスーツのファスナーへ手を伸ばす。
が、ファスナーを下げられる寸前でソウヤは身を引き、博士から離れる。
「! なんだよ、やめちまうのか?」
「ここは王子殿下の間ですから、これ以上は続けられません」
期待が外れてぼやくエイト博士へ、ソウヤはそうはっきり断った。
元の黒スーツへ戻すソウヤへ、博士は不満気に息をつきつつ、じろりと視線を浴びせる。
「…寂しくなっちまったもんだな。お前は俺と王子殿下とどっちが大事なんだ?」
「!」
そう問われ、ソウヤは少し考える素振りをしてみせる。
そして、口を尖らせながら答えを待つ博士へと見上げた。
「…比べようがありません。俺にとってお二人は、どちらも大事な方ですから」
「答えになってねぇぞ」
「いえ、これが答えです。俺に愛情を注いでいて欲しいのがエイト、俺が愛情を注いでいたいのがイツキです。…お二人は今の俺にとって、どちらも無くてはならないお方です」
目を細め、艶っぽく微笑いながらそう答えてみせたソウヤに、博士はあんぐりと口を開けて呆けた後、くすりと笑った。
「ソウヤは欲張りなんだな」
「このようになさったのは、エイトですよ」
「…確かにそうだな。お前を手放した俺の自業自得だ」
そう可笑しそうに笑い合うと、二人はもう一度唇を重ねた。
― 終 ―
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