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第22話_共に生きる未来-3

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主の身に何が起きたか瞬時に理解し、戦慄するソウヤへ、イツキ王子は落ち着いた調子で口を開く。

「…僕の代わりに、凶弾を受けてくれた。お陰で、僕はもう一度君に会うことが出来た」

そうぽつりと漏れた言葉に、ソウヤの目が見張る。

「僕を生まれた時からずっと見守り続けてくれ、最後に僕の命を救ってくれた。僕にとっての役目は、充分果たされた…これと共にあるのは、今日で終わりにする。…護衛機との思い出も、母上との繋がりも、もうとっくに僕の心を満たしてくれてるから」

王子は手元へ視線を落とし、手のひらに載せた欠片を撫でながらそう語った。
そしてふと手を外し、ソウヤへと再び顔を上げた。

「…いつまでも、無くなってしまったぬくもりにすがっていては駄目なんだ。僕はヤマト王国の王位継承者として…未来の国王になる者として、これからは前を向いて生きていかなきゃならないんだ」
「…イツ…」

思わず名前で呼んでしまいそうになり慌てて口をつぐむソウヤへ、王子は頬を染め、笑ってみせた。

「僕は、人間もアンドロイドも平和に生きていくことが出来る、手を取り合って共存していける未来を作りたい」
「…殿下…」
「君は困難を乗り越えて成長した。僕はそんな君に劣らない、向上心のある、常に成長していける人間でありたい。…これから先の僕に必要なのは、君だよ、ソウヤ。僕と共に歩んで、僕が進んでいく道を見守っていて欲しい」

そう静かに思いを吐露する王子は、面差しに確固たる王族の片鱗を見せていた。

「大好きなソウヤ。これからもずっと、僕の傍にいて」

イツキ王子の思いを受け止めたソウヤは、感激に涙腺が緩みそうになるのを堪え、面差しを改め、まっすぐ彼を見返した。

「はい、殿下。ソウヤはいつまでもどこまでも、あなた様と共におります。命の続く限り、成長していくあなた様を、この目に焼き付け続けます」

そして二人は、お互いに呼び合うように手を差し伸べ、抱き締め合った。

二人の抱擁へ、ミヤジマ博士は面の端に一抹の寂寥感を滲ませながらも、温かな眼差しを送っていた。
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