Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

第18話_消えかける灯火に届く愛-1(★)

★年齢制限表現(ハードなリョナ)有り

【地下side③】

『86M-VA』は、黒ずくめの体躯に隻眼を赤く光らせながら、真顔でソウヤの頭を踏みつける。
踏みつけは、なにか恨みを込めるように執拗に繰り返され、ソウヤの胸部から上は留置所の床へ埋め込まれ、完全に見えなくなる。

「……」

最後のひと踏みを踵を捻りながら押しつけ、『86M-VA』はうつ伏せに横たわる白い下半身を眺めやり、再び足許へ視線を戻す。

「停止したか。…主からは、最低限"頭部"を残すよう指示があったが…そんなものは知らん、関係無い」

そう言い捨てると、足先でソウヤの身体を床から剥がし、軽く振るって突き当たりの壁へ蹴り飛ばす。
ソウヤの身体は人形のように無抵抗に壁へ叩きつけられ、跳ね返って床へ落ちる。
尻もちをついた姿勢で壁に背を預けるソウヤの顔は、肌を構成する上皮膜の半分が剥がれ、素体が剥き出しになっていた。

『86M-VA』はそらを見、主であるユンの居場所を探る。

「…なんだ、もう大広間にはいないのか。…王子は回収したか。本国へ戻るなら、俺も壊されたボディを修繕して貰わねばな」

そう独り呟くと、破壊の限りをし尽くした留置所と、指示を無視して頭部の破損・機能停止へ追い込んだソウヤへは目もくれず、何事も無かったかのように地上への出入口へ歩いていく。

すると突如、目前にあった上がり階段が破壊され、飛び散った瓦礫で辺りが煙る。
歩を止めた『86M-VA』が真顔で見据える先に、瓦礫を掻き分けながら巨躯が現れる。

「許されざる"禁忌の機体"、ここから先へは一歩も通さん」

到着した護衛機『ハナブサ』は、出入口の扉前にどしりと陣取り、戦闘機『86M-VA』の前に立ちはだかる。
相対する未知の機体へ影を落とし、いつもに増して凄みを醸すハナブサを見上げるものの、『86M-VA』は一縷の興味も無さ気に鼻を鳴らす。

「…ハヅキ国王の護衛機か。いかにも『護衛機』然とした、馬鹿でかく鈍重そうな鉄塊よ。貴様などと戯れている暇は無い」