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第19話_誇り高き王族の血-2(★)
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★年齢制限表現(流血)有り
王子は銃を持つ腕を真っ直ぐヘリへと伸ばし、大股を開いて構える。
「……!!」
照準を合わすものの、次第に王子の手元は小さく震え始める。
真冬だというのに、その額には汗が滲み、目は飛び出そうなほど見開かれる。
銃を握る手が汗で緩み、手の中でカタカタと揺れる。
「…あいつをっ…、あいつを、僕が…っ…!」
「……」
王族として心に誓った決意と、ひとを殺める恐怖の狭間に置かれた小さな少年の内省を感じ取り、サンチェス博士は王子から銃を拝借した。
「! サ…」
「あのような下賤の者のために、未来あるあなた様のお手を汚すことはございませんわ」
一瞬で銃を手から失い、驚いて見上げる王子の目の前で、サンチェス博士は片腕を高らかに構え、銃口を笑い狂うユンへ向けた。
が、サンチェス博士が引き金を引く前に、一発の甲高い銃声が鳴り響く。
ユンの嫌らしい嗤い声はぴたりと止み、次いで、シールドで守っていた身体が、前方へがくりと傾く。
頭を撃ち抜かれたユンは、シールド内側へ大量の血を撒き散らし、そのまま落ちるかと思われたが、どこからか伸びてきたワイヤーに身体を絡め取られ、ひとり上空へと浮き上がっていく。
「……っ!」
サンチェス博士や兵たちが見上げる空に、いつの間にか大きな黒いヘリが現れていた。
ヘリはこちらへは何の関心も示してないかのようにくるりと方向を変え、事切れたユンを吊るしたまま、その場から去っていく。
「…切り捨てられたか」
そう口元で漏らすと、サンチェス博士は、飛び去るヘリを追おうとわたわた準備し始める兵たちを制した。
「追いかけても無駄よ、おおよそ魚の餌にでもなるわ。諦めてこの場の後始末をなさい」
鋭く指示を送ってから、サンチェス博士はイツキ王子へと膝をつく。
「…殿下、事は済みました。ここは寒うございますので、広間へ戻りましょう」
「……!」
王子は手元を銃を失った形に固まらせたまま、呆然と立ち尽くしていたが、サンチェス博士の声掛けにはっと気付く。
ついで、自分のしでかした一連の行いに遅れて実感が湧きあがってきたか、身体を震えさせ、奥歯を鳴らし始めた。
「…ぼっ…僕……っ…!」
「あまり無茶は致しませぬように。…心臓が止まりかけましたよ」
「…ごめ…ごめんなさい…っ…」
「謝る必要はどこにもありません。我々は…いえ、ヤマト王国は、あなた様の勇気ある行動に救われたのです」
ひとを殺めようとした恐怖に震えるイツキ王子の身体を、サンチェス博士は優しくさすってやる。
そして目を見張る彼へ、今までの生涯で一度も浮かべたことの無いような、満ち足り穏やかな表情で見上げた。
「あなた様の勇気と気概に、感銘致しました。…イツキ殿下、あなた様はまさに現国王陛下・ハヅキ様の御子であり、国の象徴となるべき器をお持ちです」
サンチェス博士は胸元からハンカチを取り、汗の浮かぶ王子の顔を優しく拭いてやった。
彼女の柔らかな面差しと肌に感じる布の心地良さに、王子の面持ちは次第に緊張を解いていき、全身の震えも収まっていく。
サンチェス博士は王子の小さな手を取り、額を寄せた。
「…カルラ・サンチェスは、国王陛下、王子殿下、そしてヤマトの未来に、なお一層の忠誠をお誓い申し上げます」
王子は銃を持つ腕を真っ直ぐヘリへと伸ばし、大股を開いて構える。
「……!!」
照準を合わすものの、次第に王子の手元は小さく震え始める。
真冬だというのに、その額には汗が滲み、目は飛び出そうなほど見開かれる。
銃を握る手が汗で緩み、手の中でカタカタと揺れる。
「…あいつをっ…、あいつを、僕が…っ…!」
「……」
王族として心に誓った決意と、ひとを殺める恐怖の狭間に置かれた小さな少年の内省を感じ取り、サンチェス博士は王子から銃を拝借した。
「! サ…」
「あのような下賤の者のために、未来あるあなた様のお手を汚すことはございませんわ」
一瞬で銃を手から失い、驚いて見上げる王子の目の前で、サンチェス博士は片腕を高らかに構え、銃口を笑い狂うユンへ向けた。
が、サンチェス博士が引き金を引く前に、一発の甲高い銃声が鳴り響く。
ユンの嫌らしい嗤い声はぴたりと止み、次いで、シールドで守っていた身体が、前方へがくりと傾く。
頭を撃ち抜かれたユンは、シールド内側へ大量の血を撒き散らし、そのまま落ちるかと思われたが、どこからか伸びてきたワイヤーに身体を絡め取られ、ひとり上空へと浮き上がっていく。
「……っ!」
サンチェス博士や兵たちが見上げる空に、いつの間にか大きな黒いヘリが現れていた。
ヘリはこちらへは何の関心も示してないかのようにくるりと方向を変え、事切れたユンを吊るしたまま、その場から去っていく。
「…切り捨てられたか」
そう口元で漏らすと、サンチェス博士は、飛び去るヘリを追おうとわたわた準備し始める兵たちを制した。
「追いかけても無駄よ、おおよそ魚の餌にでもなるわ。諦めてこの場の後始末をなさい」
鋭く指示を送ってから、サンチェス博士はイツキ王子へと膝をつく。
「…殿下、事は済みました。ここは寒うございますので、広間へ戻りましょう」
「……!」
王子は手元を銃を失った形に固まらせたまま、呆然と立ち尽くしていたが、サンチェス博士の声掛けにはっと気付く。
ついで、自分のしでかした一連の行いに遅れて実感が湧きあがってきたか、身体を震えさせ、奥歯を鳴らし始めた。
「…ぼっ…僕……っ…!」
「あまり無茶は致しませぬように。…心臓が止まりかけましたよ」
「…ごめ…ごめんなさい…っ…」
「謝る必要はどこにもありません。我々は…いえ、ヤマト王国は、あなた様の勇気ある行動に救われたのです」
ひとを殺めようとした恐怖に震えるイツキ王子の身体を、サンチェス博士は優しくさすってやる。
そして目を見張る彼へ、今までの生涯で一度も浮かべたことの無いような、満ち足り穏やかな表情で見上げた。
「あなた様の勇気と気概に、感銘致しました。…イツキ殿下、あなた様はまさに現国王陛下・ハヅキ様の御子であり、国の象徴となるべき器をお持ちです」
サンチェス博士は胸元からハンカチを取り、汗の浮かぶ王子の顔を優しく拭いてやった。
彼女の柔らかな面差しと肌に感じる布の心地良さに、王子の面持ちは次第に緊張を解いていき、全身の震えも収まっていく。
サンチェス博士は王子の小さな手を取り、額を寄せた。
「…カルラ・サンチェスは、国王陛下、王子殿下、そしてヤマトの未来に、なお一層の忠誠をお誓い申し上げます」
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