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第17話_秘めたる勇気-2(★)
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★年齢制限表現(流血)有り
ユンは王子を抱え少しずつ後ずさりしながら、不敵に嗤う。
「…だいぶ計画が崩れてしまったが、こいつを本国へ持ち帰りさえすれば、私の目的は達成される。残念だったな、私の正体が解ったところで、最早お前たちに取り戻せるものは何も無い。ヤマトの王家はここで終わる」
「……!?」
その言葉を聞いた王子は、びくりと身体を跳ね、横目からユンを見上げた。
「この能無しの平凡な跡継ぎを盾に、ヤマトの絶対的存在である王家の息の根を止める。…あの"死に損ない"に、今度は確実な最期を与えてやる」
低い嗤い声をあげながら、ユンは徐々に暗がりへと遠ざかっていく。
「っ…!!」
と、羽交い絞めにされていたイツキ王子が突然身をよじり、突きつけられた銃身を掴む。
「っ! こいつっ…」
「やめろ!! 王家を汚そうとする者は、誰であっても…たとえユン先生であっても許さないっ…!!」
銃身を掴む王子と、その手を振りほどこうとするユンの身体がもみくちゃになる。
ハナブサを制しながら、サンチェス博士とミヤジマ博士がふたりへ接近する。
「殿下!!」
「離せ、糞餓鬼!!」
「離すもんか!! これ以上父上に手出しはさせない! 王家は僕が守るんだ!!」
「このっ…」
銃を持つユンに腕を振り上げられ、王子の身体が宙ぶらりんになる。
そのまま横へ投げ落とされ、冷静さを失ったユンが、床に転がる王子へ銃を向ける。
薄闇の大広間に、一発の発砲音が木霊する。
銃弾を浴びたイツキ王子の身体が、衝撃で大きく揺れる。
「――!!」
サンチェス博士は大きく踏み込み、伸ばされたユンの右腕を足で蹴飛ばす。
手の先にあった銃が外れ、後方へ吹っ飛んでいく。
「っ…ちっ」
武器を失い丸腰になったユンは、苦虫を噛み潰したような顔を向けた後翻し、暗闇へと姿を消していこうとする。
「待て、ジジイ!!」
すかさずミヤジマ博士が駆け出し、ユンの髪を掴もうと腕を伸ばす。
が、掴んだ手に重みが掛かることがないままユンの足音が遠ざかり、ミヤジマ博士の手のひらには、まとまった胡麻塩の頭髪だけが残る。
「うげっ…」
思わず吐くような声を漏らし、ミヤジマ博士はユンのウィッグを投げ捨てる。
「追って!!」
サンチェス博士の指示に、その場にいた兵たちが武器を拾い、大広間の入口へと駆けていった。
手を白衣の裾で拭うと、ミヤジマ博士は踵を返し、サンチェス博士の元へ走り寄る。
サンチェス博士は、横たわったまま動かないイツキ王子の傍らに跪いていた。
ミヤジマ博士は、緩く結んでいたネクタイを解き、流血するサンチェス博士の首へ巻いてやる。
「気遣いは無用よ、少し掠めただけ」
そう抑揚無く言い捨てながら、サンチェス博士はイツキ王子の身体を見る。
目を凝視して冷や汗を流し、極度の緊張状態を表出していたサンチェス博士の面差しが、次第に驚きへ変わる。
「…傷が無いわ」
「……ん…」
サンチェス博士がぽつりと呟いた後すぐに、イツキ王子からか細い呻き声が漏れる。
「殿下…!!」
「!? なんだ、撃たれたんじゃなかったのか…?」
ミヤジマ博士が上から覗き込む中、サンチェス博士はふと、王子の胸元に目をやる。
「…これは」
胸元から床にかけて、細かなガラスの破片が散乱していた。
そしてそのガラス片に混じり、親指大の赤黒い鉱石の破片が、ほのかに発光しながら床に転がっていた。
サンチェス博士はそれを拾い、鉱石の真ん中に黄金の弾丸が埋まっているのを認める。
「…天に生かされてる」
サンチェス博士は目を見張り、ぽそりと感嘆の声を漏らした。
ユンは王子を抱え少しずつ後ずさりしながら、不敵に嗤う。
「…だいぶ計画が崩れてしまったが、こいつを本国へ持ち帰りさえすれば、私の目的は達成される。残念だったな、私の正体が解ったところで、最早お前たちに取り戻せるものは何も無い。ヤマトの王家はここで終わる」
「……!?」
その言葉を聞いた王子は、びくりと身体を跳ね、横目からユンを見上げた。
「この能無しの平凡な跡継ぎを盾に、ヤマトの絶対的存在である王家の息の根を止める。…あの"死に損ない"に、今度は確実な最期を与えてやる」
低い嗤い声をあげながら、ユンは徐々に暗がりへと遠ざかっていく。
「っ…!!」
と、羽交い絞めにされていたイツキ王子が突然身をよじり、突きつけられた銃身を掴む。
「っ! こいつっ…」
「やめろ!! 王家を汚そうとする者は、誰であっても…たとえユン先生であっても許さないっ…!!」
銃身を掴む王子と、その手を振りほどこうとするユンの身体がもみくちゃになる。
ハナブサを制しながら、サンチェス博士とミヤジマ博士がふたりへ接近する。
「殿下!!」
「離せ、糞餓鬼!!」
「離すもんか!! これ以上父上に手出しはさせない! 王家は僕が守るんだ!!」
「このっ…」
銃を持つユンに腕を振り上げられ、王子の身体が宙ぶらりんになる。
そのまま横へ投げ落とされ、冷静さを失ったユンが、床に転がる王子へ銃を向ける。
薄闇の大広間に、一発の発砲音が木霊する。
銃弾を浴びたイツキ王子の身体が、衝撃で大きく揺れる。
「――!!」
サンチェス博士は大きく踏み込み、伸ばされたユンの右腕を足で蹴飛ばす。
手の先にあった銃が外れ、後方へ吹っ飛んでいく。
「っ…ちっ」
武器を失い丸腰になったユンは、苦虫を噛み潰したような顔を向けた後翻し、暗闇へと姿を消していこうとする。
「待て、ジジイ!!」
すかさずミヤジマ博士が駆け出し、ユンの髪を掴もうと腕を伸ばす。
が、掴んだ手に重みが掛かることがないままユンの足音が遠ざかり、ミヤジマ博士の手のひらには、まとまった胡麻塩の頭髪だけが残る。
「うげっ…」
思わず吐くような声を漏らし、ミヤジマ博士はユンのウィッグを投げ捨てる。
「追って!!」
サンチェス博士の指示に、その場にいた兵たちが武器を拾い、大広間の入口へと駆けていった。
手を白衣の裾で拭うと、ミヤジマ博士は踵を返し、サンチェス博士の元へ走り寄る。
サンチェス博士は、横たわったまま動かないイツキ王子の傍らに跪いていた。
ミヤジマ博士は、緩く結んでいたネクタイを解き、流血するサンチェス博士の首へ巻いてやる。
「気遣いは無用よ、少し掠めただけ」
そう抑揚無く言い捨てながら、サンチェス博士はイツキ王子の身体を見る。
目を凝視して冷や汗を流し、極度の緊張状態を表出していたサンチェス博士の面差しが、次第に驚きへ変わる。
「…傷が無いわ」
「……ん…」
サンチェス博士がぽつりと呟いた後すぐに、イツキ王子からか細い呻き声が漏れる。
「殿下…!!」
「!? なんだ、撃たれたんじゃなかったのか…?」
ミヤジマ博士が上から覗き込む中、サンチェス博士はふと、王子の胸元に目をやる。
「…これは」
胸元から床にかけて、細かなガラスの破片が散乱していた。
そしてそのガラス片に混じり、親指大の赤黒い鉱石の破片が、ほのかに発光しながら床に転がっていた。
サンチェス博士はそれを拾い、鉱石の真ん中に黄金の弾丸が埋まっているのを認める。
「…天に生かされてる」
サンチェス博士は目を見張り、ぽそりと感嘆の声を漏らした。
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