82 / 112
本編
第15話_仮面の下の獣-5
しおりを挟む
そう声高らかに言葉を並べてみせたユン氏を、ミヤジマ博士とサンチェス博士は互いに軽く見合ってから、静かに見返した。
「…仕方ないわね」
一抹の沈黙の後、サンチェス博士は小さく呟き、軽く後ろへ振り返る。
すると、奥の間からぬうと大柄の人影が現れ、前へ進み出ると一同の脇へ立った。
大広間へ姿を見せた護衛機『ハナブサ』は、サンチェス博士の視線を受けて軽く頷くと、太く長い両腕を左右に大きく広げ、特大のホログラムスクリーンを映す。
「これは、ミヤジマ殿の推論を受け、私と王宮のサイバー部隊とで協力調査し入手した、あるアンドロイドの製造当初から現在までの経過を追ったデータよ」
「……っ!!」
映像を見せられたユン氏は、ホログラムを凝視したまま瞬きを失い、身体を硬直させた。
「護衛機は、護衛対象の生体認証をもって命令を聞き分け、護衛任務にあたる。認証が結ばれていない場合は、現代のいかなるテクノロジーをもってしても、命令通りに動くことは出来ないわ。…これは、あなたの護衛機――いえ、『護衛機だった何者か』の経過を追った記録よ。ここに映る、リペアとはとても言い難い不可解な"改造"記録は、あなたへ付けた護衛機のものであることに揺るぎないわ」
ホログラムには、ユン氏の護衛機が『戦闘機』に至るまでの改造記録が、余すことなく並べられていた。
「リペアされたのは、全て華国。あなたの渡航記録ともタイミングが合致するわ。あなたは王宮から護衛機を付けるよう与えられた公費を華国へ渡し、国際法で禁じられた戦闘機の開発へ充てた。その事実が公に出ないよう、初めから完成品として造らず、改造を重ねて徐々に戦闘機へと仕上げていった。…華国では何年も前から、極秘裏に『戦闘機』の開発・生産が進められてるとの噂が絶えなかった。…これで、それが事実だと証明されたわね」
「"元華国人の両親を持つヤマト産まれ"を利用して、敬虔な国民面してたみたいだけど、お前と華国与党員の大物政治家との繋がりも調べてあるぜ。親の代からずーっと、そいつの手足として王宮や官邸の情報流してたらしいな。そのうえ、いい歳こいてテロの実行犯までやってるとは…虫も喰わねぇような面して、なかなか強かだよ」
透けるスクリーンの向こう側にいる二人の博士からたて続けに、隠してあった事実を重ねられ、ほんの数分前まで涼しげだったユン氏の顔面が、急激に歪んでいく。
「…何か申し開きたいことは?」
弁明出来ず、歯を食いしばったまま沈黙するユンへ、サンチェス博士は静かに問い掛けた。
「…仕方ないわね」
一抹の沈黙の後、サンチェス博士は小さく呟き、軽く後ろへ振り返る。
すると、奥の間からぬうと大柄の人影が現れ、前へ進み出ると一同の脇へ立った。
大広間へ姿を見せた護衛機『ハナブサ』は、サンチェス博士の視線を受けて軽く頷くと、太く長い両腕を左右に大きく広げ、特大のホログラムスクリーンを映す。
「これは、ミヤジマ殿の推論を受け、私と王宮のサイバー部隊とで協力調査し入手した、あるアンドロイドの製造当初から現在までの経過を追ったデータよ」
「……っ!!」
映像を見せられたユン氏は、ホログラムを凝視したまま瞬きを失い、身体を硬直させた。
「護衛機は、護衛対象の生体認証をもって命令を聞き分け、護衛任務にあたる。認証が結ばれていない場合は、現代のいかなるテクノロジーをもってしても、命令通りに動くことは出来ないわ。…これは、あなたの護衛機――いえ、『護衛機だった何者か』の経過を追った記録よ。ここに映る、リペアとはとても言い難い不可解な"改造"記録は、あなたへ付けた護衛機のものであることに揺るぎないわ」
ホログラムには、ユン氏の護衛機が『戦闘機』に至るまでの改造記録が、余すことなく並べられていた。
「リペアされたのは、全て華国。あなたの渡航記録ともタイミングが合致するわ。あなたは王宮から護衛機を付けるよう与えられた公費を華国へ渡し、国際法で禁じられた戦闘機の開発へ充てた。その事実が公に出ないよう、初めから完成品として造らず、改造を重ねて徐々に戦闘機へと仕上げていった。…華国では何年も前から、極秘裏に『戦闘機』の開発・生産が進められてるとの噂が絶えなかった。…これで、それが事実だと証明されたわね」
「"元華国人の両親を持つヤマト産まれ"を利用して、敬虔な国民面してたみたいだけど、お前と華国与党員の大物政治家との繋がりも調べてあるぜ。親の代からずーっと、そいつの手足として王宮や官邸の情報流してたらしいな。そのうえ、いい歳こいてテロの実行犯までやってるとは…虫も喰わねぇような面して、なかなか強かだよ」
透けるスクリーンの向こう側にいる二人の博士からたて続けに、隠してあった事実を重ねられ、ほんの数分前まで涼しげだったユン氏の顔面が、急激に歪んでいく。
「…何か申し開きたいことは?」
弁明出来ず、歯を食いしばったまま沈黙するユンへ、サンチェス博士は静かに問い掛けた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
隊長さんとボク
ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。
エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。
そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。
王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。
きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。
えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる