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本編
第15話_仮面の下の獣-5
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そう声高らかに言葉を並べてみせたユン氏を、ミヤジマ博士とサンチェス博士は互いに軽く見合ってから、静かに見返した。
「…仕方ないわね」
一抹の沈黙の後、サンチェス博士は小さく呟き、軽く後ろへ振り返る。
すると、奥の間からぬうと大柄の人影が現れ、前へ進み出ると一同の脇へ立った。
大広間へ姿を見せた護衛機『ハナブサ』は、サンチェス博士の視線を受けて軽く頷くと、太く長い両腕を左右に大きく広げ、特大のホログラムスクリーンを映す。
「これは、ミヤジマ殿の推論を受け、私と王宮のサイバー部隊とで協力調査し入手した、あるアンドロイドの製造当初から現在までの経過を追ったデータよ」
「……っ!!」
映像を見せられたユン氏は、ホログラムを凝視したまま瞬きを失い、身体を硬直させた。
「護衛機は、護衛対象の生体認証をもって命令を聞き分け、護衛任務にあたる。認証が結ばれていない場合は、現代のいかなるテクノロジーをもってしても、命令通りに動くことは出来ないわ。…これは、あなたの護衛機――いえ、『護衛機だった何者か』の経過を追った記録よ。ここに映る、リペアとはとても言い難い不可解な"改造"記録は、あなたへ付けた護衛機のものであることに揺るぎないわ」
ホログラムには、ユン氏の護衛機が『戦闘機』に至るまでの改造記録が、余すことなく並べられていた。
「リペアされたのは、全て華国。あなたの渡航記録ともタイミングが合致するわ。あなたは王宮から護衛機を付けるよう与えられた公費を華国へ渡し、国際法で禁じられた戦闘機の開発へ充てた。その事実が公に出ないよう、初めから完成品として造らず、改造を重ねて徐々に戦闘機へと仕上げていった。…華国では何年も前から、極秘裏に『戦闘機』の開発・生産が進められてるとの噂が絶えなかった。…これで、それが事実だと証明されたわね」
「"元華国人の両親を持つヤマト産まれ"を利用して、敬虔な国民面してたみたいだけど、お前と華国与党員の大物政治家との繋がりも調べてあるぜ。親の代からずーっと、そいつの手足として王宮や官邸の情報流してたらしいな。そのうえ、いい歳こいてテロの実行犯までやってるとは…虫も喰わねぇような面して、なかなか強かだよ」
透けるスクリーンの向こう側にいる二人の博士からたて続けに、隠してあった事実を重ねられ、ほんの数分前まで涼しげだったユン氏の顔面が、急激に歪んでいく。
「…何か申し開きたいことは?」
弁明出来ず、歯を食いしばったまま沈黙するユンへ、サンチェス博士は静かに問い掛けた。
「…仕方ないわね」
一抹の沈黙の後、サンチェス博士は小さく呟き、軽く後ろへ振り返る。
すると、奥の間からぬうと大柄の人影が現れ、前へ進み出ると一同の脇へ立った。
大広間へ姿を見せた護衛機『ハナブサ』は、サンチェス博士の視線を受けて軽く頷くと、太く長い両腕を左右に大きく広げ、特大のホログラムスクリーンを映す。
「これは、ミヤジマ殿の推論を受け、私と王宮のサイバー部隊とで協力調査し入手した、あるアンドロイドの製造当初から現在までの経過を追ったデータよ」
「……っ!!」
映像を見せられたユン氏は、ホログラムを凝視したまま瞬きを失い、身体を硬直させた。
「護衛機は、護衛対象の生体認証をもって命令を聞き分け、護衛任務にあたる。認証が結ばれていない場合は、現代のいかなるテクノロジーをもってしても、命令通りに動くことは出来ないわ。…これは、あなたの護衛機――いえ、『護衛機だった何者か』の経過を追った記録よ。ここに映る、リペアとはとても言い難い不可解な"改造"記録は、あなたへ付けた護衛機のものであることに揺るぎないわ」
ホログラムには、ユン氏の護衛機が『戦闘機』に至るまでの改造記録が、余すことなく並べられていた。
「リペアされたのは、全て華国。あなたの渡航記録ともタイミングが合致するわ。あなたは王宮から護衛機を付けるよう与えられた公費を華国へ渡し、国際法で禁じられた戦闘機の開発へ充てた。その事実が公に出ないよう、初めから完成品として造らず、改造を重ねて徐々に戦闘機へと仕上げていった。…華国では何年も前から、極秘裏に『戦闘機』の開発・生産が進められてるとの噂が絶えなかった。…これで、それが事実だと証明されたわね」
「"元華国人の両親を持つヤマト産まれ"を利用して、敬虔な国民面してたみたいだけど、お前と華国与党員の大物政治家との繋がりも調べてあるぜ。親の代からずーっと、そいつの手足として王宮や官邸の情報流してたらしいな。そのうえ、いい歳こいてテロの実行犯までやってるとは…虫も喰わねぇような面して、なかなか強かだよ」
透けるスクリーンの向こう側にいる二人の博士からたて続けに、隠してあった事実を重ねられ、ほんの数分前まで涼しげだったユン氏の顔面が、急激に歪んでいく。
「…何か申し開きたいことは?」
弁明出来ず、歯を食いしばったまま沈黙するユンへ、サンチェス博士は静かに問い掛けた。
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