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本編
第15話_仮面の下の獣-2
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横からサンチェス博士がそう答えると、ユン氏は深く頷いてみせた。
「…そうでしょうとも。なにしろ、造って納めた愛機がこのようなことになっては、その生みの親…開発者として召集されないわけには参りませんでしょうからね」
同情の意か、眉を寄せながらそうしみじみと言うユン氏へ、サンチェス博士は首を傾げてみせる。
「どういうことでしょうか。お話が見えませんが」
「? …これは異なこと。今しがたご自分で"最重要人物"と仰ったではないですか。人命に関わるレベルの問題行動を起こしたアンドロイドの…テロ行為を引き起こした王子殿下付護衛機の開発者として、製造責任を問われたのではないのですか?」
「情報規制を張っていた中で、よくそれほどまでに核心部の事実をご存知ですね。私はあなたへは、単に王宮関係者としてお集まり頂きたいとご連絡差し上げただけですが」
「…! 召喚される前に、事前情報として個人的に懇意ある侍従へお聞きしたのです。それに、これほどまでの警戒態勢を敷いて呼び寄せるなど、何も疑惑が無くても"そうだ"と言っているようなものでは?」
「いいえ、違いますよ。ミヤジマ殿には、あなたのように護衛機は配備されておりません。いまだセキュリティシステムの全復旧に至っていないどころか、第二波の懸念さえもある状況にある王宮へ、身の危険を脅かすことを承知で呼び寄せるのですから、それ相応の警護を付けるのは当然です」
「……!」
「ミヤジマ博士は、そんな根も葉もない疑いをかけてここへ呼んだのではないですよ。――あなた方も、武器を降ろしなさい」
固まるユン氏の前でそう言い、サンチェス博士は、少し戸惑いを見せながらもミヤジマ博士の方へ銃を向ける近衛兵たちを手で制する。
その対面では、ミヤジマ博士を護るように取り囲む国防隊員たちが、憤怒の表情で銃口を近衛兵へ向けて返し、応戦の決意を示していた。
その思ってもない展開に、仔細を知らない近衛兵たちへも動揺が広がる中、サンチェス博士は淡々と続ける。
「…一度冷静になりなさい。でないと、このテロの真実を知る機会を二度と得られなくなるわよ」
「…」
近衛兵たちが銃を降ろし、国防隊員の方もひとまず武器を収め、一旦場が冷えたところで、サンチェス博士は改めてユン氏へ向く。
「…真にどこぞの王宮関係者から聞き出したのか、あるいはあなたにしか得られない独自の情報網があったのか…、今更それを問い質す意味はありませんので、不問とします。そんなことより、私はあなたへ別件で、とても興味深い疑問を抱いているのですが」
「…! なんでしょうか…」
目を見張り、少しだけ緊張の様子を見せるユン氏へ、サンチェス博士は低く問う。
「いつもの護衛機はどうしたのです? 何故帯同させていないんですか?」
「…そうでしょうとも。なにしろ、造って納めた愛機がこのようなことになっては、その生みの親…開発者として召集されないわけには参りませんでしょうからね」
同情の意か、眉を寄せながらそうしみじみと言うユン氏へ、サンチェス博士は首を傾げてみせる。
「どういうことでしょうか。お話が見えませんが」
「? …これは異なこと。今しがたご自分で"最重要人物"と仰ったではないですか。人命に関わるレベルの問題行動を起こしたアンドロイドの…テロ行為を引き起こした王子殿下付護衛機の開発者として、製造責任を問われたのではないのですか?」
「情報規制を張っていた中で、よくそれほどまでに核心部の事実をご存知ですね。私はあなたへは、単に王宮関係者としてお集まり頂きたいとご連絡差し上げただけですが」
「…! 召喚される前に、事前情報として個人的に懇意ある侍従へお聞きしたのです。それに、これほどまでの警戒態勢を敷いて呼び寄せるなど、何も疑惑が無くても"そうだ"と言っているようなものでは?」
「いいえ、違いますよ。ミヤジマ殿には、あなたのように護衛機は配備されておりません。いまだセキュリティシステムの全復旧に至っていないどころか、第二波の懸念さえもある状況にある王宮へ、身の危険を脅かすことを承知で呼び寄せるのですから、それ相応の警護を付けるのは当然です」
「……!」
「ミヤジマ博士は、そんな根も葉もない疑いをかけてここへ呼んだのではないですよ。――あなた方も、武器を降ろしなさい」
固まるユン氏の前でそう言い、サンチェス博士は、少し戸惑いを見せながらもミヤジマ博士の方へ銃を向ける近衛兵たちを手で制する。
その対面では、ミヤジマ博士を護るように取り囲む国防隊員たちが、憤怒の表情で銃口を近衛兵へ向けて返し、応戦の決意を示していた。
その思ってもない展開に、仔細を知らない近衛兵たちへも動揺が広がる中、サンチェス博士は淡々と続ける。
「…一度冷静になりなさい。でないと、このテロの真実を知る機会を二度と得られなくなるわよ」
「…」
近衛兵たちが銃を降ろし、国防隊員の方もひとまず武器を収め、一旦場が冷えたところで、サンチェス博士は改めてユン氏へ向く。
「…真にどこぞの王宮関係者から聞き出したのか、あるいはあなたにしか得られない独自の情報網があったのか…、今更それを問い質す意味はありませんので、不問とします。そんなことより、私はあなたへ別件で、とても興味深い疑問を抱いているのですが」
「…! なんでしょうか…」
目を見張り、少しだけ緊張の様子を見せるユン氏へ、サンチェス博士は低く問う。
「いつもの護衛機はどうしたのです? 何故帯同させていないんですか?」
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