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第14話_護衛機の天敵-5

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『Unknown』は足裏を蹴りあげ、間合いの概念を打ち消すほどの速度でソウヤへ接近する。
またしても一瞬で間近に到達すると、ソウヤの胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。

…アンチシールドが発動する、触れられてはいけない…!

ソウヤは身を引いて、『Unknown』の掌から回避する。
反対の腕が頭めがけて側面から接近するが、ソウヤはそれも僅かに身を屈めてやり過ごし、続けざまに飛んでくる蹴りを空振りさせながら、後ろへ退避する。

「どうした。逃げてばかり、防戦一方では俺をこの場に留めておけないぞ。…面白味のある貴様に付き合ってやってるんだ、興を冷めさせるな」

『Unknown』がそう挑発してくる中、ソウヤは内で思考を巡らせていた。

…攻撃デバイスを持たない俺に、こいつ相手にどんな対抗手段があるっていうんだ…
…加えて奴は、防御シールドさえ張ってる。素手でダメージを与えるなんて、不可能に近いんじゃないか…!?

思考回路をフル回転させた末、打つ手無しと早々に結論を出したソウヤの視界に、次の一手を出すタイミングを窺っている『Unknown』が映る。
視覚領域に取り込んだ相手の姿に、ソウヤはふと微かな違和感を覚えた。

「…!」

…一か八か、やってみるしかない。

ソウヤは呼吸を整え、シールドより防御性能が飛躍的に高いシェルターシールドを自身に施す。
『Unknown』は、ソウヤの変化…内部動力の高出力反応を目ざとく検出する。

「先程王子を包んでいたものか。…無意味だ。どれだけシールドレベルが上がろうとも、構成物質が同じである限り、俺相手では僅かな時間稼ぎにしかならん」

そう言い捨て、『Unknown』は高速でソウヤに迫る。
シェルターシールドを張ったソウヤは最低限の回避行動で受け止め、相手の懐へ入る。

「はっ!!」

ソウヤは『Unknown』の鳩尾へ掌底を打つ。
しかし、シールドに守られる『Unknown』の身体には、微振動すら与えられない。

「無駄だ、そんな攻撃は」

『Unknown』の両手に腕を降ろされ、代わって両肩を押さえつけられる。
アンチシールドが発動し、硬いシェルターシールドをみるみる中和していく。
押さえつける両掌が強く握られ、少しずつ肩に食い込んでいく。

「っ…!」
「わからん奴だ。俺に捕えられた時点で、お前に抵抗する術は無い」

『Unknown』の胸部にガトリングガンの銃口が開き、至近距離から撃ち込まれる。

「ぐうぅっ!!」

押さえられて回避出来ないソウヤへ、溶かされ薄くなったシールド越しに無数の弾丸が襲う。
止め処なく銃弾を繰り出しながら、『Unknown』は蜂の巣状態のソウヤを見下ろす。

「戯れもそろそろ飽きた…貴様の実力は充分理解した、これ以上続ける必要は無い。己の弱さを認め、黙って俺に従っておけ」
「…っ!!」

しかしソウヤは、頭の上から降り注ぐ蔑みの声を打ち消すように両眼を見開き、痛みに顰めていた面差しに闘志を宿す。

「…勝手に、俺の力量を測るな…っ! …まだ終わってない!」

そして顔を上げ、『Unknown』のフルフェイスを真っ直ぐ見据える。

…あんな視界を狭めそうな装備品、頭部の防御のために着けてるとは思えない。
…主人は王宮内部の人間…であれば、護衛機と欺いて付いてたこの機体と面識のある者がいるはず。
…着けてるのは恐らく、面割れしてる顔を隠すためだ。…そんな取って付けたような目的のものなら、きっと防御シールドのにある。

震える両腕に力を込め、顎部めがけて渾身の掌底を放つ。

「顔を見せろ、卑怯者!!」

放った直後、弾丸が止まり押さえられていた肩への圧力が緩んで、機を逃さずソウヤはすぐさま離れ、間合いを取る。

…ダメージを与えた感触は、確かにあった…!

そう確信するソウヤの眼前で、棒立ちになる『Unknown』のフルフェイスが縦にひび割れ、中心からふたつに割れて地に落ちた。

「……!!」

フルフェイスの中に隠されていた『Unknown』の顔を見、ソウヤは目を見張り息を飲んだ。
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